• 健康経営
  • 2021.04.21 (最終更新日:2022.03.26)

受動喫煙対策は労働安全衛生法にも取り込まれている

目次

労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法 受動喫煙対策が望まれている中、労働安全衛生法と健康増進法の二つに受動喫煙に関する法律ができました。そのうちの労働安全衛生法とは、どういったものなのでしょうか?

労働安全衛生法とは、労働災害を防止したり、労働者の安全を確保したり、健康を守ったり、快適な職場環境を作るための法律です。もともとは労働基準法の中にあったものでしたが、1972年に労働基準法の一つではなく、一つの法律として独立しました。
労働安全衛生法が独立していなかった頃は、日本の経済が目まぐるしく変わっていた時代ということもあり、新しいものが増えていたこともありましたが、安全よりも生産を重要視していたため、年間労働災害による死亡者は6000人を超えていました。それが、労働安全衛生法が設置され、事業者の意識が少しずつ改善されていき、労働災害による死者を抑えることができたそうです。労働安全衛生法は時代の変化とともに、内容も変わっていくというものでもあります。

また、労働安全衛生法で安全衛生管理を行うことは、
・生産性向上
・従業員のモチベーション向上
・人手不足の解消
に繋がっています。

つまり、働き方改革の考え方と同じということです。そして、健康経営の考え方とも同じです。労働安全衛生法は職場環境を整えるための指針となるものですが、それは今求められている働き方改革、健康経営とつながっています。従業員の健康を考えた経営の仕方がわからないと言っている事業者であっても、労働安全衛生法は知っているはずです。実は日本でも、知らず知らずのうちに昭和の時代から健康経営に繋がる法律があったのです。

労働安全衛生法にも組み込まれた受動喫煙対策とは

受動喫煙対策 労働安全衛生法に組み込まれた受動喫煙対策に関するのは3か所あります。
・第22条 事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
⇒つまり健康障害になるようなものを事務所内で放置をしてはいけないということです。受動喫煙を続けていれば、健康障害を起こすことは誰でも知っていることですので、非喫煙者が受動喫煙をしないように事業者が行わなければいけないということも含まれています。

・第23条 事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置、その他労働者の健康風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない。
⇒一見、受動喫煙対策とは関係ないように見えますが、「その他労働者の健康風紀及び生命の保持のため必要な措置」という言葉が入っているため、受動喫煙を許していれば健康風紀は乱れますし、受動喫煙を続けていれば死に至ることもあるため生命の保持にも関わります。

・第71条の2 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。
 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
⇒受動喫煙を許している環境を、作業環境が快適とはいえません。快適な職場環境にするには、健康被害が起こらないように措置をする必要があります。

以上の3点が、労働安全衛生法に組み込まれた受動喫煙対策に関する法律です。またこの法律が示す施設として含まれているのは、事務所、工場、作業場だけではなく、学校、体育館、病院、劇場、鉄道 駅、事務所、飲食店、旅館等も含まれます。こういった場所には事業者や労働者、関係会社の労働者がいるためです。

もう一つの、改正健康増進法の方では、第25条にもっと明確に「受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」と明言されています。受動喫煙対策は、この二つの法案によって今後は厳しく取り締まっていくことになります。

職場における受動喫煙防止のためのガイドラインとは

喫煙室 快適な職場環境の形成を行うために作られたのが「職場における喫煙対策のためのガイドライン」です。
・喫煙室を設ける場合、可能な限り非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室を推奨
・喫煙室等へ向かう気流の風速を0.2m/s以上、職場 浮遊粉じんの濃度を0.15mg/m3以下とする
などが書かれています。

「職場における喫煙対策のためのガイドライン」には、趣旨についての項目、用語の定義の項目、組織的対策の項目、喫煙可能な場所における作業に関する措置の項目、各種施設における受動喫煙防止対策の項目、受動喫煙防止対策に対する支援の項目の6つの項目に分けられています。

その中でも「組織的対策」の項目には、
・事業者・労働者の役割
⇒事業者だけが受動喫煙対策を考えるわけではなく、労働者側にも受動喫煙に対する知識を持ってもらうことが必要で、労働者側からも同対策をしたらいいのかの意見を聞くこととされています。
・受動喫煙防止対策の組織的な進め方
⇒推進計画の策定、受動喫煙防止対策担当部署の指定、労働者の健康管理、標識の設置・維持管理(喫煙室を作る場合)、受動喫煙防止対策への意識や知識や情報提供、求人者に対して社内で行っている受動喫煙防止対策をどのような形で行っているかの明示、妊婦等への特別な配慮
というような、大きく分けて3つの重要なことが書かれている項目ですので、何から手を付ければいいのかがわからない場合は、この項目をご確認ください。

また、「各種施設における受動喫煙防止対策の項目」では、
・第一種施設について
⇒第一種施設に関しては健康増進法によって「原則敷地内禁煙」のため、特定野外喫煙場所をのぞき労働者に喫煙させないことが求められています。
・第二種施設について
⇒第二種施設に関しては健康増進法によって「原則屋内禁煙」のため、禁煙を求めていますが、喫煙専用室、指定たばこ専用喫煙室を作れば問題がないことが書かれています。
・喫煙目的施設
⇒喫煙施設であることを明らかにし、受動喫煙を望まない人が業務や飲食を割けることができるように配慮することが求められています。
・既存特定飲食提供施設
⇒喫煙目的施設と同じですが、飲食提供施設においては、喫煙可能室設置施設の届出を保健所に行うことなどが書かれています。
というように、この項目は健康増進法と被った内容になっています。

ガイドラインに書かれていることは、すべて基本的なことばかりです。またここに書かれていることを守れていない場合は、罰則として罰金を支払わなければいけないので、十分に注意してください。

受動喫煙防止対策に対する支援とは?

助成金 国は受動喫煙のための防止対策を行ってくださいと言っているだけではありません。対策に必要なお金に対する助成金や、相談支援なども行っています。

・受動喫煙防止対策助成金
職場での受動喫煙を防止するために喫煙専用室の設置をする際の工事費の一部を補助するというものです。ただし助成の対象となるのは、労働者災害補償保険の適用事業主であり、中小企業事業主という縛りがあります。労働者の数や資本金などで縛られているので確認をしてください。

・受動喫煙防止対策にかかわる相談支援
職場の受動喫煙防止対策に取り組む事業者を支援するために、労働衛生コンサルタントなどの人が無料で相談に乗ってくれます。電話相談窓口もあり、直接ではなくても相談をすることができるので、気軽にできるところもポイントです。
例えば、
・受動喫煙防止対策の必要性は認識しているが、専門的な知識がないため、どのような対策から始めるとよいか分からない。
・今後、受動喫煙防止対策を円滑に進めるための計画の立て方、実行していくためのポイントを教えてほしい。
・受動喫煙防止対策の意義について経営首脳者や管理者の理解を得るにはどうしたら良いか。
・喫煙者と非喫煙者で意見が合わず、取組が進められないが、どうしたら良いか。
・事業場内の受動喫煙の状況を把握するためにアンケートの実施を考えているが、どのような内容を盛り込むと効果的か。
といったことも聞くことができますし、設備に対しても深く聞くこともできます。

こういった国の支援を使って、今一度受動喫煙防止対策ができているかを確認をするのもいいでしょう。

従業員の健康を考えるのであれば受動喫煙対策は必須

禁煙 受動喫煙対策は法律として労働安全衛生法や改正健康増進法で定められましたが、すべての従業員の健康を考えるのであれば、喫煙者への禁煙を促すことも大事です。健康経緯を行っている企業では、受動喫煙対策は当然のこととし、喫煙者への指導も始めています。

今回の法案では、喫煙室を作れば喫煙できるとしていますが、いずれは室内での喫煙は喫煙室があったとしてもNGになったり、屋外での喫煙へのルールもさらに厳しくなる可能性もあります。企業の中では、喫煙者に対して禁煙とは言っていなくても、屋内屋外ともに会社の敷地内では全面禁煙を行ったところもあります。

全面禁煙にする方が、従業員の健康を考えた事業主の考えに当てはまりますし、喫煙室を作った企業と、喫煙室を作らずに全面禁煙に舵を切った企業では、企業としての出費も抑えられています。

喫煙者の多い企業では、なかなか難しいことかもしれませんが、喫煙者を減らすことは企業としてもプラスになることに繋がっています。健康経営優良法人を目指していても目指していなくても、自社の働き方改革として禁煙にも目を向けてみてはいかがでしょうか?

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