• 働き方改革
  • 2021.05.14 (最終更新日:2022.04.06)

介護業界の働き方改革について。取り組み事例や仕事の楽しさを解説

目次

そもそも働き方改革とは

働き方改革 働き方改革による取り組みは2019年から動き出し、大企業・中小企業共に大切な経営課題となりました。新型コロナウイルスの影響によりテレワークや時差出勤が求められるなど、従来の働き方が大きく変化する可能性があります。働き方改革は、働く人たちが多様な働き方を選べるようにするための改革です。日本の課題である働き手の減少や働き方の多様化を実現すべく、企業も環境作りが求められる時代になります。

しかし中には、働き方改革のことを具体的に理解できていない人もいることでしょう。首相官邸の公式Webサイトでは、働き方改革について次のように述べています。

働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。

引用:首相官邸


働き方改革が動き出したのは、働ける人口が予想以上のスピードで減少しているからです。働ける人口のピークは、第二次ベビーブームのときに誕生したいわゆる「団塊ジュニア世代」が労働力として加わった26年前となります。26年前をピークとすると、2060年には働ける人口が半分に減少すると考えられています。働き手を増やすために、働き方改革が動き出したわけです。

介護業界はたくさんの課題を抱えている

介護

社会保障財源が賄えない

社会保障の財源は社会保険料の収入と公費でやりくりされていましたが、社会保障費の増加により、やりくりが困難になっています。少子高齢化のあおりを受け、社会保障費の増加は進んでおり国の財政を圧迫しているわけです。しかし日本経済は発達し、1950年代のような経済成長も見込めません。支出に対して収入が足りないので、支出の3分の1の国債を発行している現状です。社会保険料の収入も支出に比例して増加しているわけではありませんから、税金と国債でやりくりせざるを得ない状況となっています。

高齢者世代が増えている

若者の上で高齢者が支えられている絵柄を見たことがある人は、多いと思います。高齢者を支える現役世代の比率は年々減少していて、2017年では1人の高齢者を2.2人で支えているわけです。将来的に高齢者を支える現役世代は、さらに減少すると考えられています。しかしこの数字は1人の現役世代に高齢者を支えるゆとりがあると考えて計算されているので、実際にはそうではないかもしれません。この状況が悪化すると社会保障制度が成り立たなくなってしまうのではないか、と考える専門家も多いです。

平均寿命が伸びて解決できる問題ではない

私たち日本人の平均寿命は増加していますが、必ずしも良いことばかりではありません。健康な生活ができる時期を指す「健康寿命」との間が開いていることが、問題になっています。実際の寿命と健康寿命との間の期間は、介護が必要だからです。そのため単純に平均寿命が伸びたから、解決できることではありません。自分で生活できない方が増加すれば、それだけ社会保障費も増加します。

介護を受けられない人の問題

介護が必要な状態なのに、介護を受けられない人が増加することも問題視されています。将来団塊の世代が75歳以上になるとき、東京圏で介護を受けられない人が10万人以上になると考えられています。推測ではありますが具体的に発表したので、世間で話題となりました。高齢化が進行しているのに、介護をする人が減少していることも問題です。高齢者が増加するので介護をする現役世代の人口が足りないことは、誰にでも分かります。介護の仕事は給料が低い傾向にあるうえ辛い仕事というイメージが多いので、介護の仕事をしたいと思う人が少ないことも、介護職不足の原因です。

2025年問題

2025年になると団塊の世代が後期高齢者に達するため、さまざまな介護問題が深刻化すると推測されています。これまで日本の経済を支えてきた団塊の世代も社会保障を受ける側になるので、それを減少している現役世代が支えるわけです。団塊の世代が後期高齢者となるに伴って、高齢者の1人暮らしが増えます。本来手厚い社会保障が低い負担で受けられていましたが、2025年以降は介護費用や医療費の負担が増えます。その中でも年金は特に心配されているもので、現在のまま年金制度を続けていくのは困難だと考える人も少なくありません。

日本の国力が衰えている中で、莫大な医療費を負担することや医師の不足は深刻な課題です。地域によっては、患者がすぐに病院で治療できない例も多くあります。医師の労働環境が過酷なことが、新しい課題として指摘されているわけです。

老老介護の問題

老老介護とは介護する人とされる人の両者が、65歳以上であることを指します。一般的に老老介護として多いのは夫婦ですが、親子や兄弟の間でも発生しています。平成25年度では、在宅で老老介護をしている人はおよそ70%です。老老介護の問題は介護する人も高齢者のため、共倒れする可能性があることです。また軽い認知症を発症している人が介護をする例もありますが、認知症が進めば介護が不可能になります。

平均寿命が伸びたことが、老老介護の原因の1つです。健康寿命との間が開くと介護をする期間が増加し、両者が認知症である認認介護が増えます。核家族化が進むと高齢の親世帯で要介護になったとき、子ども世帯に介護が発生するわけです。また親と一緒に住み続けて結婚しない子どもが、高齢の親を介護する例もあります。

介護現場の働き方改革の取り組み事例

介護

誤薬を減らしてコスト削減を実現

あるサービス付き高齢者住宅では、利用者が服薬する薬の間違いが問題となっていました。間違いをなくすため利用者ごとに薬の保管ケースを分けて、ケースに顔写真を貼るようにしたわけです。誤飲が減ったこと以外にもダブルチェックをせずに済んだので、コスト削減に成功しました。

担当業務の見直しで労働時間の削減を実現

ある介護事業所では業務の可視化のため、全ての職員に対して業務調査を行いました。細かい時間に分けて業務調査を行ったところ、介護業務以外に時間をかけていることが分かったのです。配膳や送迎などの業務は介護士ではなくてもできるので、ケアアシスタントや運転手を配置しました。このように担当業務を見直したところ、職員の1日の労働時間の削減に成功しています。

情報通信技術を用いて残業時間の削減を実現

また別の介護事業所では事務作業の効率化が問題となっていたので、介護報酬の請求とそれぞれのサービスの利用記録が連動するタブレットを取り入れました。また職員にも丁寧に操作方法を教えたところ、業務時間の大幅な削減に成功しています。

技術の統一化や介護職員のやる気の向上を実現

ある特別養護老人ホームでは、技術の統一化ができていないことや、現場からの意見を取り入れる仕組みのないことが問題となっていました。特別養護老人ホームでの新人研修にもかかわらず、配布していたマニュアルが別の施設を前提としたマニュアルだったのです。またマニュアルに書いている内容は入社のさいに習得済みだと考えられていたため、初めて介護の仕事をする職員には不親切でした。当時利用者個人に合った介護の方法をその場その場で決定していたので、介護技術の統一化ができていなかったわけです。また上層部の考えや決定事項をそのまま利用することが多かったので、職員はそれらの根拠を理解できないまま仕事をしていました。そこで特別養護老人ホーム専用の介護マニュアルを作成し、マニュアルの項目ごとにメンバーを分担。会議では上層部以外の立場でも意見を述べやすくしたほか、必要に応じて大規模な会議も行うようにしています。

介護の仕事の楽しさとは①

介護 介護の仕事のイメージとして最も大きいのは「大変そうだ。」ということだと思います。しかしどんな仕事でも、見方を変えれば楽しさを見出すことが可能です。ここでは介護の仕事の楽しさを紹介しています。

一緒に働く仲間が楽しい

ある職員は実際に働きだすまで、介護職に就く人は自分の時間を犠牲にしてまで人のために行動するような人たちが働いているものだと考えていました。ところが仕事中はもちろん人のために尽くしますが、自分の時間では思いっきり自由に遊ぶ職員が多い現実に驚いたわけです。いい意味で理想と現実が違っていました。

介護の現場は仕事に対してのエネルギーが多くて、利用者の方のためにどうしたら現状がより良くなるか、と常に考えている人が多いです。介護やリハビリのやり方について真剣な議論を交わすことも多いので、社会に出てまもない新人の方は驚きました。ただ言われたから仕事をするのではなく、常に自分たちの頭で考えてプロとして働いていることを感じます。これに対して仕事以外の時間では、みんな楽しく周囲の人を笑わせるような人までいて、飲み会の終了後にそのままスポーツが始まるようなこともあるわけです。周囲がオンとオフにしっかりメリハリをつけているので、新人の方も自然とその習慣が身についたと言います。

利用者の個性を感じられるから楽しい

介護職の醍醐味と言えば、利用者の個性を感じられるところにもあります。ユニークで楽しい方もいれば頑固な方もいるので、それぞれの個性を楽しめるわけです。たとえば90歳以上の女性の方で、おしゃれが好きだから若者のファッションを追いかけているような方もいます。その方からは、ファッションの楽しさや流行を教えてもらえるので、職員も思わず顔がほころぶのです。

ある利用者の男性は男らしさにプライドを持っており、100歳を超えた今でも筋トレをして自分磨きをしています。その方が筋トレをしている最中、職員からは床に倒れていたように見えたものですから、一時騒然となりました。そこで施設ではその方が動けるようにするにはどうしたら良いのかと考え、ヨガマットを敷くことにしたわけです。普段はしんどいことが多いためなかなか自分では気づかないこともありますが、後輩に「毎日楽しく過ごせる仕事は、他には無いのではないか。」と言われて介護職の楽しさに気づくこともあります。利用者の個性を考えながら対応を応用することも、介護職を楽しくしている一因なのですね。

介護の仕事の楽しさとは②

介護

自分の発想が活かせるから楽しい

介護の仕事はしばしば辛い重労働だと考えられがちです。しかし意外にも創造力を発揮できる場面もあります。ある介護職の人が終末期医療の利用者を担当したときに、「この人の人生を充実させるためにどう工夫をしたらいいか?」と考えた例があります。その利用者さんには絵画の趣味があったので、施設の皆で考えてその方が描いた絵を施設に飾ることにしました。すると利用者本人が喜ぶ姿も見られたし、亡くなられた後にご家族から感謝されたわけです。

介護職は多角的に捉えれば、創造的な一面もあります。身体に障るからと何でもかんでも禁止するのではなく、危険な部分を排除してどうやって楽しんでもらうかと考えられるのです。そして自分達なりに工夫をして利用者の希望を叶えることができたとき、介護職に対して楽しさを感じられます。

お手伝いすることが快感になるから楽しい

確かに介護職には、人手不足がゆえに大変なことも多いです。ある介護職の方は、一旦介護士を辞めたもののどこか満たされていないような感覚に陥ったため、自分に向いている仕事は介護士だったと気づいたといいます。その感覚の正体は、人に親切にすることで満たされていた感情だったわけです。人との繋がりや愛情と深い関係がある物質に、「オキシトシン」というものがあります。オキシトシンは主に人に親切にしたときや人から親切を受けたときだけに限らず、軽い接触だけでも分泌されるもの。そのため、たとえば歩いているご老人がふらついたときに瞬間的に支えただけでも、分泌すると考えられます。このように介護をしながら利用者のお手伝いをしていることに対して、幸福感を感じる人もいるわけですね。

リハビリ中の会話が楽しい

またある職員は前もって介護職の楽しさを伝えられていたものの、実感するまでは半信半疑でした。しかし仕事を始めて2年が経った頃、利用者とリハビリ中に会話することで楽しさを実感できたといいます。健康に暮らすにはリハビリで体を動かすだけではなく、楽しい気持ちを持つことが大切だと考えました。利用者が楽しい気持ちになるように、なるべく職員側から話しかけることを心がけて、ちょっとした時間でも天気の話題などを話していたわけです。

その結果しんどさを感じることもありますが、一緒に会話を楽しみながら体を動かす時間を好きになりました。このように、介護の仕事でも楽しさを感じられることはたくさんあります。どうしてもネガティブな印象になりがちですが、ポジティブな面にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

働き方改革と共に進む健康経営

健康 介護は誰しも他人事ではありません。将来的に身体が不自由になり、自分で生活できなくなる可能性がゼロではないからです。現在は企業が従業員の健康に配慮する時代になりました。過重労働をさせて体調不良の従業員がいるのに見てみぬふりをしていると、離職率が向上していずれ企業の損失に繋がるからです。そうならないために、従業員の健康について戦略的に考えて行動していくわけですね。
健康経営を行うメリットは、それだけではありません。以下のコラムでは、企業の視点から考えたメリットを解説しているので、合わせてご覧ください。

おすすめコラム
健康経営とは? 企業にとってのメリットと取り組む方法

健康経営を行う企業で働く従業員にとっても、メリットがあります。
  • 企業が行う取り組みで健康維持ができる
  • 自分の企業に対してポジティブなイメージになる
  • 活き活きと働けるようになる
就職活動中で残業ばかりする職場に行きたくない方や、ワークライフバランスを重視する方もいることと思います。健康経営に取り組む企業では、従業員のワークライフバランス実現を目指すところや、長時間労働の削減を目指すところがあるのです。情報収集のさいに役立ちますので、健康経営という取り組みがあることを覚えておいてください。

まとめ

介護業界の働き方改革について紹介いたしました。介護職についてはしばしば業務内容の大変さや課題を耳にするので、良いイメージはあまり無かったかもしれません。しかし介護の仕事に楽しさを感じている人もいるので、悪いことだけではないのです。
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