• 健康経営
  • 2021.04.30

受動喫煙の正しい知識を身につける。世界や日本の取り組み事例について

目次

受動喫煙についての知識

喫煙 職場 受動喫煙についてどこまでご存知ですか。ここでは健康に与える影響や、普段はあまり考えない受動喫煙の範囲、加熱式たばこで考えられる受動喫煙の影響を解説します。

健康に悪影響を与えるのは自分だけではない

喫煙者なら、受動喫煙という言葉を聞いたことがあると思います。お察しの通り喫煙で健康に悪影響を及ぼすのは、喫煙者本人だけではありません。ニコチン、一酸化炭素、タールは三大有害物質だと言われていますが、たばこの煙には発がん性物質が70種類以上も含まれています。受動喫煙によってリスクが高まる病気には、肺がんや脳卒中、虚血性心疾患などがありますよ。また受動喫煙による死亡者数を男女別にみると、上記3種の病気で女性の方が、死亡数が多いです。普段からたばこを吸う人と比べて吸わない人は感受性が高いので、少量の他人の煙でも大きな健康被害になります。日本人の肺がんのリスクは受動喫煙によっておよそ1.3倍になることが報告されているなど、科学的にも健康への悪影響が証明されています。

参考:外部リンク
受動喫煙について 厚生労働省

受動喫煙は煙が発生しているときだけではない

飲食店によって出入り口にエアカーテンを設置したりガラスドアで仕切ったりしていますが、この対策は煙を完全に遮断するものではありません。たばこの煙は人が出入りするときにくっついて、一緒に移動しているからです。そのためほかの人が吸うたばこからの煙を感じたときだけに限らず、壁やカーテン、髪の毛や服などからたばこの臭いがしたときには、すでに有害物質による悪影響を受けていると言えます。受動喫煙がどういうものかとの知識はあったとしても、ここまで考えたことのある方はほとんどいないのではないでしょうか。喫煙によってできたたばこの煙は、部屋の家具や自動車の内装などに付着してから、少しずつ空気中に漂います。たばこの煙が発生していない場所でも、わずかにたばこの臭いが残っていると悪影響を受けてしまうのは、このようなことが原因だというわけです。サードハンド・スモークと言います。

加熱式たばこなら受動喫煙を起こさないのか

近年、煙が発生しない新しいたばこが出てきています。加熱式たばこはその中の1つで、電気でたばこの葉を可燃して蒸気を起こす仕組みです。「加熱式たばこは健康被害が少ない」と考える人は多いと思いますが、実際はどうでしょうか。たしかに普通のたばこよりも有害物質が少ないから、疾患に罹るリスクの減少に繋がるとの発表もありますが、この発表を否定している会社もあります。また、加熱式たばこからも有害物質が発生していることも分かっているほか、必ずしも体への悪影響が少ないわけではありません。

世界の受動喫煙対策は進んでいる

世界  受動喫煙により健康被害が発生することは明らかなものとして、世界では対策が進んでいます。アメリカの一部の州では、1990年以降には既に全面禁煙を取り入れている職場やバーがありました。国全体を全面喫煙とする法律を作ったのは、2004年のアイルランドです。アイルランドに続き同年には、ウルグアイやイギリス、香港なども多くの州で屋内の全面禁煙を取り入れています。喫煙者の利便性よりも、働く人を受動喫煙から守ることが大切だと考えているからです。2016年には既に、55ヶ国が全面禁煙としており、途上国も禁煙に取り組んでいます。子どもが乗車する自家用車内も、禁煙の対象とする国もありますよ。禁煙を進めている国や州では喫煙を法的に規制しているので、違反すると本人への罰金はもちろんのこと、違反を容認した施設にも厳しい罰則があります。日本でも多くの公共施設で禁煙化が進んでいるように感じられますが、まだ全て禁煙になったわけではありません。世界の受動喫煙対策と比較しても、日本は遅れていると言えます。

受動喫煙の対策はなぜ進むのか

禁煙

受動喫煙対策が進むわけ

なぜ近年、受動喫煙防止の対策が進んでいるのでしょうか。受動喫煙の対策として国が法律や規則の一部を改正し、2020年4月からその内容が適用されるわけです。受動喫煙による健康被害は世界的に問題になっていることも、この法案が可決した背景だと言えます。世界保健機構は受動喫煙を軽く見ず、2015年にたばこ規制枠組条約を発効したわけです。

今まで、受動喫煙防止対策を行うことは努力義務でした。努力義務とは文字通り、努力をすることが義務付けられているということです。基本的に努力義務に違反した場合でも、刑事罰もありませんし制裁もありませんので、本人の自主的な行為を促す効果があることに留まります。ところが近年受動喫煙に対する問題意識が出てきたり健康志向へ関心が高まったりしているので、法案を見直しすることになりました。

従業員の健康被害が問題視されているから

「世界的に受動喫煙防止へ動いているから」という理由がある一方で、国内でも受動喫煙が課題となっています。たばこの煙を理由に退職したものの、就職活動時に企業へその理由を伝えたとき相手に理解してもらえず、悩んでいる方もいるほどです。職場内で自分1人しかたばこを吸わないため、特定の場所で「吸うのをやめてほしいと伝えにくい」と頭を抱えている人もいます。その方は上司が愛煙家のため、そんなことを言ったら退職せざるを得なくなるのではないか、と悩んでいました。お伝えした通り日本でも禁煙の動きがある中で、まだまだ受動喫煙の被害に遭っている人は多いです。企業や現場では、たばこを手放せない愛煙家の方も多くいます。従業員の健康被害は、考えているよりも深刻なものです。

受動喫煙防止に関する法律の概要

受動喫煙防止に関する法律には、健康増進法と職業安定法施行規則などがあります。ここでは、2種類の法律の概要を解説しましょう。受動喫煙防止の対策は、マナーから義務となるわけですね。施設ごとに適用ルールが異なるので、注意しましょう。法律の改正によりたくさんの企業で屋内での喫煙できなくなったほか、喫煙するには喫煙室の設置が義務付けられました。法律の改正に伴い、喫煙設備に関する標識の掲示が決められています。どんな標識があるのか確認したい方は、標識の一覧をご覧ください。

参照:外部リンク
標識の一覧 厚生労働省


学校や病院など子どもや患者に気配りが必要な施設は、敷地内が禁煙となります。
受動喫煙に対して行っている対策を採用時に掲示することが義務付けられますが、これは職業安定法施行規則です。つまり求人募集を見れば、企業がどのような受動喫煙対策を行っているのか分かるようになります。「たばこの臭いが気になって仕事に集中できなかった」経験のある方や、日ごろから「仕事を探すときに喫煙の状況が分かればいいのに」と考えている方は、想像している以上に多いわけです。就業場所が複数存在する業務の場合は、それぞれの場所について記載しなければなりません。

企業が受動喫煙の対策を行う手順

喫煙所 企業が受動喫煙の対策を行うには、どのような手順があるのでしょうか。ここでは受動喫煙対策の手順の一例を紹介します。従業員にも関係のあることなので、ぜひご一読ください。

手順1・喫煙状況を理解すること

喫煙に関する法律が改正される中で、企業も喫煙対策に取り組みます。喫煙している従業員や特に気を配るべき従業員はどれだけいるのかを理解するところから始めます。特に気を配るべき従業員とは、たとえば妊婦やたばこにアレルギーのある方、呼吸器や循環器系に疾患のある方などです。そのため従業員に向けて喫煙に関するヒアリングやアンケートを行うことがあるので、本音を話して企業の喫煙対策に協力してください。喫煙は健康に悪影響を及ぼすだけに限らず、火災が発生する可能性もあります。従業員の安全を考えて、全面的に禁煙にする企業も多いです。

手順2・責任者を設置する

屋外に喫煙所を設置することや敷地内を全体的に禁煙にするなど、具体的な対策を考えることは効果的です。しかし具体的な対策を実施するためには現状の把握と、対策を考える人が必要になります。そのため企業では、はじめに受動喫煙に関する責任者や担当部署を設置するところから始める必要があるかもしれません。受動喫煙に関する研修を行ったり、違反者への指導をどのように行うかを考えたりします。

手順3・従業員に周知する

健康意識を高めるために、従業員へ受動喫煙の対策をすることを周知します。受動喫煙への理解を深めれば企業の考えに反発しにくくなるので、滞りなく対策が進むわけです。継続的に周知するために、受動喫煙の説明会やポスターなどを利用します。

手順4・対策を実施する

手順3までの準備が終わった段階で、受動喫煙対策を実際に行います。対策の方法は一通りだけではありませんから、最初のうちは企業の現状に合っており、実施しやすいものから取り組むのです。

手順5・今までの手順を評価する

対策を実施したら、今までの手順を評価することも忘れてはなりません。目標との乖離がないかどうかを確認した後評価して、フィードバックするわけです。評価の時期や基準を前もって決めておくことで、評価を後回しにしづらくなるでしょう。受動喫煙対策は必ず1度で成功するものではありませんので、企業が当初とは異なる目標を伝えてくる可能性もあります。
 

各企業が行う受動喫煙の取り組み事例

禁煙 ここでは、各企業が行う受動喫煙の取り組み事例を紹介します。

未使用の広場に喫煙所を設置した

あるフードテーマパークでは観光客の増加に伴い、法律の改正に合わせて館内を全面禁煙にしました。最初は喫煙する利用者にも気を配ることを考えていたため、喫煙室の設置を考えていたのです。ところが喫煙室を設置すると、喫煙室から離れた店舗と近い店舗の間で来客状況に差が出ることが考えられました。フードコートのように広い場所では利用者に受動喫煙の影響を与えてしまう状況だったので、喫煙室を設置する空間の課題もあったわけです。そこで館内を全面禁煙とし、今は使われていない広場に喫煙所を設置することに決定しました。売り上げが落ちることが心配されましたが、それぞれのお店の店主も喜んで受動喫煙対策に取り組んでいます。

ポスターで利用者に周知した

ゴルフ練習場を展開している企業では、今まで喫煙しながらゴルフをすることができました。ところが最近は子どもや女性の利用者の増加に伴い、喫煙をしないプレイヤーも増えています。全ての利用者にゴルフを楽しくプレイして貰おうと考えて、受動喫煙対策を始めました。この企業でも法律の改正をきっかけとして館内を全面禁煙とし、打席の灰皿を撤去しています。受動喫煙対策に踏み切った当初は、不満を持つ利用者もいました。しかしポスターを利用して分煙化を根強く周知したことにより、取り組みを理解してもらうことができたわけです。受動喫煙対策を行った後には、特に大きなトラブルは発生していないといいます。

喫煙者の考え方にも配慮した

機械工具を取り扱う企業では、喫煙者の考え方にも配慮した取り組みを行いました。同企業では、従業員の健康を維持することは仕事の生産性を高めるだけに留まらず、従業員の幸福にも繋がると考えています。敷地内の駐車場に喫煙所が設置されているため、健康経営を進める上でそのことが課題として取り上げられました。共有スペースの喫煙所は改善するべきだと考え、2019年に撤去しています。同企業では受動喫煙の対策を行うときにも、一方的に禁煙を進めるのではなく、従業員1人1人が健康への意識を高めるように動きました。喫煙は悪いことだと決めつけるのではなく、積極的に健康へ意識を向けるよう手助けをしています。

分煙から段階的に禁煙を実施した

ある運送会社では、物流を担うドライバーの健康管理が最も大切なものだと考えています。事故の発生やドライバーの体調悪化が発生すれば、従業員や企業だけに限らず利用者に対しても大きな損害となります。そのことを踏まえたうえで、受動喫煙対策は2010年ごろから行ってきました。同企業が行ったのは、屋内・敷地内を段階的に分煙から禁煙にしていく取り組みです。従業員からの提案によって、社用車も全て禁煙になっています。受動喫煙対策を行ったことで、望まない受動喫煙がなくなったほか従業員の健康意識が高まりました。身体に異常を感じれば放置せず速やかに病院を受診するなど、健康管理に勤める従業員が増加しています。以前はトラックの一部で喫煙ができていましたがそれが廃止となったのも、従業員の健康意識が高まったからです。企業も定期健診の結果によって従業員が受ける精密検査の費用を負担するなど、健康維持の手助けを行っています。年に一回、栄養士や保健師による食生活のアドバイスや健康に関する講演をするなど、健康に関するイベントを積極的に実施中です。

健康経営でも受動喫煙対策が行われている

禁煙 近年健康経営を行う企業が増加していますが、健康経営優良法人に認定されるには受動喫煙対策が必要になりました。健康経営優良法人とは、優良な健康経営を行う企業を経済産業省が顕彰する制度のことです。健康経営を行っていない企業でも、積極的に受動喫煙の対策を行うところがあります。このような背景から、受動喫煙は健康を考えるうえで大きな課題となることが分かりますね。詳しくは以下のコラムをご覧ください。

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お伝えした通り、日本では遅れてはいるものの受動喫煙対策は少しずつ広がっています。健康的な生活を続けることを考えると、それだけ受動喫煙は身体に悪影響を及ぼすものだというわけです。喫煙は自分1人だけではなく関係のない周囲まで被害に遭うものだと考えて、今一度喫煙の習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

当コラムでは、健康経営について情報を発信しています。健康経営では、受動喫煙に限らずさまざまな視点から環境の改善を図ります。以下のコラムも合わせてご覧ください。

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まとめ

受動喫煙についての知識や、世界や日本での取り組み事例を解説いたしました。健康志向が高まる中で、受動喫煙対策は今後も進んでいくと考えられます。加熱式たばこの被害については、理解していなかった人も多いのではないでしょうか。喫煙について正しい知識を身につけて、周囲の人に迷惑をかけていないか一考してください。

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