• 健康経営
  • 2021.05.20 (最終更新日:2022.04.06)

働き方改革で転勤は変わるのか。転勤のメリットも解説。

目次

これまでの転勤について①

転勤 引越し

日本と欧米の転勤制度の違い

欧米ではあまり一般的ではない転勤制度が、日本に定着したのはなぜでしょうか。日本では、勤務地や職種を絞らずに新卒を採用する「メンバーシップ型」という雇用制度が浸透したからだと言えます。1度その企業に入ると、働く場所や仕事内容などを会社が決定するわけです。

日本と比較して欧米の企業では、職種を限定して職務や役職を与える「ジョブ型」という雇用制度が一般的。そのため欧米では企業が労働者に転勤を指示しようと思ったら、再び契約しなおさなければなりません。どのような雇用制度を取っていたとしても、労働者が退職して空きが出ることもあります。新しい人材を確保するときは、社内で人材募集の告知が発表されるわけです。勤務地を移動する可能性はあっても基本的に労働者の希望に沿うのが、欧米での雇用制度です。

日本では終身雇用と引き換えに労働者が人事権を企業に託してきたからこそ、転勤制度が定着したと言えます。日本は高度経済成長のさい、人材確保のために学生をたくさん採用しました。採用後に職務や役職を調整する形式が確率したことも、転勤制度が定着した理由の1つです。

日本で転勤が当たり前だった

今まで、日本の企業の多くで転勤が当たり前という感覚でした。希望していない場所に転勤が決まり、残念がっていた仕事仲間を見たことのある人は多いのではないでしょうか。人によってはマイホームを購入してすぐに転勤の命令が出たり、突然拒否権の無い辞令が発令されたりすることも珍しくありませんでした。転勤を前提としており、人事の決定には逆らえないのが、昔の考え方だったと言えます。

転勤辞令が出てから着任まで、時間が少なすぎる企業があるのも問題です。企業によっては転勤辞令が出たその日に現地に移動しなくてはならない例や、一週間以内に東北から九州への転勤命令が出る例もあります。家を探したり行政の手続きをしたり、引越し作業をしたりする時間がないので、ほかに引き受けてくれる人がいなければ厳しい日取りです。労働者が仕事で能力を発揮するためには仕事と生活のバランスが大事なので、このような転勤命令で生産性の向上に繋がるのかどうか疑問だという声もあります。

転勤も、癒着を防いだり人材育成に役立ったりするとの考え方があります。しかしそれ以前に、転勤命令の出し方が一方的なことが問題ではないでしょうか。上司が社員に対して「このように育ってほしいからここに転勤をして欲しいのだが、どう考えるか。」と考える余地を与えてくれれば、こちらとしてもネガティブな気持ちになりません。ところが多くの場合は「決まったから行ってきてほしい。」という転勤命令の出し方です。心の準備がなく出された転勤命令が希望をしない勤務地だった場合、ポジティブに考えるのは難しいでしょう。

これまでの転勤について②

転勤 引越し

夫の転職で配偶者が離職する例も多い

夫が転勤族の場合、妻が離職を余儀なくされることも少なくありません。転勤族の夫を持つ女性は、現在もフルタイムの仕事はできないといいます。子どものいるある家庭では、住み慣れたころに転勤で街を離れることが原因で、子どもの体調不良を招いていました。子育て中に夫が単身赴任になって、妻が1人で家事育児を回す、いわゆる「ワンオペ」状態になる例もあるわけです。

ある転勤族の男性は、20代の頃に配属されてから40代までに3回の転勤をしています。その方は妻のキャリアが転勤によって中断されることに対して、申し訳なさを感じています。転勤によって離職された企業側から見ると、引き抜かれたような感覚であるため、あまり良いことだと思わないのです。強制的に転勤があることは、夫だけに限らず妻にも影響があるので、夫婦共に足の引っ張り合いをしているような状況だと言えます。

企業・労働者共に転勤に対する考え方が変化

転勤

ライフプランに重きを置く人が増加した

近年就活生に人気なのは、働く地域を限定した企業です。企業にとって転勤がないことが、就活生へのアピールポイントになり得るのです。転勤がない企業を希望している就活生の1人は、「あまりたくさん移動するよりも一ヶ所で働き続けたい。」と言います。今まで労働者の育成やマンネリを防ぐために、転勤が必要だという考え方がありました。ところが現在は、子育てや介護、本人の病気など、いろいろな事情を抱えて働く労働者が増加しています。事情を抱える労働者は、転勤を指示されると離職せざるを得なくなるわけです。

全国転勤を原則禁止にする企業がある

転勤を重視しない流れの中で、原則的に全国転勤を止める企業が出てきました。そこは全国に100か所以上の拠点がある大企業にも関わらず、労働者が希望しなければ転勤をさせないと宣言しています。全国をエリアに区分して、労働者に希望の勤務先を選んでもらうわけです。労働者が1つのエリアを選んで配属されると、その後は引越しを伴う転勤がありません。

この企業で働く役員は、「ほかの企業と違うポイントがなければ、魅力的な人材を惹きつけられない。」と考えています。この企業に、家族と一緒に配偶者の故郷で過ごしたいと考えている社員がいました。人事異動の内示にて希望の勤務地を言い渡されたので、新居で家族と過ごすことができたといいます。

別の企業でも、労働者の意見を重視して採用しています。社員に対して企業が調査を行うと、8割の社員が転勤を希望しませんでした。役職が埋まらない地域には、転勤を希望する社員に指示したり人材育成や地域での採用を増やしたりすることを考えています。労働者の働き方が変わってきたことを受けて、制度を見直している企業もあるのです。

キャリアを捨てないで転勤をする例もある

企業の中には、転勤によってキャリアを捨てなくても良い制度を用意しています。転勤族の夫がいる女性は、企業の制度を使って転勤しました。その企業には役職も給料も以前とほとんど変わらない状態で、別の勤務地への移動が可能な制度があります。実は、夫の転勤先に女性が働いていた企業の支店はありませんでした。しかし前の支店と提携していた同業他社があったので、その支店に転籍することができたわけです。仕事内容の多少の変化はあるものの、同じ業種で希望の勤務地で働けています。

転勤のメリットとは

転勤 このように見ていくと、転勤にメリットが無いように思われます。しかし考え方次第では、メリットに捉えられることもあるわけです。

企業で人脈を広げられること

転勤で人脈が広がる例は2種類あります。同じ地域からの転勤族同士で仲良くなることと、地元から人脈が広がることです。お互いに不安な気持ちを抱えているので、転勤族同士は仲良くなります。先輩や上司など社内の繋がりだけに限らず、取引先とも仲良くなる人が多いです。海外赴任ではよくある事例で、発展途上国に赴任した場合は厳しい環境の中、日本人同士の結束が固まります。

地元からの人脈では地元との関係を深めるために、企業が遠方に支店を作り労働者を送っています。閉鎖的な地域の場合はなかなか話しかけられないですが、時間が経てば少しずつ仲良くなる例もあります。小さい都市に転勤すると、プライベートでも取引先の人と会うことが多いです。元々は怖い人だと思っていた取引先の人に偶然助けてもらい、それをきっかけに仲良くなった人もいます。

企業で複数の部署を経験すれば、このように上下の繋がりだけに限らず横の繋がりが作れます。また社内で頼りになる上司や同僚がたくさんできる可能性が高まるので、将来的にプラスになるわけです。

転勤を重ねると持ち物が減ること

転勤を数回重ねれば、引越しのダンボールを未開封のままにすることがあります。次に転勤するまで開封しないこともあるので、整理整頓に時間を取らなくても、不必要なものが分かるわけです。不必要だった持ち物を引越しのときに処分していると、持ち物の量が減るため過ごしやすくなります。不必要なものとそうでないものが経験と共に分かるようになるので、自分の車一台で引越しを済ませられる人もいるわけです。

持ち物が多い引越しでは、体力だけに限らず時間もお金も使うので大変になります。引越しの準備や後片付けをしたときは、疲れ果ててしまって何もできない状態になる人も多いです。転勤族の方が持ち物を厳選していった結果、「衣類は最小限に」「ノートパソコンやWiFiルーター」「寝具一式」「必要な量の書物」だけになった例もあります。ものが無いと落ち着かない人が、いわゆるミニマリストのように部屋の中を何も無い状態にする必要はありません。しかし移動にかかる負担を考えると、必然的に持ち物が減るわけですね。

新鮮な気持ちになれること

新しい地域に転勤すると、当然ながら周囲の人も環境も今までとは変わります。今まで合わないと感じていた上司や同僚がいた場合、これからは一緒に仕事をしなくて済むわけです。最初から人間関係を作らなければならないと聞けば、億劫に感じる人もいるのではないでしょうか。しかし言い換えればそれは、自分の雰囲気を変えるチャンスでもあります。これまでの自分の行いを省みれば、新しい勤務地でより良くするための工夫ができます。人は外部の環境で形作られる要素も多いため、今の場所が向いていないと思うのなら新しい環境に行くのも1つの方法だ、という考え方もあるわけです。今までの環境や仕事内容が合っていなかった人は、良い環境に行くチャンスだと言えます。

新しい知識が身につけられること

新しい勤務地で仕事をすることにより、今までにない知識を身につけられます。これは仕事だけに限りません。休日にその地域でしかできないことを体験すれば、再び転勤をした場合に別の地域で話の話題にもできます。また転勤した勤務地に今まで働いていた地域の人がいたとき、会話が弾むきっかけにもなります。転勤を経験した人にしか分からない感覚なので、考え方次第で自分の資産になるわけです。

海外に転勤するメリットとは

転勤 海外 転勤は国内に限ったことではありません。ここでは、海外に転勤するメリットを見てみましょう。

生き方の選択肢が増えること

国内だけで生活をしていると、価値観が偏ることがあります。とくに日本では皆同じでなければならないという考え方が根強いため、少し人と違うだけで生きにくさを感じることがあります。ところが海外には日本のような考え方が無く、1人1人違うことが当たり前だという考え方が根付いているわけです。それも表面上のものではないので、多くの人が自由に生きています。海外の人々の生き方を目の当たりにしたら、どれだけ日本で長く生活していた人でも、周囲と合わせていたこと自体に疑問を持ちます。

たとえば少し前まで、日本では体を壊してまで会社のために残業するのが当たり前だと考えられていました。ところがたった数年で、いろいろな働き方を選択できるようにしよう、という考え方が誕生しましたよね。常識は人間が作り出しているものなので、あっという間に変化してしまうものです。人々が自由に生きている海外で暮らすと、考え方が根本的に覆されます。

英語が話せるようになること

英語圏の国に転勤したときに限りますが、海外へ転勤すると英語が日常会話になるので、嫌でも話せるようになります。日常的に英語を独学で学んでいたとしても、現地の人と交流をすれば毎日英語と関わります。しかしせっかく海外へ転勤しても、日本人同士で集まって行動していれば、英語力は上達しません。自分から現地の人に話しかけることを意識すれば、日常会話では困らない程度の英語力が身につくことでしょう。英語に限らずどこの国の言葉であっても、日本語以外に話せる言語があれば世界が広がります。

本当の意味で違う文化への理解が深まること

異文化交流の本当の意味を分かっている人は、どれぐらいいるのでしょうか。海外に転勤した人の多くは、今まで日本でしてきた仕事の進め方をいきなりその国の人にも求めます。「進め方」の中には仕事だけに限らず考え方も含みますから、海外にそのまま押し付けると成功しません。自分をよそ者だと思ってくれと言っているようなものなのです。異文化交流では、まず海外に住んでいる人たちの考え方を尊重することが大切になります。実際に現地で仕事をした人にしか分からない、大きなメリットです。

待遇が上がること

企業にもよりますが、海外転勤のメリットに待遇が上がることが挙げられます。国内でもらっていた給料よりも高い給料をもらうので、意識をしなくても貯金が可能です。国内にいたら住む機会がない豪邸に住めて、ビジネスクラスで帰省できることもあります。なぜ、海外転勤で待遇が上がるのでしょうか。海外に転勤して一定の期間が過ぎると、税金の支払いは現地の税制に基づいて行うわけです。国内と海外では税率が違うため、企業が税金を一部負担することがあります。

ライフプランを考えるなら健康経営を実施する企業

健康 お伝えした通り、現在は自分のライフプランを考えて就職・転職活動をする人が増えています。労働者の需要に対応するため、ライフプランに合わせた福利厚生を提供している企業も出てきました。ある企業では、本人の同意を得ない転勤を指示しないことを公式Webサイトで公表しています。

労働者の権利を考えてくれる企業に就職したい場合は、健康経営優良法人を目安にするのがおすすめです。健康経営は、労働者の健康を維持することが将来的な戦略に繋がるという考え方です。その中でも健康経営優良法人は、優良な健康経営を行う企業だと経済産業省から顕彰されています。健康経営優良法人に認められるための認定制度は時代と共に変化しています。つまり認定されることが難しくなっているので、多くの企業が労働者の健康に真摯に取り組んでいると言えるのです。
健康経営優良法人の2021年の動向が知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。

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まとめ

これまでの転勤のあり方と、現在の考え方の変化を見てきました。労働者の需要に合わせなければ良い人材を確保できないので、根本的に今までの仕組みを変えていく企業もあるわけです。労働者のキャリアを考えてくれる転勤もあるので、状況によって必ずしも悪いものではないことが分かりました。現在はさまざまな選択肢があるので、転勤したくない場合は転勤を求めない会社で働くことも不可能ではありません。
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