• 健康経営アドバイザー
  • 2021.04.27

経営者の本気度で決まる真の「健康経営」

目次

なぜ「健康経営」が注目されているのか?

現在の日本が抱える構造的課題である少子高齢化や人手不足の深刻化、働き方改革の推進などを背景に、年々「健康経営」に取組む企業が増えています。健康経営に取組むことで、従業員が「健康でイキイキと自律的に働くこと」ができることは、今後の日本にとって必要なことです。注目される健康経営ですが、その成否を左右するのは経営者の本気度と言えます。
 

健康経営

「健康経営」の浸透

「健康経営」とは、従来は従業員や協会けんぽ等が主体的に取組む問題と考えられてきた健康問題を、企業が積極的に関与し、その費用を将来に向けた投資と捉え、従業員等の健康管理を経営的視点で考え、戦略的に実践していくものです。最近、この「健康経営」に取り組む企業が増えおり、経済産業省によると、2014年度の健康経営度調査の回答法人数は493社であったものが、2020年度には2,523社と7年間で5倍以上に増加しているとのことです。

「健康経営」のメリット

健康経営は、従業員の活力向上、人材の定着、欠勤率の低下、生産性・業績の向上など経営上のメリットが期待できます。優良な健康経営を実践する法人を顕彰する「健康経営優良法人」認定制度などをとおして企業ブランド価値の向上や社内外に対するイメージ向上など社会的な評価も得ることができます。また、健康経営に取組む企業に対するインセンティブとして事業資金の金利優遇、信用保証料の料率優遇などを行う金融機関もあり、公共調達の加点要件としている自治体もあります。健康に対する投資の対価として、このように多くのメリットがあり、「投資に見合う効果を得る」ことを意識して取組むことも重要です。

コロナ禍での健康経営

新型コロナウィルスは「新しい生活様式」など新たな日常を生み出しました。これは、これまで当たり前としてきたことを見直す契機となりました。企業においても、テレワークの急速な普及により従業員の就業環境は著しく変化しました。外出の自粛や生活様式の変化、テレワークの普及によって運動する機会や運動量の減少、精神的なストレスによるメンタルヘルスの課題が増加しているとの調査結果もあります。それぞれ分散し、様々な就業環境にいる従業員が、自律的に生産性を高めて働くことができるためにも、コロナ禍における企業の健康経営への取組は一層重要になってきています。

はじめよう「健康経営」

注目される「健康経営」ですが、難しく考える必要はありません。それぞれの会社の事情や体力に見合った活動を継続していけばいいのです。しかし、一番大切なのは経営者の「本気度」です。
 

健康経営 一歩

「健康経営」はじめの一歩

健康経営に取り組む企業が増え、そのメリットやコロナ禍における健康経営の重要性も理解できたが、「健康経営」をどのように始めたらよいのか悩んでいる経営者や担当者もたくさんいるのではないでしょうか。難しく考える必要はありません。例えば定期健康診断を必ず受診させたり、健康増進のポスターを掲示したり、ノー残業デーを設けたりと、どこの企業においても何らかの取組をしているものです。健康経営はこれらの取組を有機的なPDCAのサイクルとして回していけばいいのです。躊躇せずはじめてみましょう。

必要なのは経営者の本気度

健康経営は経営者のメッセージである「健康宣言」を社内外に発信することによってスタートします。「健康宣言」の内容は難しい言葉や専門的な用語は必要ありません。特に、経営者の想いをなるべく具体的に従業員にわかりやすい言葉を用いて伝えることが大切です。そして、何よりも大切なのは経営者が先頭に立って本気で健康経営を進めていくというコミットメントをすることです。経営者の本気度の違いによって、従業員の健康に対する意識や健康経営への参加度合いが格段に変わります。健康経営の実践においては、経営者の存在感や影響力は大きく、経営者のやる気が従業員のやる気に大きくかかわってくるのです。

本気度は行動で示そう

しかし、経営者がいくら素晴らしい「健康宣言」を行っても、経営者の行動が伴わなければ従業員のモチベーションは低下してしまうでしょう。経営者が率先して、行動で示すことにより、従業員の健康に対する意識や健康経営への参加度合いがさらに高まります。特に、経営者を身近に感じることができる中小企業においては顕著でしょう。経営者自ら健康診断を受診することはもちろん、例えば喫煙習慣のある経営者が社長室を禁煙にして、喫煙所を利用するなどしたら従業員は経営者の本気度を確信するでしょう。定期的な運動、禁煙、食生活など、経営者の健康づくり習慣の実践は従業員に大きなインパクトを与えると考えられます。

健康経営の推進を阻む「壁」

健康経営をスタートしてもなかなか順調にいかないこともあります。うまくいかない要因とその対策について考えてみることにしましょう。
 

健康経営の壁

投資効果の見えにくさ

健康経営の投資効果について、ジョンソンアンドジョンソン(J&J)の試算では、健康経営への1ドルの投資に対して、生産性の向上、医療コストの削減、モチベーションの向上、リクルート効果、イメージアップなどで3ドル分の投資リターンがあったとされています。しかしながら、健康経営を進めていくと、取組が目標に対して合っているのかわからない、効果が出ているのかわからないといった不安が出てきます。そこで、健康経営の評価指標をストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトカム(成果)として整理し、KPI(Key Performance Indicator:評価指標)を設定して、目指すゴールに向かっていくことが大変重要となります。評価指標について経済産業省のガイドブックをもとに、簡単にご紹介すると次のようになります。ストラクチャー(構造)とは、健康経営を実践するためのコミットメントや人材・組織体制の有無や構成などの評価で、「健康経営の目的の明確化の有無」や「健康経営に関するトップの発信の有無」などがあげられます。プロセス(過程)とは、健康経営を実践するにあたって様々な施策が機能しているかどうかを判断する指標であって、「健診受診率」や「メンタルヘルス教育参加率」などがあげられます。アウトカム(成果)とは、健康経営の質を評価する指標であって、適切なストラクチャーにおいて提供されるプロセスが従業員の健康状態や企業利益に結びついているか評価するもので、「定期健康診断の結果」や「生産性」、「ワークエンゲージメント」などがあげられます。健康経営の具体的な目標としてはアウトカムを設定するのが望ましいとされています。

難しい用語

健康経営を進める中で、いろいろな難しい用語に遭遇すると思います。健康経営のキーワードでもある、アブセンティーイズム(病欠)やプレゼンティーイズム(従業員が職場には出勤しているものの、何らかの健康問題によって、業務の能率が落ちている状況)、前節でご紹介したストラクチャー、プロセス、アウトカムなどもあります。こうしたあまり聞きなれない難解な用語が健康経営の推進の足かせとなる場合もあります。経営者や従業員に「健康経営は難しいもの」と先入観を与えてしまうからです。健康経営を進める担当者は、健康経営について少し勉強するとこのようは言葉を日常で使いがちですが、社内に健康経営を浸透させていく際は、経営者や従業員に対してできるだけ平易な言葉で説明していくことで理解が深まります。

リソースやコストに対する誤解

健康経営を推進するため(健康経営優良法人に認定されるため)に社外の会社にコンサルを依頼したり、立派なイベントを企画したり、施策を管理するシステムを構築したりと健康経営に多額の投資をしている大企業も多数あります。一方で、中小企業の場合は、なかなか自社内のリソースだけではこうした健康経営や健康増進活動に本格的に取組むことが難しく、投資できる額にも限りがあると思います。そうした場合は、協会けんぽや健康保険組合等の医療保険の保険者や地域産業保健センター、社会保険労務士や健康経営エキスパートアドバイザーなど専門家の支援を受けるとよいでしょう。また、厚生労働省や東京商工会議所などのウェブサイトを利用して情報提供を受けることもできます。無料または低額で利用できるサービスもたくさんありますので、これらをうまく活用して不足するリソースやコストを補っていくことを考えていきましょう。

経営者の理解と自覚の不足

従業員の健康問題は一朝一夕には改善しません。地道にPDCAを回し続けることで徐々に改善していくというものです。しかし、その成果をすぐに求め、健康経営を懐疑的に見る経営者もいるかと思います。そんな時、健康経営を進める担当者は、ストラクチャーやプロセスに設定したKPIの改善などをもとに根気強く経営者とコミュニケーションをとり、健康経営に理解を深めてもらう働きかけが大切です。また、経営者に自覚が足りず、経営者自身の言動が一致しないで、従業員に不信感を与えてしまうような場合もあります。このような場面で、経営者に面と向かって諫言することが立場上難しい場合は、職場環境などに対する社内アンケートの結果を活用するなどして、従業員の声について経営者とコミュニケーションをとり、気づきによる行動変容を促すことが解決の糸口になるかもしれません。大切なことは、健康経営を進める担当者は、経営者とコミュニケーションを密にして、施策の実施状況や評価・問題点に関する情報を共有し、経営者が健康経営に一層の関心を持ち、率先して自覚ある行動ができるようサポートしていくことが真の健康経営を成功させるキーとなります。

従業員の理解

会社が健康経営の推進を宣言しても、従業員の理解無くしては順調に進みません。この問題に関しても、健康経営を進める担当者は、従業員に対して健康経営の目的やそのメリットについて丁寧に説明することが大切です。また、様々な健康情報の提供や健康教育の実施など従業員のヘルスリテラシーの向上に努めましょう。ヘルスリテラシーが高まると、従業員を通して周囲への情報提供や健康的な行動をさらに広めて、健康経営をポジティブに受け入れることができる職場環境を形成することが期待できます。
 

まとめ

ご紹介してきたように、「健康経営」は企業や従業員に多くのメリットをもたらします。しかしながら、健康経営を推進し、期待される成果を得るためには経営者の自覚が大きなポイントとなります。取り巻く社会環境の複雑性が増し、次々と想定外の出来事が起こり、将来の予測が困難な状況であるVUCAの時代といわれていますが、経営者が考える健康経営に対する熱い想いを言葉にして社内外に宣言し、有言実行で経営者自らが率先して愚直に取組めば必ず成果は必ずついてくるでしょう。健康経営の成否は「経営者の本気度で決まる」といっても過言ではありません。

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