• 有識者
  • 2019.12.05

健康経営銘柄に認定されることが目的ではない従業員がパフォーマンスを発揮できる環境づくりの手段

  • ヤフー株式会社
    グッドコンディション推進室
  • 市川 久浩
  • 有識者
  • 2019.12.05

健康経営銘柄に認定されることが目的ではない従業員がパフォーマンスを発揮できる環境づくりの手段

  • ヤフー株式会社
    グッドコンディション推進室
  • 市川 久浩
目次

ヤフーが健康経営銘柄認定に取り組んだきっかけとは。

健康経営銘柄認定市川
ヤフーは1996年創業で、今年で23年目になります。2005年、井上(雅博氏)経営体制のときに「健康推進センター」という部署ができました。このときは医療職しかおらず、弊社社員の産業医と看護職の社員がいる部署でした。その後、ヤフーの会社規模が大きく変わっていき、2016年、設立20周年のタイミングで従業員の「UPDATE コンディション」を提唱したのです。これは全従業員が、それぞれ自分のコンディションを上げていこうという考え方です。もともと前社長の宮坂が、自分自身のコンディションを考える人だったので、「ビジネスパーソンとはいえ、アスリートと同じように自分でコンディションを整えるべきだ」という考えがベースにあります。コンディションを整えることの重要性を宮坂は大切にしていました。

このように2005年から地道に積み重ねてきた経緯があるため、健康経営銘柄に認定されるために新しいことを始めたというわけではありません。もちろん、現状とのギャップを埋めるという契機ではありましたが、もともとヤフー自体が健康経営に取り組んでおり、経営陣もその思いを持っていたというわけなんです。具体的には、まず最初に「安心・安全・法令遵守」のステージ。ヤフーにおけるミッションは「UPDATE JAPAN」ですが、次のステージとして、ヤフーのミッションと合わせ「UPDATE コンディション」、職場の環境づくりに着手したのです。この紀尾井町オフィスもそうですし、クリニック開設もそうです。あとはグループ会社のための健康保険組合も設立しました。

企業の事業推進にとって従業員のコンディションはベースとなるもの。

企業の事業推進市川
現在、ハード面はだいぶ整備されました。今の川邊(健太郎氏)体制では、これらのハードを通して、従業員やそのご家族にサービスをきちんと提供していくフェーズ、そしてサービスをレベルアップしていくフェーズだと考えています。また、健保も含めてデータが溜まってきていますので、それを活用していく。もちろん、健康情報ですから取り扱いには細心の注意を払っています。また、われわれ従業員を「戦力」と見立てたときに、コンディションを整えるのは業務上とても重要ということを周知させるフェーズにも入ってきています。

企業が事業を推進する上で「戦力」が整っていることは必須条件です。ここで言う戦力とは、ヘッドカウント(社員数・従業員数で数えられるもの)と、個々の能力の掛け合わせになります。この能力というのは個人のスキルだったり、知識や経験、人間力といった研修やOJTで学べる部分です。これに加え、ベースとなる部分がコンディションということになります。そもそも、どんなに優秀な人でも病気であればパフォーマンスは出ません。あるいは病気とまではいかなくても、たとえば花粉症でもパフォーマンスは落ちますし、肩こりや腰痛、慢性疲労でも落ちます。もっと言えば寝不足だって二日酔いだってパフォーマンスは落ちてしまいますよね。このようにコンディションというのは、企業における戦力のベースとなるのは当然のことなのです。

ヤフーではCCO(Chief Conditioning Officer)という役職を作り、従業員のコンディションを整える環境づくりのために取り組んでいます。現CCOは人事の執行役員である湯川(高康氏)が担当していますが、方針は従来と同じく従業員が心身ともに健康で、安全に働ける環境を作り、従業員はその環境のもと最大限のパフォーマンスを発揮する。そして持続的に成長して、社員とその家族の幸せにつなげていくという考え方を踏襲しています。

グッドコンディション推進室がヤフー社内で担う役割とは。

グッドコンディション推進室市川
われわれグッドコンディション推進室が目指しているのは、ヤフーを含め、グループ会社の従業員とその家族が今だけではなく、10年、20年先も幸せな生活を送り続けられるように、働く人たちが心身ともにグッドコンディションを維持して、公私ともにベストパフォーマンスを発揮できるように取り組んでいくことです。具体的に、どういう体制で取り組んでいるかというと、まずグッドコンディション推進室が事業会社であるヤフーの中にあり、医療職が在籍して医療系のサポートをしています。たとえば従業員と面談したり、健診結果のフォローをしたり、産業医(業務委託の医師)と一緒に従業員のコンディショニングなどを行っています。われわれは、もともとヤフーでは違う業務をしており、異動してきたため医療職の人間ではないのです。こうした医療職ではない人間が間に入って医療職とともに施策の企画をしたり、推進をしたりしています。2019年10月からは社員レストランのチームも、われわれと一緒になりました。つまりコンディショニングに重要な食を担うレストランの運営も同じチームでやっているということになります。

川村(グッドコンディション推進室)
私もヤフーのなかで新たな経験にチャレンジしたい場合に、その希望を自己申告できる異動制度の「ジョブチェン」を活用し、2017年10月からグッドコンディション推進室に参加させてもらいました。そして初めての仕事が、健康経営銘柄に応募する際の情報整理業務でした。もともと10年以上デザイナーをしていたので、異なる業務に配置転換したというわけです。

グッドコンディション推進室に入って感じたのは、社長が「UPDATE コンディション」を宣言し、あまねく社員に伝えていて、それに基づいて各担当部署が使命感を持って強く推進していたのですが、それぞれの部署同士の横のつながりが少し足りないということでした。そこで、月に1回は各担当部署とミーティングをするといった細かいコミュニケーションを取るようにしたところ、施策がとても進めやすくなったのと、同じゴールに向かって走り続ける仲間がいるというのはとても心強く、仕事がしやすくなりました。

健康経営銘柄認定による影響は。

健康経営銘柄認定による影響川村
晴れて健康経営銘柄に認定されたのですが、この認定はゴールではなく、PDCA(Plan-Do-Check-Act)を回すヒントになるのだと考えています。健康経営銘柄に認定されている他の会社は、どんな取り組みをしているのかという事例を知ることができ、それに対してヤフーはどれくらいできているのか自己分析ができるのです。その上で、他社とのギャップを埋めたり、さらに最近ヤフーが消費税増税のタイミングで実施した揚げ物料理を値上げし、魚料理を値下げする「揚げ物税・お魚還元」というような、突き抜けた企画も実施しやすくなります。

川村
健康経営銘柄の認定企業で働く従業員が得られるベネフィットとして、外部評価によって社内の人たちが「自分の会社は、こんないい取り組みをしている良い会社なんだ」と改めて気づくきっかけになるのではないかと考えています。長く同じ会社にいると、良い取り組みにも慣れてしまいます。これが外部の評価によって「ヤフーって、こんなことやってるんだ。いいね!」と第三者から言われると、従業員もヤフーの良さに改めて気づくのです。また、ヤフーに転職を希望する友人がいたら、健康経営銘柄に認定されているというのは、従業員から勧める上でひとつにツールになると感じています。

市川
それに、今回の「にじいろ」の取材のように対外的に取り上げられる機会が多くなりました。会社が嬉しいというよりは、認定を通じてメディアの方に多く知っていただくというのが大きいですね。さらにメディアを通じてヤフーという企業が従業員の目にも触れるため、社内で発信していてもなかなか届かないメッセージがメディアを通じて従業員へ強烈に届くと思います。健康経営銘柄の認定には、そういった効果もあります。

ただ、単に健康銘柄の認定に取り組むというよりは、応募をする段階で自社が足りていない部分に気づくことができることが重要だと考えています。その気付きについて、すべて対応するかどうかは別ですが、足りないことに気づける意味で非常に取得する意義はあると思います。さらにメディアに取り上げられることで、自社への誇りを持てたり、ご家族に「いい会社だね」と言ってもらうことにも期待しています。従業員への金銭的なメリットや福利厚生の提供というメリットではなく、どちらかというとヤフーという会社のスタンスを従業員もしくはご家族に知っていただき、会社を好きになっていただけるといいと思っています。

健康経営に対する経営トップの意識を変える方法は。

経営トップの意識川村
これから健康経営の推進を目指す企業は、まず経営トップが健康に対する意識を持ち、旗振りをしていただいくことが重要だと思います。これは「働き方改革」に非常に近い印象を持っています。経営トップが社員の健康を基盤であると考え、それに沿った形で制度を整えるべきかと思います。ヤフーの場合、昨年、就業規則に健康経営を追加するなど、トップからの発信を強化しました。こういった取り組みには、お金はかかりません。今ある当たり前の社内ルールは、あくまで人・会社が作ったルールなので、変えることが可能なのです。経営トップが従業員のために、従業員が健康なら企業の成長につながるという思いを持って制度を改革するというのが、お金もかからず、大事なことだと考えています。

市川
そうですね。会社全体の意識を変えるのは、お金もかからず推進力もあります。ただ、社長の意識を変えるのって大変なんですよ。しかし経営トップの意識が変われば、お金もかけずに会社の風土も変えることができます。その点、われわれは恵まれていて、最初にトップの宣言ありきで始まっていますから、まさに“錦の御旗”で進めることができました。逆に、そういうトップの考え方がなければ6,500人規模の組織を動かすのは難しかったと思います。必ずしも、我々のように幸運な会社ばかりではないと思います。その場合、どうやってトップの意識を変えていくか。その意識の変え方には、会社ごとにいろいろな作戦があっていいと思います。大企業には大企業の、中小企業には中小企業に適したやり方があるはずです。

大人が自分の行動を変えるのは、自分自身に得があるときか、自分自身に困っていることがあるときです。もし経営陣の意識を変えたいなら、自分なら彼らがどうすれば得になるかを考えます。たとえば採用コストが下がるとか、退職率が減るといった提案をするのです。そして、実現するためには健康経営に合わせて制度を整えるだけで、従業員の満足度が上がるといったプレゼンをします。これで年間に、このくらいコストをセーブできる。そのぶん、来年の事業に投資しましょうという説得をするといったやり方です。もちろん、こういった取り組みをしている企業も多いと思いますが、これから健康経営に取り組もうというのであれば、ひとつの例として参考にされてみてはいかがでしょうか。

学生が就活で企業選びをするなら健康経営銘柄と優良法人は大きなポイントになる。

健康経営銘柄と優良法人川村
これは、あくまで個人的な考え方になるのですが、学生の企業選びのポイントとしては「ブラック企業ではないか」「長く働けるか」「自分が本当にやりたいことに才能と情熱を解き放てるか」という3点があると思っています。まずブラック企業ではないかどうかについては、おおむね健康経営銘柄や優良法人に認定されている企業に関しては問題ありません。国が太鼓判を押していて、認定されても内容がそぐわない場合は取り下げるなど、国が公平性を持って対処しているので、それはひとつのラベルとして活用されて良いのではないかと思います。

才能と情熱を解き放てるかどうかについては、世の中に働いている方々の情報って、たくさん出ているんですね。そういった方々の情報はネットで検索すればサジェストで出てきますので、それを活用して判断基準にすればいいと思います。そして自分のやりたい方向――たとえばヤフーだとデータドリブンで、AIの活用や先進的なニュースが飛び交っているわけです。そういった情報をキャッチして、自分自身が働いている姿が想像できるようでしたら、ぜひ挑戦してヤフーの一緒の仲間として働いていただけると非常に嬉しいです。

市川
健康経営と企業選びのポイントを結びつけるなら、学生が企業を選ぶ際に自分自身のやりたいこと、成し遂げたいことができる環境かどうかをきちんと調べ、確認することが必要だと思います。その環境というのは働き方とか、健康経営とか、いろいろな福利厚生などの制度面や、会社の文化や風土とかがあると思います。自分がいい仕事をするために、また力を発揮したりパフォーマンスを出すために、という観点で、どういう環境が自分にとって良い環境かということを調べるのは非常に大事です。なお、川村の発言した「才能と情熱を解き放つ」という言葉について補足すると、これはヤフーの人材育成における考え方のひとつなんです。非常にいいメッセージだなと思っています。

会社と従業員は「イコールパートナー」。良いパフォーマンスを発揮するための環境が大事。

イコールパートナー川村
ヤフーには従業員に向けたメッセージがいくつかあって、私が好きなのは「会社と従業員はイコールパートナーである」というもの。
対等なパートナー関係を持って、会社だけが利益を上げるわけではなく、社員だけが企業からの恩恵を得るわけでもなく、社員は才能と情熱を解き放ち、会社は社員がパフォーマンスを発揮できる環境を整える。本当に良いパートナーシップを築くということが大切だというメッセージです。


市川
イコールパートナーをコンディションという文脈で考えると、サッカーに例えるなら会社というのは「チームサポート」で、ゲームが始まる前に選手がピッチに経つまでのコンディショニングをサポートするもの。実際にゲームで結果を出すのは選手であり、監督・コーチです。社員やマネージャーがベストパフォーマンスを出すための準備は自分たちで主体的に行い、試合で結果を出しましょうという考え方が広まるといいなと思っています。イコールパートナーというのは馴れ合いではなく、お互いに共通の目的のため、同じ方向を向いて同じことをやろう。こういう考え方はアスリートでイメージするなら、このような役割分担ではないかと思います。ですから、社員ひとりひとりが自分でコンディションを整え、万全なコンディションで仕事に向き合えるようになれば理想的かなと思います。

われわれグッドコンディション推進室は、サービスを作ってお客様に満足してもらうという仕事は直接的にはできません。でも、社員を応援することはできる。従業員に良い仕事をしてもらうためのサポートを提供していくことで、ひいてはお客様に良いサービスを提供して満足してもらい、喜んでもらって社会に貢献していくといった役割を担っているのです。

川村
われわれは健康経営を推進していますが、人材開発部門にも力を入れており、上司と部下が週に1回30分程度ミーティングをする「1on1」や、ヤフーの企業内大学の「Yahoo!アカデミア」などで、気づきを得るタイミングや学ぶ環境もサポートしています。ヤフーには学ぶことに対して貪欲な人が多いのですが、健康に関しては学びの優先順位が低い印象です。これは、われわれの努力目標でもあり、この「にじいろ」の記事を通して気づきにつながるとありがたいです。

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