• 有識者
  • 2020.12.22

人間尊重の優しさが健康経営に繋がっている

  • 全国健康保険協会熊本支部 支部長
  • 冨田 和典
  • 有識者
  • 2020.12.22

人間尊重の優しさが健康経営に繋がっている

  • 全国健康保険協会熊本支部 支部長
  • 冨田 和典
目次

協会けんぽに来る前の経歴を教えてください

プロフィール私は地元銀行の人事部の経歴が長く、従業員たちとのつながりが多い場所にいました。40歳代に厚生課長と健康保険組合常務理事も兼務するようになり、より従業員の人たちと特に健康面において向き合うようになったと思います。当時従業員の中にはメンタル面での不調を訴え休職する人が多くいました。その人たちを、どうやって仕事に復帰させるのか、またそういう人たちを増やさないためにはどうすればいいのか、というのが積年の課題でもありました。

銀行退職後は小さなゴルフ場の社長をさせてもらいましたが、そのゴルフ場でかつての上司とラウンドしている時、「このゴルフ場は自然豊かであり気持ちが落ち着く。新たに農業でも初めて、ゴルフ場と合わせて“癒しを求める企業”を目指してみたらどうだ」とのアドバイスがあり、企業コンセプトとして素晴らしい考えであり、実践することにしました。
農業分野では、農福連携(農業と福祉の連携)を試み、障がい者の直接雇用や支援事業会社との連携を通じて、障がい者の人たちと一緒に仕事をする機会を経験できました。雇用の機会を増やすということだけでなく、ほかの社員の人たちが、障がい者の人を理解しようと考えたり行動したりするようになり、職場全体が人を思いやる雰囲気になってきたように感じました。

冨田支部長の健康経営に対する価値観を教えてください

健康経営協会けんぽの健康保険料率は、都道府県ごとの医療給付費などに応じて異なっており、医療給付費が高い熊本支部は全国で4番目に高い保険料率です。保険料率が上がれば当然、事業主・加入者の負担が増えてしまうことになります。
また、健康保険料が使われる先は加入者の医療給付費だけではありません。協会けんぽの支出の約56%が加入者の医療給付費にかかった費用ですが、約35%は高齢者医療への拠出金です。高齢化が進むことで、今後この拠出金が増えていくことが見込まれます。
さらに医療費は協会けんぽだけの問題ではありません。加入者が退職した後は市町村が運営する国民健康保険に加入することになりますので、市町村国保の財政にも影響します。

高齢化は避けられませんが、医療費の約3分の1を占めると言われる生活習慣病は予防が可能です。しかしながら、協会けんぽ単体で加入者お一人お一人の健康度を上げることはできません。加入者、つまり従業員にとって一番身近な管理者である事業主が、従業員の健康管理にどう関与いただけるかが大きなポイントではないでしょうか。

健康経営は従業員のためになることなので、長期的に見ないと事業主にとっての良さは感じにくいのかもしれません。政府が打ち出している働き方改革がありますが、その一つのやり方として健康経営についてもすすめていければなと考えています。働き方改革が進めば自分の時間に余裕が出てくるはずです。この時間をどう過ごすかが時々議論されるわけですが、私は個人的には「健康のために使ってください」と言いたいですね。
私が協会けんぽに来る以前に思っていたのは、従業員にやさしい企業が増えれば良いのにということです。もちろん、事業主あるいは営業部門は、事業存続のため、その責任感から厳しいことを言わざるを得ません。ですが、総務人事セクションぐらいは従業員に対して優しくあって欲しいと思います。健康経営は間違いなく良い考えです。だからこそ、私は多くの企業に実践・行動してほしいと思います。

協会けんぽ加入企業に対して、どんな役割があると思っていますか?

協会けんぽ健康経営は、企業が従業員の健康を個人任せにせず、経営課題として従業員の健康保持・増進に主体的に積極的に取り組むことです。事業所には、生産年齢人口が減少していく中、今いる従業員の健康を守り、健康状態の悪化が要因となる生産性の低下を防ぐための対策が求められています。
一方、我々協会けんぽなどの医療保険者には、平成27年度から始まったデータヘルス計画の中でコラボヘルスが求められています。データヘルス計画とは、協会けんぽが保有するレセプトデータや特定健診データなどの情報を活用して、加入者の健康づくりや疾病予防、重症化予防事業につなげるものです。事業所の健康経営の普及は、まさにコラボヘルスの目指すべきところとなります。

健康経営の普及については、経済産業省が主導で実施する「健康経営優良法人認定制度」が広く周知されてきたことで、興味を持つ事業所が増えてきたように感じます。熊本支部が実施している「ヘルスター健康宣言」も1,600社に達しました。しかしながら、加入事業所は32,000事業所ありますので、普及というにはまだまだ足りない状況です。連携協定を締結している各種業種団体や保険会社等と連携しながら、健康経営の促進をしていきたいと考えています。
また一方で、健康宣言はしたけれども、健康経営を始めたものの何をしたらよいだろうかと悩む事業主も少なくはありません。健康経営は事業主が主体となって実践することが重要でありながら、なかなか実践に至らずご苦労されている事業所が大変多いと感じていました。同時にヘルスター健康宣言している事業所からも「他社の好事例を知りたい」、「横のつながりが欲しい」というご要望が多数熊本支部に寄せられました。熊本県全体の健康経営の質を高めるためにはどのように進めるべきか模索している中、県内で健康経営に先進的に取り組んでいる5社と連携し、今年8月に「くまもと健康企業会」の発足に至ったところです。「くまもと健康企業会」では定例会や臨時会を通して事例共有を行い、健康経営の質の向上を目指すこととしています。少しでもこの輪が広がっていくようお手伝いをしていくことも大事だと思います。

では支部長としては、どういった信念をお持ちでしょうか?

私がリーダーシップを発揮するうえで大事にしていることは「誠実さ」です。誠実というと真面目な印象を受けますが、モノの本によると「誠実=言行一致」だそうです。言うことと行うことが一致していることが誠実さであると。これは意外と難しいことです。言うばかりで何もしない、行動を起こさない人は特にリーダーとしては信頼を損ないます。私はこの誠実さで熊本支部を運営していきたい。気づいたこと、決めたこと、やると言ったことは必ずやってみる。私にとっては「誠実さ=行動」です。
また、私は熊本で育ち、社会人になってからも地元です。この土地に対する思いは人一倍あると思っています。郷土愛を持って、熊本県内のすべての企業の明るい未来のために、医療保険者としてしっかりサポートできればと思っています。

熊本支部としてこれからどうなっていきたいですか?

熊本市街一番はやはり、加入者や事業所に大きな負担となっている健康保険料を少しでも引き下げることです。そして、熊本支部として、協会けんぽとしてだけではなく、熊本県としてよりよい未来を築いていきたいと考えています。

健康経営を広めるということは、企業と従業員が元気になるということです。健康経営は自主性が重んじられている面が強いので、難しいところはあるのですが、とくに大企業にはすぐにでも取り入れてほしい経営方法ですね。
熊本県は、自然が多い場所です。それなのに働いている人たちの中にはメンタルヘルス問題を抱えている人がいます。仕事の人間関係で心の病気になってしまう人もいるので、熊本という土地を愛してみんなが心身ともに健康的になれるように、サポートしていけたらと思っています。

ずばり、健康経営を始めるには何が必要だと思いますか?

健康経営 第一歩何事も、新しいことを始めるにはキッカケがポイントです。また健康経営には企業トップの意識が大事なのは申し上げるまでもないことだと思います。熊本支部ではこれまで、事業主へのキッカケとして「ヘルスター健康宣言」いわゆる決意表明をしてもらうという活動を行い、他にも従業員の健康状態を“見える化”するなどしてキッカケをお手伝いしてきました。
私は「まずはやってみる」、先ほども申し上げましたが「行動する」ことだと思います。特に人事・総務の担当者や事業所内の健康保険委員の方に行動してもらいたい。健康づくりの推進に関しては、やったから損をした、リスクが大きい、ということはほとんどありません。すぐに効果が出るものではありませんが、繰り返し、地道にやることが、逆に近道だと思います。行動すれば、従業員との信頼関係が自ずと出来て、従業員も協力してくれると思います。

当メディアサイト「にじいろ」に対するアドバイス

まずは、健康経営を実践している企業の情報発信をたくさん行ってほしい。そして、みんなに認めてもらう信頼のあるサイトになってほしいです。
わたくしの個人的希望ですが、経営、特に健康経営を行うからには従業員に対して「人間尊重の優しさ」が必要だと思います。今後も優しさ、思いやり、行動力、癒し、等をキーワードに、頑張っている企業を紹介していただければと思います。

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