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  • 2021.07.15 (最終更新日:2022.04.06)

健康経営で睡眠が重要な理由とは。企業が実際に行っている取り組みを紹介

目次

健康経営と睡眠

sleepy

健康経営と睡眠にはどのような関係性があるのでしょうか。この章では、健康経営で睡眠が重視されている理由について紹介します。

健康経営とは

経済産業省が掲げている「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な観点から考えて、戦略的に取り組みを行う概念です。

健康経営を目指すことで、従業員の健康状態が高まるだけでなく、業務の生産性を向上させることができます。そのため、現在は働き方改革や、健康経営に対する取り組みを行っている企業が多いです。

さらに、健康経営銘柄の選定制度や、健康経営優良法人認定制度が設けられており、企業が行っている健康経営への取り組みが可視化されています。

健康経営とはそもそもどのような概念なのか、こちらの記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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健康経営で睡眠が重要な理由

理由1:日本は睡眠不足で悩む人が多いから
日本は「睡眠不足大国」と言われるほど、慢性的な睡眠不足で悩む人が多く存在します。日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、OECD加盟国27カ国中でワースト1位です。

さらに、睡眠時間が6時間未満という人は、日本人で4割にも及びます。6時間未満の睡眠が1週間以上続くと、徹夜した状態と同等の能力まで低下してしまうため、十分な睡眠時間を確保することが重要なのです。また、成人の21.4%が不眠症を抱えていると言われています。

理由2:従業員に与える様々なリスクがあるから
睡眠不足は従業員の健康状態を悪化させる危険性があります。日々の業務の中で蓄積された疲労が十分に回復せずに体調不良を引き起こしたり、ストレスを受けやすくなってメンタルヘルスに不調をもたらしたりする可能性が高いのです。

睡眠不足によって引き起こされた病気が原因で、従業員の退職や休職のリスクも高まるため、採用コストにも多大な影響を与えます。

理由3:企業の損失になるから
従業員の睡眠不足は企業に大きな損失を及ぼす可能性が高いです。経済産業省の調査によると、睡眠不足の従業員と、睡眠に問題を抱えていない従業員を比較した場合、「年間約32万円」の損失コストが生じることが明らかになっています。

睡眠不足で悩む従業員が多いと、医療負担や採用コストが増加するだけでなく、従業員のパフォーマンスが低下してしまうためです。そのため、企業の損失を最小化するためにも、睡眠改善の取り組みが求められています。

睡眠不足によって生じるリスク

suffering 先述した通り、睡眠不足によって生じるリスクは様々です。この章では、それぞれのリスクについて詳しく説明していきます。

労働生産性の低下

睡眠不足によって労働生産性が低下することで「プレゼンティーズム」が引き起こされることが明らかになっています。プレゼンティーズムとは、「会社に出勤しているのにもかかわらず、健康状態が不安定であるため、業務のパフォーマンスが上がらない状態」です。

具体的に述べると、ケアレスミスの増加や、作業スピード、判断力、集中力の低下などが挙げられます。プレゼンティズムによって生じる損失コストの算出方法が厚生労働省によって提示されているため、現在の状況を把握するためにも数値を出すことが大切です。

「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業主のコラボヘルスによる健康課題の可視化

メンタルヘルス不調

睡眠不足は「メンタルヘルス不調」に深く関与しています。メンタルヘルス不調とは、ストレスや悩み、不安感などによって引き起こされる精神的及び行動上の問題が生じている状態です。

十分な睡眠が確保できていない場合、通常時よりもネガティブな刺激を受けやすくなります。ストレスを感じやすくなり、結果的に食欲不振、生活リズムの乱れ、過食、肩こり、頭痛などの症状をもたらす可能性が高いです。精神的にも兆候が現れ、苛立ち、モチベーションの低下、集中力の低下などの状態に陥ります。

生活習慣病の発症

睡眠不足は生活習慣病の発症リスクを高めます。生活習慣病とは、食事や運動、喫煙、飲酒、タバコ、ストレスなどの生活に関わることが原因で引き起こされる病気の総称です。

寝不足状態が続くと、食欲を抑制するホルモンの働きが低下し、食欲を高めるホルモンが活性化するため、肥満に繋がったり、糖尿病や心筋梗塞、狭心症のリスクを高めたりする可能性があります。そのため、睡眠不足は健康状態に大きく影響しているのです。

睡眠不足を改善するための取り組み

heart 睡眠不足を改善するために、企業はどのような取り組みを行うべきなのでしょうか。
従業員の睡眠状態を改善する方法を紹介します。

睡眠リテラシー向上

質の良い睡眠の取り方や、睡眠の重要性を正しく認識していない従業員は多く存在します。そのため、睡眠に関する正しい認識や知識である「睡眠リテラシー」を向上させることが大切です。

慢性的な睡眠不足によって生じるリスクや、睡眠薬の使い方、睡眠の質の高め方など、睡眠に関する教育が求められています。セミナー講習や、資料の配布などを行って、睡眠に関する教育を積極的に行いましょう。

中高年齢層の意識改革

比較的年齢層が高い社員の中には、「寝ないで仕事をすることも必要だ」「睡眠時間を削ってでも仕事をするべきだ」といった意識を持っている方も多くいます。中高年齢層の社員は役職に就いているケースが多く、部下にあたる社員にもこのような根性論に基づいた指示をしてしまうことがあるのです。

実際は、睡眠不足の状態だと業務の生産性が低下することが証明されているため、まずは中高年齢層の意識から変革させていくことが重要です。

相談できる場所の整備

睡眠に関する問題はプライベートな理由が関係していることがあります。そのため、上司や周りの従業員になかなか悩みを相談できずに、ストレスを抱え込んでしまうケースが散見されます。個人情報が保護された状態で、専門家に睡眠について相談できる環境を整えることが大切です。

信頼のおける医療機関やカウンセリングを紹介したり、睡眠について問題を抱えている場合は産業医に相談することを推奨したり、従業員に対する働きかけが求められています。

具体的な睡眠不足対策の方法

okay 企業が実際に取り組んでいる具体的な睡眠不足対策の方法を紹介します。
どのような対策が効果的なのでしょうか。

パワーナップ制度

作業効率を向上させる方法として注目を集めているのが「パワーナップ制度」です。パワーナップ制度とは「15~30分程度の昼寝」を意味します。

昼食を取ると血糖値が上昇して眠気が生じ、集中力が低下してしまいます。NASAによる研究によって、昼間に取る仮眠が集中力をアップするのに効果的であることが明らかにされました。

仮眠前にカフェインを摂取すれば、目覚める頃に覚醒作用が働くようになるため、短期間の睡眠が可能です。実際に「仮眠室」を導入している企業も存在します。

酸素カプセル

ボックス型の酸素カプセルをオフィス内に設置することで、疲労回復や覚醒感の向上などの効果が期待できます。仕事中にウトウトと眠気を感じるのは、酸素が足りていないためです。そのため、酸素カプセルに入って全身で酸素を吸収することで、目を覚ますことができます。

1回の使用時間は30分〜90分程度が一般的です。カプセル内では気圧の変化があるため、耳抜きできない方や、妊娠中の方、閉所恐怖症の方などには酸素カプセルの使用はおすすめできないので注意してください。

睡眠改善プログラム

睡眠改善プログラムとは、従業員の睡眠習慣を可視化するための制度です。睡眠コンテンツの視聴から、快眠をサポートする健康食品の摂取、レポート作成まで行うことができます。

低コストで睡眠について学習できるeラーニングも提供されているので、自社に合った方法で睡眠に関する教育を実施することが大切です。実際に健康経営に対する取り組みとして、多くの企業が睡眠改善プログラムを導入しています。

まとめ

健康経営を目指す上で、睡眠は従業員の健康状態を向上させる重要なポイントです。現在日本は、成人の21.4%が不眠症を抱えているほど、睡眠不足で悩む人が多いと言われています。従業員の健康状態へのリスクや、損失コストを考えると、睡眠改善が企業の成長にも欠かせません。労働生産性の低下など、従業員の睡眠不足による課題を感じている企業は、実際に取り組みを行うことが重要です。睡眠リテラシー向上、中高年齢層の意識改革、睡眠に関する個人の問題を相談できる場所の整備など、企業として睡眠改善に取り組むことで効果を期待できます。実際に、パワーナップ制度や睡眠改善プログラムを採用して、睡眠不足の問題解決を目指している企業が増加しているので、自社に導入するべきか一度検討してみることをおすすめします。
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