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  • 2021.03.05 (最終更新日:2022.04.06)

ノー残業デーとはどういう取り組み?内容や目的、メリット・デメリット

目次

ノー残業デーとは?

残業

ノー残業デーの概要

名前の通り、従業員が残業せず定時で帰宅する日を決める取り組みのことを、ノー残業デーと言います。企業から定時で帰宅するよう従業員に呼びかける日が、週に1日から2日程度あるのが一般的です。ノー残業デーがいつ生まれたのか正確な始まりは不明ですが、1976年にはすでに始まっていたことが記録されています。なぜなら1976年6月の日経産業新聞にて、ある自動車メーカーがノー残業デーを実施することになった、と掲載されていたからです。

日本人が国から経済発展や国家復興に専念することが求められていたのは、高度経済成長期のころ。その結果1990年ごろには、働きすぎによる過労死が社会問題になったのです。このころにバブルが崩壊して経済状況が悪化したこともあり、労働時間短縮の取り組みも生まれました。また働き方改革では、残業や長時間労働を推進することは経済状況の悪化に繋がると言われています。働きすぎるのは良くないという考え方が少しずつ広がっている中で、取り組みやすいノー残業デーは今までさまざまな企業が実施しているのです。

平均残業時間はどれぐらいなのか

日本人の平均残業時間がどれぐらいなのか、どのように確認すればいいのでしょうか?厚生労働省では、「毎月勤労統計調査」を行っています。この資料によると、2019年の所定外労働時間は10.6時間です。現在の働き方から考えて、思ったよりも少ないと感じたことと思います。この調査結果は従業員からの回答ではないため、サービス残業の時間は対象外なのです。

参照:厚生労働省 毎月勤労統計調査より

しかし、とある調査では平均残業時間は40時間を超えると公表しています。こちらの調査で回答した人数はおよそ68000人を超えており、多くの人が協力していることが分かりますよね。

参照:VORKERSより

ノー残業デーの目的とは

ノー残業デーの目的は、業務の効率化やワークライフバランスの改善です。業務の終了時間をあらかじめ決めておくことによって、効率よく仕事をするための意識を持たせるのがノー残業デーの目的の1つ。また、プライベートの時間が充実したら仕事とのメリハリがつくので、ワークライフバランス改善に繋がります。帰宅時間が終電ギリギリだとどこにも寄れませんが、定時で帰宅すれば寄り道も可能ですし、帰宅後にひと息つくことも可能です。

ノー残業デーの効果や実態

ノー残業デーを実施してみて、実際に効果はあったのでしょうか?厚生労働省の「時間外労働削減の好事例集」という資料によると、ノー残業デーを導入した企業は60パーセント以上との結果が出ています。

参照:時間外労働削減の好事例集より

多くの日本の企業には、上司が職場に残っていたら部下が帰りにくいと感じる習慣があります。そのうえ効率よく仕事をする理由が、「多くの仕事を引き受けるためではなく早く帰宅するため」ではいけない、との風潮すらあったのではないでしょうか。 従業員が残業をなくそうとどれだけ効率よく仕事をしても、古くからの企業の習慣を変えるのは困難です。そこでノー残業デーを取り入れれば、従業員や管理職に時間管理の意識を持つよう促します。ノー残業デーが、意識や考え方を変えるきっかけに繋がるのです。

具体的にノー残業デーの日程を決めていなくとも、残業時間の削減に力を入れている企業があります。ある企業では労働生産性向上のため、時間の管理と改善に尽力しているのです。従業員がお互いの業務スケジュールを共有し、反省点や気づきを意見できる環境を作って残業削減に成功しています。部署ごとに決められるノー残業デーがあるので、その部署が忙しい時期に無理をして残業を減らす必要はありません。また別の企業では、朝の勤務でも深夜と同じ割増賃金や朝食を支給したり、残業をする人には声かけをしたりすることによって、仕事の効率化ができています。

その一方でノー残業デーを実施している企業でも、「ノー残業デーに飲み会があるから、意味がないように感じる」「強制力がないので、アナウンスが流れるだけとなっている」との意見もあります。また、ノー残業デーに残業すると叱られるため朝にサービス残業をしている人もいるのです。このようにノー残業デーの効果や実態は、企業によってかなり異なります。

ノー残業デーは水曜日が多い?

お伝えした通り部署ごとに曜日を変えている企業もあるので、水曜日がノー残業デーだと決まっているものではありません。しかしノー残業デーを水曜に設定している企業が多いので、水曜日にするものだと思っている人が多いのだと思います。月曜から出勤する仕事では、一週間の中で木曜日が一番辛いと感じることはありませんか。

金曜日ならその日頑張れば、仕事は休みです。木曜日は週の後半にもかかわらずあと1日出勤日がありますので、辛く感じやすいと言いますよね。週の中間である水曜日にノー残業デーを設置して、労働生産性やモチベーションの向上を図っているとも言われているのです。
 

ノー残業デーのメリット・デメリット

サラリーマン 働く人 働く人の中には、従業員のメリットだけに限らず「ノー残業デーを実施して、企業に何のメリットがあるのか分からない」と思う人もいることと思います。ここでは、従業員・企業両方の視点からノー残業デーのメリット・デメリットを見てみましょう。

ノー残業デーのメリット・従業員

従業員の大きなメリットは、プライベートの時間を確保できることです。毎日仕事に追われずプライベートの時間ができると、前向きな気持ちで仕事ができるようになります。また、今までよりも仕事を早く終わらせなければならないので、仕事を効率化する意識が持てるのです。その結果、仕事をコントロールするスキルが身について効率化になります。仕事の効率化が習慣化すれば、ノー残業デー以外の日にも余裕ができるメリットがあるのです。早く帰宅した日に、スキルアップのための学習をしたり習い事をしたりすれば、そのスキルを仕事に活かせます。学習したことを仕事に活かすことができると、やる気の向上にも繋がるのです。

残業するのが当たり前という風潮の職場なら、ノー残業デーができたことにより定時に帰宅しやすくなります。未だに残業するのが仕事熱心で良いという考え方が残る企業も多いので、表面上は定時退社があっても帰宅しにくいのが現状です。ノー残業デーを理由に帰宅しやすくなるのも、大きなメリットの1つと言えます。
 

ノー残業デーのデメリット・従業員

ノー残業デーを実施しても仕事の効率化が行われないと、仕事が翌日に持ち越されることになります。すると、翌日以降の仕事時間が増加してしまうので、本末転倒。翌日以降の仕事時間が増加しないようにするには、従業員全員がノー残業デーの意味を理解することが大事です。従業員全員が正しい意味を共有すれば、仕事を効率化する意識を持つきっかけになります。

ノー残業デーのメリット・企業

企業にとっては、コストを減らせるメリットがあります。日常的に残業が行われていると、光熱費や残業代など経費がかさむのです。経費がかさむことは、企業の経営に影響します。ノー残業デーを正しく実施できれば、残業にかかるコストを減らせるのです。

近年、仕事よりもプライベートの時間を重視する人が、必ずしも優秀ではない人とは限らなくなっています。プライベートの時間を重視する人が企業を選ぶときに確認するのは、残業時間がどれだけあるかということ。残業時間を減らせれば、ワークライフバランスを尊重している企業だと、優秀な人材にアピールできます。

上司や先輩が残業している中で自分だけ帰宅しにくいように、付き合いの残業というものがありますよね。残業代を稼ぐために不必要な残業をしている従業員も、中にはいます。ノー残業デーは、不必要な残業をしている従業員の意識を変えるきっかけに繋がるのです。

ノー残業デーのデメリット・企業

クライアントの対応で不備が発生するのが、ノー残業デーのデメリットです。担当者がいないときにクライアントから仕事の依頼が入ったときには、対応に支障をきたしてしまいます。ノー残業デーを始めるときは、社内・社外両方に通知することで業務が滞りなく進むのです。

ノー残業デーの日程が部署ごとに違う場合、部署間の連携が回りにくくなります。基本的にノー残業デーは全社で同じ日に設定するか、情報を共有できる環境を整えるのがおすすめです。

形だけの取り組みにならないため企業がしていること

ノー残業デー ノー残業デーの実施をアピールしていても、形だけの取り組みになっている企業があることを知れば、不安になりますよね。しかし形だけの取り組みにならないよう、ポイントを抑えて実施している企業もあります。きちんと中身のあるノー残業デーを実施している企業は、どのようなポイントを抑えているのでしょうか?これを知っておくことで、中身のあるノー残業デーを実施している企業の見極めにも役立つことでしょう。

仕事の状況を確認しながら進める

繁盛期や納期が近い日など仕事を多くこなさないといけないときに、定時で帰宅するのは無理があります。無茶な時期にノー残業デーの指示を受けてもできないので、結局形だけのものになるのです。現場で働いているときに無茶な指示を受けると、反発したい気持ちになります。役員と現場が反発しないためには、繁盛期と閑散期の見極めが大事。仕事の状況を確認しながらノー残業デーを実施することが、形だけの取り組みにならないコツと言えます。

ノー残業デーを管理職が進んで行う

部下にノー残業デーを浸透させるためには、管理職が積極的にノー残業デーに取り組む必要があります。これは、上司が残業しているから部下が先に帰りにくいという空気を変えるためです。ノー残業デーには管理職が定時に絶対帰宅することで、部下にも少しずつ浸透していきます。

ノー残業デーの存在を周知する

ノー残業デーがあっても、存在を知らない部下が多いため職場に浸透しないこともあります。これでは、実施した意味がありませんよね。社内放送や朝礼、社内のポスターなど、従業員に知らせる方法は複数あります。

交代制を取り入れる

交代制が向いているのは、クライアントの対応が多い部署や企業です。突然のクライアントの訪問が考えられる企業の中には、交代制を実施して対応しているところがあります。たとえば、ノー残業デーの設定曜日が水曜日の人もいれば木曜日の人もいるといった形です。突然のクライアントの訪問を1つ1つ逃さないようにすれば、いずれ業績の向上に繋がります。

残業が評価と連動するように設定している

残業が評価と連動するように設定している企業があります。あらかじめ残業時間の目標を立てておき、現実の残業時間が目標よりも少なかったときに賞与が加算される仕組みです。貰えるものが具体的に決まっていればやる気にも繋がりますし、仕事を効率化するために頭を使うようになります。

業務の担当者を複数設定している

ノー残業デーを形だけのものにしないために、業務の担当者を複数設定する企業があります。業務の担当者が1人しかいない場合、担当者の急な欠席に対応できないうえチーム連携が滞りやすくなりますので、ノー残業デー以外にもデメリットがあります。一方担当者が複数いれば、担当者Aが定時で帰宅しても、担当者Bが仕事をこなせるのです。また、仕事のマニュアルを整えておくことにより、担当者AとBが同時に定時で帰宅したときでも他の従業員がフォローできます。形だけのノー残業デーにしないために、業務のあり方から考える必要があるのです。

ノー残業デーの過ごし方。有意義に過ごすには

ノー残業デー 運動 健康 今まで平日は仕事ばかりしてきたので、突然ノー残業デーだと言われても過ごし方が分からない人もいるのではないでしょうか。ここでは、ノー残業デーの過ごし方を紹介します。

英会話を学ぶ

英会話は社会人の習い事の中でも多いものです。英会話を学習する動機には、仕事で必要な場合と趣味で覚えたい場合があります。外資系の企業に勤めているのなら、英会話が必須です。勤めている企業が外資系でなくても、日本に訪れる外国の方は増えていますから英語で話す機会は増えることと思います。英会話を始める前には、自分がどの程度の英会話を何のために話せるようになりたいのか、目的をはっきりさせてください。目的がぼやけていると、やる気が出なくなったときに止めてしまう可能性も高まります。中でも多いのは、「英会話ができるようになれば便利なのでは」と考える人です。最近は英会話のスクールに通う選択肢以外にも、オンラインで学習したりカフェでマンツーマンの授業を受けたりすることができます。

身体を動かす

机に長時間座り続けているのは、健康にも良くありません。ノー残業デーにはスポーツジムに通って身体を動かしている人もいます。運動をすることは健康に良いだけに限らず、ストレス発散にも繋がるのです。運動はメンタルヘルス不調の改善を手助けするので、メンタルヘルス不調を感じている人にも向いています。現在新型コロナウイルスの流行によりスポーツジムに行きづらい人も多いことでしょう。そんなときは、自宅でYoutube動画などを見ながら運動をするのも可能です。

友人・知人とお酒を飲む

職場の飲み会では上司や先輩がいるので、心からストレス発散できないのが本音です。気の合う友人や同僚だけで飲み会ができるのも、ノー残業デーの魅力。社会人になると、お互い予定が合わずに疎遠になってしまう友人もいます。疎遠になってしまった友人と、久しぶりに会ってみるのもいいですよね。定時に仕事を終わって18時ぐらいから飲み会を始め、適度な時間でお開きにすれば帰宅が遅くなりません。仕事以外の話をして、同僚の思わぬ一面に気づいたりすることもあるのではないでしょうか。

健康経営の一環としてノー残業デーを取り入れる

残業 ノー残業デーは従業員の健康を考える取り組みの一環でもあります。そのため健康経営を実施する企業がノー残業デーを実施していることもあるのです。お伝えした通り長時間の残業は、従業員にとっても企業にとってもデメリットがあります。

【残業時間が多いことのデメリット】
  • プライベートの多くを犠牲にしているためやる気が向上しない
  • 生活のリズムが乱れるためメンタルヘルス不調や体調不良に繋がる
  • 企業の離職率の低下に繋がる
  • 体調不良の従業員が増えたことにより、労働生産性の低下に繋がる
残業自体が悪いものというわけではありませんが、残業が当たり前な風潮だと体調不良の従業員が増えます。体調不良の従業員が増えると離職率や労働生産性の低下に繋がるのです。健康経営に取り組む企業は、この悪循環に陥らないために残業時間の削減を図っています。

残業時間を削減する取り組みには、ノー残業デーだけではなくフレックスタイム制というものもあります。
以下のコラムも合わせてご覧ください。

おすすめコラム
健康経営を考えるならフレックスタイム制の導入も検討する

まとめ

ノー残業デーについて解説しました。
  • 企業と従業員が把握している残業時間は大きく異なっている
  • ノー残業デーの意味を分かっていなければ形だけのものになりやすい
  • 中身のないノー残業デーにならないために、工夫をしている企業もある
  • 企業ごとにノー残業デーの実態は異なるので、ノー残業デーの内容を理解しよう
  • 健康経営の一環としてノー残業デーを実施する企業もある
「ノー残業デーをしているから」という理由で企業を選ぶと、その実態は中身のないものかもしれません。ノー残業デーを実施している企業が、必ずしも従業員の健康を考えている企業とは限らないので、その内容を詳しく知ることが大切です。
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