• 健康経営アドバイザー
  • 2021.10.11

プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムを数値化する測定方法8選

目次

はじめに

情報開示近年、健康経営が広がる中で健康経営の取り組みをさらに拡大する目的で、ステークホルダーや他社に向けて「健康経営の戦略」及び「効果検証」などの情報の開示が進んでいます。
2022年度の健康経営度調査において開示の意向を確認する設問を設けるなど、健康経営においても情報開示の促進が進んでいます。またホワイト500認定の条件として、評価結果(フィードバックシート)及び一部設問の回答内容について「開示可」とするが条件となりました。
それによりこれまで以上に、「健康経営の数値化」が着実に進んでいます。本記事では、パフォーマンスの測定方法の把握としてアブセンティーズム・プレゼンティーズムの測定方を解説します。
 

注目されている労働損失「アブセンティーズム・ プレゼンティーイズム」

生産性今回注目されているのは、公表されておらず健康経営度調査で収集していない情報は次の4つです。
  • 業務パフォーマンス
  • アブセンティーズム
  • プレゼンティーイズム
  • ワークエンゲイジメント
どれも労働生産性に密接に関わっていますが、数値化が難しいとされています。そして健康経営の取り組みの中でも重要とされているものとなります。
下記は健康経営度調査で収集している情報です。

健康経営の実践

  • 健診受診率
  • 喫煙率
  • 運動習慣者比率
  • 飲酒習慣者比率

健康のアウトカム

  • 適正体重維持者率
  • 血圧リスク者率
  • 糖尿病管理不良者率

※公表されている情報

企業価値 (例 株価・時価総額・営業利益率)

パフォーマンス測定方法把握に関する設問の追加(アブセンティーズム・プレゼンティーズム・ワークエンゲージメント)

設問の追加評価項目にはされませんが、パフォーマンスの測定方法を把握するため新たな設問が追加されました。

より多くの法人でも用いられる測定方法を把握するためアブセンティーズム・プレゼンティーズム・ワークエンゲージメントの測定方法等を問う設問です。

設問Q68.従業員の生産性や組織の活性度などについてどのような指標を測定していますか

  • 従業員のアブセンティーズム傷病による欠勤を定期的に測定している
  • 従業員のプレゼンティーズム出勤をしているものの健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せていない状況を定期的に測定している
  • 従業員のワークエンゲージメントを定期的に測定している
  • 従業員個人の働きがい職務満足度会社への貢献意識等についての評価指標を設定し定期的な調査を定期的に実施している
  • 従業員同士による職場内のコミュニケーションに関する活性度合いの定量指標を設定し調査やウェアラブル端末等での定期的に測定している
  • その他特に測定していない

※測定している場合、どのように測定しているか、また測定している場合は実績値の記載を求められます。
パフォーマンスの評価分析は、健康経営の取り組みを通じて従業員の健康増進モチベーション向上等を通じて、企業業績企業価値の向上につながることが重要です。
そのため PDCA に取り組む企業が増加しており、この流れはどうするためパフォーマンス指標を収集し、情報を開示することで健康経営の取り組みをさらに拡大することにつながると考えられています。

事業の成果・効果(アウトカム評価)をもとに、目標の達成度を評価する

労働損失
健康経営の実践において、アウトカム評価(事業の成果・効果)を定期的に行うことは重要です。
そのために生産性の評価という観点から、「アブセンティーイズム」および「プレゼンティーイズム」を評価指標として用いることで、健康経営の投資対効果を客観的に評価できる定量データを把握する必要があります。
「アブセンティーイズム」に関しては病欠・病気休業の状態を評価するものであるが、各企業において取り扱いが異なるため、企業ごとに実施しやすい方法を活用し評価を行うことをおすすめします。同様に「プレゼンティーイズム」に関しても、企業ごとに実施しやすい方法を用いて評価することをおすすめします。
また、「アブセンティーイズム」および「プレゼンティーイズム」によって把握できる生産性を改善・向上させていく上では、影響因子となりえる健康関連指標である
  • 身体的指標
  • 生活習慣指標
  • 心理的指標
組織効果としてのワーク・エンゲイジメントの状況を把握していくことが重要です。
そこで、これらの健康関連指標も評価の一環として把握する必要があります。
※アウトカムのうち、組織への効果やブランド効果に関しては、現状では定量データとして把握できない部分もあることから、これらの評価指標に関しては今後の検討課題があると考えられています。
 

生産性への影響度を評価する指標:アブセンティーイズム

アンケートアウトカム評価指標:アブセンティーイズム

1.従業員へのアンケート調査

「昨年 1 年間に、自分の病気で何日仕事を休みましたか」
という質問項目により、アブセンティーイズムを自己申告して把握。
企業・組織で休暇理由を正確に合わせてデータを持っているとことは少ないため、この方法を取ることで、有給休暇を含む休暇取得の中の病気によって休んだ日数を把握することができます。ただし、アンケート方法にもよるが回収率によっては欠損値が多く出てしまう懸念があります。

2.欠勤・休職日数(代替指標)

有給休暇取得後の欠勤・休職は疾病理由が主であることから代替指標として利用し把握(有給休暇の病欠は把握できず)。
企業・組織によって異なりますが、有休休暇取得時に理由を正確に取得していることころは少なく、有給休暇の中の病気による休暇取得日数は含まれていません。そのため、この方法を取ることで、アブセンティーイズムは過小評価になっている可能性があります。ただし、企業・組織の持っているデータのため欠損値はないとされます。体調不調

3. 疾病休業者数・日数

企業が保有する人事データを活用し、「疾病休業開始後、有給休暇を除き暦 30 日以上の疾病休業の者」を把握する。
(多くの企業は人事部門が情報を把握しており、社内規則で一定期間以上の疾病休業の際、主治医による診断書の提出を義務付けていることが多い)休業開始日、休業終了日、疾病名(メンタルヘルス疾患/非メンタルヘルス疾患)を把握することが必要です。企業が疾病休業を把握するにあたり、多くのケースで利用される有給休暇を含めて情報を把握しなかったため、今後疾病休業に関して、有給休暇の利用の有無にかかわらず、疾病休業開始から暦 30 日以上の疾病休業者について、復職支援等の健康管理の推進を目的として情報を把握することが望ましいと言えるでしょう。

生産性への影響度を評価する指標:プレゼンティーイズム

データアウトカム評価指標:プレゼンティーイズム

1. WHO-HPQ

WHO で世界的に使用されている評価方法です。
「WHO 健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(ハーバードメディカルスクール作成)」を用い、3 つの設問で評価。
得点方法は、①絶対的プレゼンティーイズムと②相対的プレゼンティーイズムの2つの方法で表示されます。プレゼンティーイズムをコスト換算する場合には、日本人の性格的気質を考慮し、相対的プレゼンティーイズムを用いることが、健康関連総コストの割合からみても妥当と考えられています。

2.東大1項目版 

アンケートの設問数を減らしたいなどの理由により、プレゼンティーイズムの意味をそのまま反映したアンケート 1 項目にて取得する項目を東京大学WG にて作成したものです。

3 .WLQ

WLQ(Work Limitations Questionnaire、タフツ大学医学部作成)の日本語版。
(版権・日本語版作成:SOMPOリスケアマネジメント株式会社※有料)
全 25 問の質問項目からなり4 つの尺度(「時間管理」5 問、「身体27活動」6 問、「集中力・対人関係」9 問、「仕事の結果」5 問)で構成されています。
回答は、体調不良によって職務が遂行できなかった時間の割合や頻度を、「常に支障があった」~「まったく支障はなかった」の 5 段階、及び「私の仕事にはあてはまらない」から選択する方法となっています。

4.WFun

WFun(Wrok Functioning Impairment Scale)とは、産業医科大学で開発された、健康問題による労働機能障害の程度を測定するための調査票。
7つの設問を聴取し、合計得点(7~35 点)で点数化する。点数が高い方ほど、労働機能障害の程度が大きいことを示す。日本における先行研究の結果より、21点以上が中程度以上の労働機能障害があると判断できる方法です。
5. QQmethod
まず、何らかの症状(健康問題)の有無を確認・把握する方法。
「有り」の場合は次の4つの質問
「仕事に一番影響をもたらしている健康問題は何か」
「この 3か月間で何日間その症状があったか」
「症状がない時に比べ、症状がある時はどの程度の仕事量になるか(10段階評価)」
「症状がない時に比べ、症状がある時はどの程度の仕事の質になるか(10段階評価)」

アブセンティーイズム、プレゼンティーイズムによる生産性損失コスト評価

生産性損失アブセンティーイズム、プレゼンティーイズムの短期的アウトカム評価指標をもとに、各企業・保険者が所有するデータを用いて生産性損失のコスト評価を算出することが可能となります。
評価方法は2つの方法があります。
  1. 健康関連総コスト換算による評価
  2. パフォーマンス低下度による損失額算定評価
これらは、企業及び医療保険者が所有するデータのうち開示可能なものを用いて行います。これにより、健康経営の取り組み効果として金銭的な部分での評価が可能となる方法です。

1.健康関連総コスト換算による評価

①医療費(総額)②傷病手当金(事業主補填金含)③労災補償費④アブセンティーイズムの日数×総報酬日額 ⑤プレゼンティーイズム

損失割合×総報酬年額 (標準報酬月額×12 か月+標準賞与)

① ⑤の合計金額・割合で生産性損失コストの評価を行う。

2.パフォーマンス低下度による損失額算定評価

1人1日あたり人件費(賞与・各種手当・法定福利費等)×②パフォーマンスの低下(※QQmethod)×有症状日数=損失額

※パフォーマンスの低下=1-{(仕事の量+仕事の質)/2×1/10}
または =1-{(仕事の量)/10×(仕事の質)/10}
により生産性損失コストの評価を行う。

具体例として、アブセンティーイズムを従業員アンケート(病欠日数)で把握し、プレゼンティーイズムを WHO-HPQ で評価した健康関連総コストの試算結果は、健康関連総コストに対する相対的プレゼンティーイズムは約 78%であり、アブセンティーイズムは約 5%を占めています。健康関連総コスト

 

まとめ

アウトカム評価健康経営により企業にもたらされるベネフィットは、従業員の健康増進の結果生じる生産性損失の改善(プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムの解消)や、医療費負担の適正化、企業イメージ向上やその結果もたらされるリクルーティング効果等が考えられます。
そのために比較的短期間で企業の健康経営の取り組みを評価可能なアウトカムと、企業利益の向上等の長期的な健康経営の取り組みによるアウトカムの両方が目標の達成度を評価するうえで大切になります。
生産性損失の改善につながるプレゼンティーイズム・アブセンティーイズムの数値化を図ってみてはいかがでしょうか。

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