• 健康経営
  • 2021.05.31 (最終更新日:2022.03.26)

働き方改革実現会議で考えるこれからの働き方と健康経営

目次

働き方改革実現会議とは何なのか?

会議 働き方改革は2018年6月に成立し、2019年4月から順次施行が始まりました。働き方改革の内容については、この「にじいろ」でも何度か取り上げていますが、8つの関連法が改正された内容が盛り込まれています。

それに対して働き方改革実現会議は第1回を2016年9月に行いました。その後、2017年3月までの半年で合計10回行われています。この会議によって働き方改革が成立しました。この全10回の会議の内容は首相官邸のHPに今でも残っています。中には議事録もあるため、この10回の中で、誰が何をどんなふうに話していたのかも見ることができます。

この会議に出ていたのは、議長を内閣総理大臣が務め、働き方改革担当大臣、厚生労働大臣の両名が議長代理、構成員は副総理、内閣官房長官、経済再生担当大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、国土交通大臣と、有識者として女優や経済学科の教授、日本労働組合総連合会会長、日本経済団体連合会会長、日本商工会議所会頭、銀行、企業の会長や社長などが出席していました。

働き方改革は、国が勝手に作ったものと認識している人もまだいますが、実際にはそうではありません。官民で会議を行い決めていった方針です。

働き方改革実現会議で議題になっていた3つの課題

賃金 働き方改革実行会議では特に3つの課題をどうするのかという議論を重ねていました。それは下記の3つです。
・同一労働同一賃金
・時間外労働の上限
・キャリア構成の再整備

「同一労働同一賃金」は、最近働き方改革で法律として対応がおわれたため、記憶に新しいかもしれません。(大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から)正規雇用労働者と非正規雇用労働者では、労働条件に大きな差が生まれています。月単体で見れば、それほど大きな差ではないかもしれませんが、年単位で見ると差は歴然としており、さらに非正規雇用労働者は企業の業績が悪くなった時に簡単に解雇されるという不利益な条件もあります。
非正規雇用労働者を作ったのは国ですが、もともとは簡単に解雇できる役割の人を作ろうとしたわけではなく、幅広い仕事ができるようにという思いで作られたものです。それが、企業によって歪曲され、企業にとって都合のいい人材になってしまいました。それを何とか阻止しようと課題に挙げて話し合いが行われたのです。

次に「時間外労働の上限」は、これまで資本主義だったこともあり、働いた分だけお金を出すので、生産力を上げようとプライベートな時間だけではなく睡眠時間を削ってまで仕事に没頭するように、企業は社員に仕向けてきました。社員は社畜という言葉が生まれたように、実際にそういった気持ちで雇っている経営者もいますし、働き手である社員が社畜だと認めて働いている節もあり、長時間労働をすることが社員の鏡だと思われることに繋がっていると、働き手自身が洗脳していったとも考えられます。ですが、プライベートの時間もなく、睡眠時間も削られた生活を続けていれば、体に異変が起こるのは当然のことです。ノイローゼになったり、ひどい場合には死に至ったりすることも。そういったことを避けるために、時間外労働の上限を設けるべきではないのかということが話し合われました。

最後に「キャリア構成の再整備」。ここ数年は、日本でも会社を辞めて転職をすることが悪いことという風にはとらえられなくなってきましたが、以前は違いました。終身雇用制をとっている企業がほとんどだったため、一度入社をすれば定年を迎えるまでは同じ会社で勤め上げることが正義とされていました。そのため、転職をする人に対しての偏見があり、なぜ会社を辞めたのか、その人に何か問題があるのではないのか、などうがった見方がされていたので、前向きな気持ちで会社を辞めたいと思ってもできない時代もありました。さらに出産・子育て・介護で一時的に仕事を離れなければいけない状態になると、戻ってきたときには同じポストはなく、その後のキャリア構成が難しくなっている人も多くいました。そういったものをなくすために、どうすればいいのかも会議では話し合われたのです。

3つの課題から実行に移すために作られた働き方改革実行計画

女性 勤務 働き方改革実現会議で作られた働き方改革実行計画では先の項目でも上がっていた課題を解決するために、いくつかの改善に向けたプランが作られました。

・同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
 ⇒ひとつ前の項目でも説明した通り、正規雇用と非正規雇用との格差をなくすためのものです。派遣労働者に関する法整備も含まれています。

・賃金引上げと労働生産性向上
 ⇒最低賃金の引き上げや中小・小規模事業者の取引条件の改善をし、下請けGメン(取引調査員)による年間2000件以上のヒアリング調査を行った結果で現状把握、課題の洗い出し、問題があれば解決に対して実際に動いていくなど。これと並行して、賃上げをした企業への支援、生産性向上に取り組む企業への支援などを行っています。

・罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
 ⇒長時間労働の上限規制だけではなく、パワーハラスメント対策、メンタルヘルス対策、勤務時間内のインターバル制度を含めた内容がこの項目に含まれています。

・柔軟な働き方がしやすい環境整備
 ⇒雇用型テレワーク、非雇用型テレワーク、副業・兼業がしやすくなる環境を企業の中で作っていくという内容が含まれています。

・女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
 ⇒会社内での資格取得に関する給付の割合を増やしたり、やむを得ず休職をした働き手への支援、女性が働きやすい環境と積極的な雇用、就職業氷河期世代(35歳以上でフリーターを繰り返している世代)や若者の活躍の場を増やす取組方がこの項目で示されています。

・病気の治療と仕事の両立
 ⇒現在労働人口の3人に1人が病気を治療しながら仕事をしているため、病気の治療と仕事との両立に向けたトライアングル型支援の強化がこの項目で書かれています。

・子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
 ⇒保育・介護の処遇改善や男性の育児・介護等への参加促進、障害者等の希望や能力を活かした就労支援に関することがこの項目で示されています。

・雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
 ⇒転職・再就職者に対して肯定的な企業を目指し、受け入れをしやすい環境を作っていく事がこの項目で書かれています。

・高齢者の就業促進
 ⇒65歳までの定年延長を行ったり、65歳以降も継続雇用延長ができるようにしたりする環境を整備した企業への援助を行うということがこの項目で書かれています。

・外国人材の受入れ
 ⇒人手不足の企業はこれからも増えていきます。また一方でグローバル化が進んでいます。そんな中で、外国人材の受け入れの強化をするためにどうすればいいのかという内容がこの項目で書かれています。

これらは2017年にはすでに作られていたものです。現在の働き方改革は、ここで挙げた内容をもとに構成され、法律として施行されています。

働き方改革の先にある健康経営

健康経営 取り組み 働き方改革は官民が集まって話し合いのもと決められた法案です。そしてほぼ同時期に経済産業省が健康経営優良法人の認証制度を始めました。厚生労働省でも安全衛生優良企業認定ホワイトマークなど別の名前で始めています。それぞれ傾向が少しずつ違うのですが、どれも働き手のことを考えた仕組みづくりをしている企業を応援するというものです。

働き方改革で施行されたものを守るのは、法律を守っているというだけなのですが、健康経営優良法人になるとプラスの効果を国や周りの企業、働き手、消費者から得ることができるというのが特徴です。働き方改革にのっとりながら経営方針を修正していくと、健康経営に取り組みやすい企業にもなっているので、働き方改革が行われる前に比べて手をつけやすいというのも特徴といえるでしょう。

また働き方改革を行っているだけでは、企業にとっての利益が出づらいという側面もあります。働き方改革でのしわ寄せをすべて働き手に回している企業は、働き手から「ブラック企業」と言われるようになりますし、しわ寄せをすべて経営側に回している企業は、補助金を使っていたとしても資産に影響を及ぼしている企業もあるからです。

働き方改革を実行して、売り上げを伸ばしていくには、これまでの経営方針では限度があるというのが実態です。これを打開するために検討してほしいのが、経済産業省や厚生労働省が押し出している健康経営という経営方針。健康経営も初めの数年は効果が出ているのか出ていないのかが見えづらく、対策費ばかりがかさんでしまう傾向があります。ですが、健康経営に舵を切ることで、これまでかかっていた他のコスト(例えば採用コストなど)が減りはじめ、生産性が向上し、利益が出るようになっていきます。健康経営を始めても、1年前後で断念してしまう企業もあるのですが、恩恵を得る前に切り替えをしているために健康経営の良さに気づけないだけといえるでしょう。

まずは全社を挙げて本気で健康経営を3年続けてみてください。そうすれば働き方改革で言われていることは、あえて言われなくてもできている状態になりますし、自社特有の健康経営ができ始めることだと思うので、何かしらのプラスが見えてくるでしょう。

働き方改革だけに手いっぱいになってしまう前に、これからの経営のことを考えて、もう一歩踏み込んで健康経営をしてみてはいかがでしょうか?

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