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  • 2021.03.11 (最終更新日:2022.04.06)

働き方改革を建設業で行うのは不可能か。環境改善のためのさまざまな施策

目次

建設業の現状について

建設業 働き方改革が進められていますが、まだまだ実現の難しい業種があることをご存知かと思います。建設業も実現が難しい業種の1つです。

建設業の現状を確認

建設業に対して、あなたはどのようなイメージを持っていますか。「残業がとても多そうだ」「体力勝負の辛い仕事ではないだろうか」と思う人も多いことと思います。建設業で働いている人の残業時間は、月100時間も珍しくないと言われているのです。また、週休2日を取得できない技能者の割合は4割以上にのぼります。長時間労働を削減することは、建設業の課題となっているのです。しかし建設業で働く技能者や建設に対する投資が減少している中で時間外労働の削減は困難だとして、労働環境の改善に猶予が与えられています。

先ほど「あまり良いイメージではない人も多いのでは」と言いましたが、これは就職者も感じていること。建設業のいわゆる3K「きつい・きたない・危険」や長時間労働を強いられるイメージによって、就職者数が減ってしまうのです。建設業の就職者が減ったのは、ワークライフバランスを求める就職者や職場環境を重視する就職者が増えたことも原因の1つではないでしょうか。ワークライフバランスを求めることが悪いことだとは思いませんが、建設業から見ると大きな壁だと言えます。長時間労働の削減や週休2日を取り入れることは、建設業に対する悪いイメージを改善するために必要なわけですね。

「建設業働き方改革加速化プログラム」とは?

建設業は衣食住の「住」の部分なので、私たちの日常生活と深い関りがあります。状況の改善が難しい中で、近年さまざまな取り組みが考えられるようになってきました。建設業の労働環境を改善して就職者を増やすために、建設業働き方改革加速化プログラムというものが作られたのです。これは平成30年3月に決められたもので、比較的新しい施策。建設業では29歳以下の割合より60歳以上の割合の方が多いこともあり、およそ10年後に団塊世代が大量に離職するのではないかと言われています。将来的に建設業の状況の悪化を改善するため、国土交通省が定めたのです。

建設業働き方改革加速化プログラムでは、長時間労働の削減や生産性の向上、社会保険の改善を目指します。「建設業で長時間労働の削減をどのように行うのだろうか。」と思う人も多いことでしょう。たとえば意欲的にICTなどの最新技術を使って、業務の効率化に成功した建設会社も多くあります。業務の効率化に成功した建設会社では、勤怠の管理に人工知能を使ったり測量にドローンを使ったりしているのです。最新の技術を使うためには、通常は経費がかかります。ところが建設業には、国土交通省からの助成金制度があるので、条件によって利用することができるのです。厚生労働省の公式ホームページで紹介されているので、合わせてご覧ください。

外部リンク
厚生労働省 建設事業主等に対する助成金より

建設業で働き方改革は難しいとの声もある

建設業の労働環境を改善していく動きがある中で、やはり「建設業で働き方改革を実施するのは難しい」との声もあります。実際に建設現場で働いている技能者は、どれだけ非現実的なことなのかがよく分かるのでしょう。建設業で週休2日を取り入れると、納期に間に合わせるのが難しくなるのです。長時間労働の削減を現実的に行うためには、発注者が建設業の働き方改革を理解する必要があります。建設現場で働く技能者の環境だけに注目すれば良いわけではなく、建設業全体が関わる課題なのです。

根本的に考え方を変えることが必要である

建設業 建設業で働き方改革を実施する動きがあるものの、まだまだ難しいことが分かりました。建設業で働き方改革を実施するためには、どんな考え方が必要なのでしょうか。

海外の建設現場は8時間労働

「建設業の労働環境を良くすることは、やはり難しいのではないか。」と感じたのではないでしょうか。働き方改革で目指す建設現場の将来像として、海外の建設現場を参考にすると良い、との意見があります。たとえば、アメリカでは建設現場でも、サマータイムにフレックスタイム制を取り入れるのです。サマータイムとは時計の針を1時間進めて日の出の時刻が早まる時期に合わせることを言い、アメリカで「デイライト・セービング」と呼ばれています。会社から指定された時間が朝7時から夜7時だとしたら、その間に8時間働けばいいのです。そのため出勤が朝の8時だったとしても、16時にはほとんどの人が帰宅します。1分ごとに残業代がつくのでどこの現場でも効率よく仕事を回すようになり、建設業でどの立場にいる人にとってもメリットがあるわけです。

建設業の働き方改革は他人事ではないと理解する

ほとんどの人は建設業の技能者なら休みよりも仕事を選ぶ、と考えています。お伝えした通り最近はワークライフバランスを重視する就職者が増えているので、ここに解釈の不一致があるのです。また、請負はたくさん働いた方が良いとの意見もありますが、無理して働いて体を壊しやすくなる不安もあります。建設業には、仕事以外の課題を先送りしてしまう体質もあるのです。社会保険の加入状況を問題視する動きも、最近出てきたばかり。建設業で働いていた人の中には年金に未加入の人がたくさんいるため、引退した後に生活保護を受けているのではないか、と言われています。建設業の労働環境改善の問題は、建設業とは関わりの無い人にも関係する問題なのですね。

週休2日制にするためには、賃金を上げなければ今まで通りの賃金を得られません。そのため、休む分生産性を向上する必要があり、これを考えると週休2日制の実施が難しくなります。会社が技能者の固定給を上げて工期を伸ばすためには、最終的に商品を利用する私たち国民も建設業の働き方改革を認識しなければいけないのです。商品の利用者に完成を待ってもらうことを考えると、週に2日休むことに罪悪感を覚えます。しかし建設業全体で週に2日休むことが当たり前になれば、「納期が早いのならその分賃金を上げて欲しい」と言いやすくなるのです。

建設事業者と技能者両方にメリットのある取り組み

キャリアアップ 建設業では近年、「建設キャリアアップシステム」というものが始まりました。建設キャリアアップシステムは建設事業者にも技能者にもメリットのある取り組みですが、どのような内容なのでしょうか。

建設キャリアアップシステムの目的とは

建設キャリアアップシステムは建設事業者の業務負担軽減や優秀な人材の確保を目的に、国土交通省が増進しています。本格的に始まったのは2019年4月からです。国土交通省では、開始から5年で技能者全員の登録を目指しています。建設事業者や技能者は、建設キャリアアップシステムに情報を登録します。その情報とは、建設事業者なら工事内容や現場名などで、技能者は持っている資格や社会保険の加入状況などです。情報を登録した後は個人にカードが配布されますから、現場で仕事を行うときに配布されたカードを読み込ませて就業履歴を残します。カードの情報を元に、技能者を適切に評価するのが建設キャリアアップシステムなのです。国土交通省が導入を増進している背景から、建設業において必要性が高まると考えられています。

技能者個人のスキルアップにより、処遇の向上に繋がることが就職者に認識されれば、就職者の増加に繋がると期待されているのです。また社会保険や資格の状況が確認しやすくなるので、管理の効率化も期待されています。

導入による技能者のメリットについて

建設キャリアアップシステム導入によって、今まで建設事業者に伝えにくかった技術や情報が客観的に分かるようになります。たとえば、持っている技術は保有資格で証明できますし経験は就業日数で証明できるのです。客観的に情報が分かるようになれば、適切な賃金を受けられる機会に繋がります。就業実績がきちんと管理されれば、退職金に関わる事務手続きが滞りなく進められるようになるのです。建設キャリアアップシステムでは技能者の技術をレベル分けすることを考えているので、キャリアアップの計画が立てやすくなると言われています。

導入にはどのような課題があるのか

いいことばかりのように感じますが、建設キャリアアップシステムを導入するにあたっても課題もあります。たとえば、端末の運用や保管に手間取ることです。導入のために管理するタブレットPCやICカードリーダーが増えるため、現場監督の負担が増えます。現場監督は現場に到着した技能者に呼ばれることが増えるうえに、1対1で勤怠登録の手続きを教えなければいけないのが現状です。また、タブレットPCなどの置き場所に困ることがあります。水濡れや盗難を防ぐためには事務所にタブレットPCを置きますが、不特定多数の従業員が出入りする場所なので難しいとの課題があるのです。

建設業の魅力とは

建設業 3Kのイメージがあるので悪いところばかり注目されがちな建設業ですが、もちろん魅力もあります。

衣食住の1つであり、なくならない仕事である

お伝えした通り建設業は衣食住の「住」に関わる仕事です。日常生活を送るうえで欠かせない仕事なので、今後もなくならないと言えます。どれだけIT化が進んでも、過去に造り上げてきた建設物までプログラムで管理することは難しいです。それと同時に、過去の建設物をIT仕様にするために全て作り変えることも不可能。つまりこれからも人手の必要な業界だと言えるのです。IT化が進んだり技術が進んだりするにしても、それらを専門的に扱える人手も必要になります。建設業は自然と関わるので、予想外の出来事が頻繁に起こる仕事です。長年積み重ねた知識や経験があれば活用できるので、仕事に困ることは少ないと言えます。

後に残せるものを作る仕事である

建設業で造るものは、数年で壊れてしまうものではありません。長く持てば百年や千年残るので、自分がこの世を去った後にまで残っていくものを造る仕事です。誰もが知ることになる有名な建築物の建設に関われば、たくさんの人の記憶に残り続けることになります。

コミュニケーション能力が向上する

建設関係の技術以外に必要なものが、コミュニケーション能力です。自分がどれほど億劫でも、人とコミュニケーションを取らなければ仕事が滞ってしまいます。積極的に話しかけていくことも大事ですが、積極的ではなくても周囲から話しかけられる環境なのです。周囲からよく話しかけられることを考えると、建設業にはコミュニケーション能力を持っている人が多いのでしょう。話しかけるのが億劫な性格でも、建設業に携わっていたらいつの間にかコミュニケーション能力が上がっています。

転職しやすい環境である

建設業の中で転職しやすくなるのも、魅力の1つです。建設業は慢性的な人手不足に悩んでいるので、なるべく人手が欲しいと考えています。建設業で働いたことのある人なら、職種が違っても会社は嬉しいもの。なぜなら、まったく経験の無い人材よりも、建設業のことをある程度理解しているからです。建設業で真面目に仕事をして経験を積んでいると、良い条件の会社からスカウトが来ることもあります。

優しい技能者も多い

建設業の技能者には、なんとなく頑固で高圧的なイメージを持っていませんか。建設業の技能者は、必ずしも頑固で高圧的な人ばかりではないのです。きちんと関わってみれば意外と穏やかな人も多くいます。現場作業と言えば何か失敗してしまったときに怒鳴られるイメージがあるかもしれませんが、感情任せに怒鳴る人は少ないのです。建設業の仕事では細部へのこだわりや問題解決能力が必要。事故やミスを防ぐために状況を細かく把握しますし、問題解決のため機敏に動きます。感情任せに動いていては勤まらないのです。

ホワイトな会社を目指す建設業の取り組みとは

建設業 ホワイトだと言いにくい労働環境が多い中で、従業員の健康問題の改善を図る会社もあります。

健康経営に取り組む建設業の会社がある

建設業の中には、健康経営を実施する会社もあります。健康経営では従業員の健康問題は自社の問題だと考えて、改善を図るのです。ある会社では、健康診断で産業医による細やかなチェックを行っています。また、長時間労働による体調不良を防ぐために、疲労蓄積度をリスト化して分かりやすくしているのです。別の会社では、食生活改善の取り組みとして栄養士による食育セミナーを年に1度実施したり積極的にウォーキングイベントへ参加して運動の増進を図ったりしています。労働環境の改善は難しいと言われている中でも、健康経営を実施している会社もあるので就職活動のときの参考にしてください。

健康経営に関するコラムのおすすめ

当コラムでは、健康経営について情報発信をしています。健康経営について理解を深めれば、就職活動をするときの目安になるのです。

健康経営優良法人認定制度は、優良な健康経営を行っている会社を顕彰する制度。認定されるためには組織体制や健康課題の把握など、カテゴリーごとに複数の認定基準があります。以下のコラムでは、2020年の認定基準を紹介しているので、参考にご覧ください。

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健康経営優良法人認定制度は、始まった当初からずっと同じものを続けてきたわけではありません。時代の流れに伴い変化しているもので、2021年から新設された制度もあります。新型コロナウイルスの流行を受けて、感染予防対策の評価方法も変わっているのです。健康経営についてもっと知りたい方は、以下のコラムも合わせてご覧ください。

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まとめ

現場仕事である建設業で働き方改革の実施は困難だと言われています。しかし建設キャリアアップシステムの開始や助成金など、労働環境改善のためにさまざまな対策がされているので、これから良くなる兆しがあると言えるのではないでしょうか。一度悪い部分が見えてしまうと、そのことに囚われてしまう人も多いと思いますが改善の動きもあるのです。しっかりと情報収集をして、希望の働き方ができる会社かどうか見極めることが大事だといえます。
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