• 有識者
  • 2020.02.17

医療業界からみた健康経営顕彰制度の利点と推奨する理由

  • 日本健康会議共同代表
    (兼)公益社団法人日本医師会会長
    (兼)医療法人弘恵会ヨコクラ病院理事長
  • 横倉 義武
  • 有識者
  • 2020.02.17

医療業界からみた健康経営顕彰制度の利点と推奨する理由

  • 日本健康会議共同代表
    (兼)公益社団法人日本医師会会長
    (兼)医療法人弘恵会ヨコクラ病院理事長
  • 横倉 義武
目次

日本健康会議は、三村会頭、老川会長との三人で発足

日本健康会議日本健康会議が作られた背景には、現在の日本社会が要因となっています。

ご存知の通り、私たちの国は少子化による人口減少と超高齢化社会に突入し、社会保障制度を支えてきた若い世代が減り、支えられている側が増えるという状況になっています。

このような中で、この問題を前向きに解決する方策として、予防・健康づくりの推進による「健康長寿の延伸」ということが、国策の1つに掲げられました。

私はこれを実現するためにどうしたらいいのかと考えていた時、学生時代の先輩から日本商工会議所の三村会頭を紹介して頂きました。三村会頭ともこのことについて話し合い、だったら一緒にこの問題について話し合う場を作っていこうじゃないかということで、2015年7月に三村会頭とさらに読売新聞グループ本社の老川会長(当時は最高顧問)の三人で日本健康会議を始めたのです。

当時、2020年までに8つの数値目標を掲げた「健康なまち・職場づくり宣言2020」を採択しましたが、約3年で数値をクリアし、新しい目標を掲げて邁進しています。

医療界と経済界が一緒になって物事を行うのは初めてであり、とても重要な活動であると考えています。

医療業界から見た、健康経営顕彰制度について

健康経営顕彰制度労働者に対する健康管理は、労働安全衛生法に基づいて産業保健活動や健康保健組合による保健事業として行われてきました。

産業保健活動は当初労働災害をいかに防止するかをメインに作られたものでしたがここ数年で労働災害のみならず、労働者の健康維持・健康寿命の延伸にシフトしつつあります。

またこれまでの産業保健活動と健康経営顕彰制度には大きな違いがあります。

産業保健の制度はなぜそれに取り組まなくてはいけないのかという理解がなかなか得られていませんでした。
また、事業規模が小さな事業所が加入する協会けんぽでは、健診の実施率が低く、さらに中小企業では義務ではないために産業医の活用が進んでいないという状況にありました。

それに対して健康経営顕彰制度は企業が自主的に申請し、認定されるものです。そのためどの企業も必ず行わなければいけないと言うものではないのですが、企業自体が自ら前向きに考え取り組むと評価が得られるという仕組みになっています。
これによって企業が真面目に健康と向き合うようになり、産業保健活動も有効に機能させることができると考えています。

健康経営顕彰制度を行うメリットとは

健康経営顕彰制度を行うメリット先ほど健康経営顕彰制度を行うと評価が得られると言いましたが、健康経営顕彰制度を行い健康経営優良法人の認定を受けた企業が得られるメリットとしては、「労働市場」「株式市場」「地域社会」の3点からの評価が挙げられます。

その中でも一番大きいのは「労働市場」です。現在の企業はどこも人手不足で有力な若手に入社して欲しいと思っているのではないでしょうか。就職活動をする学生やそのご両親が企業の何を見て選んでいるのかというと、「健康や働き方に配慮しているか」という項目だということが調査で分かっています。
健康経営優良法人の認定企業は「ホワイト企業」と呼ばれ、実際に就職希望者が増加していると聞きます。
中小企業は特に、いい人材で長く勤めてくれる人を探していますので、申請企業数、認定企業数が毎年増加しているのは、他の企業との差別化を図るためになのではないかと考えています。
 

認証取得企業で働く、従業員のメリット

従業員のメリット次に従業員側からのメリットとしては、やはり健康に働けることが一番大きいでしょう。

健康的に働けるということは、個々の生産性やパフォーマンスを上げることができるため、自分の本来の力を存分に発揮することができます。さらに、このことが職場での評価につながるとなど、いいことづくめです。

従業員の家族にとってもメリットがあります。働き手が健康でいてくれれば、生活の心配をする機会も減りますし、休日に楽しい時間を過ごすことができます。

また認証取得企業では「産業医」「メンタルヘルス」「タバコの分煙化」がしっかりとしています。このことについても少しお話したいと思います。

職場における産業医の立ち位置とは

産業医の立ち位置「産業医」は、職場における身近な医療の専門家です。彼らの主な業務内容は、健康診断の実施や診断結果への対応、各従業員からの健康相談に乗ることが一般的なものです。また、毎月1回は作業現場(オフィスや工場など)を見て回り、作業方法や衛生状態に問題がないかどうかを確認します。もし何か問題があれば、すぐに措置を行うのも産業医の仕事です。

平成30年6月には働き方改革関連法が成立し、産業医業務に関しても法改正が行われました。面接指導や産業医の独立性・中立性の強化、産業医の権限や勧告の実効性の確保、健康情報の取り扱いルールの明確化などが具体的になったのです。これにより、以前よりも産業医の立場がはっきりとし、企業で働く人の健康管理がしやすくなったといえるでしょう。

人生100年時代を迎える日本にとって働きやすい職場環境づくりは、企業だけではなく従業員にとっても重要です。特に従業員が抱えている健康問題は、正直に会社に伝えてしまうと人事評価に影響を与えてしまうのではないかという恐れから、本当のことを話せないでいる人たちもいます。
そういった人にとっても、公平中立的な立場として話を聞いてくれる産業医は重要なポジションといえるでしょう。産業医は、健康で安心・安全な職場環境を構築するためには欠かせないものだと考えています。

職場におけるメンタルヘルス対策とは

メンタルヘルス対策ストレス社会だと言われていますが、仕事や職業生活に対して強い不安や悩み、ストレスを感じている従業員の割合は5割を超えています。ストレスを抱え込み過ぎると、メンタルヘルスの不調をもたらして心身に悪い影響を及ぼすこともあります。

日本では、平成27年12月から従業員の心理的な負担の程度を把握するための検査「ストレスチェック制度」を実施しました。これは企業が従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としており、従業員自身、自分がどれくらいストレス状態に陥っているのかも客観的に把握することもできるので、ぜひチェックをしてみてください。

ただ現状の各企業の職場環境では、高ストレスという結果が出たとしても、面接指導を申し出る人が少ない状況です。理由は人それぞれにあるとは思いますが、私から言えることがあるとすれば、ストレスを一人で抱え込まないためにも、上司や職場の同僚に気軽に相談できる関係性を普段から作っておくことが大事だということです。

こうした関係を築くには、トップのマネジメント能力、上司のリーダーシップ力、同僚のサポート力がどれだけあるかにもかかっています。何も言ってこないから放置しておくのではなく、何も言えない環境を自分が作っているかもしれないということに気付くことが大切です。そしてこれこそが、メンタルヘルス対策にとって最も重要なことだと私は考えています。

職場における分煙での健康への影響とは

分煙タバコを普段から吸わない人は煙に対する感受性が高いため、少しの量でも大きな健康被害を受けるという報告が上がってきています。受動喫煙が原因で死亡する人は、国内で年間1万5千人と推計されています。

厚生労働省からは「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」が示されていますが、1日の1/3以上を過ごす職場において有効な対策が取られていない場合、非喫煙者にも健康への悪影響を及ぼすことから、受動喫煙防止対策を徹底していかなければいけません。

職場がたとえ分煙になっていても、有害物質はタバコを吸った後の呼気や衣服から拡散されるほか、「サードハンド・スモーク」といって、家具や壁紙から徐々に空気中に遊離・拡散して、タバコを吸わない人は有害物質にさらされることになります。
このことから、職場は分煙ではなく「完全禁煙」化されなければならないと、私は考えています。

また、この問題に関しては学校の授業の中でタバコの害について話をしてもらうことも大事だと考えています。これには2つの効果があります。1つは、お子さん自身が大人になった時タバコを吸わなくなるということ。もう1つは、お子さんから例えば「お父さん、タバコは身体に悪いんだよ」と伝えてもらうことで抑制を促すことができるという効果があります。

職場からも、ご家庭からも禁煙についての意識を高めていってほしいと思います。

健康経営優良法人顕彰制度の今後と「生涯にわたる健康づくり」について

生涯にわたる健康づくり健康づくりというのは常に意識をしていないと、すぐに停滞してしまいます。だからこそ健康経営で企業が健康に関心を向けていれば、そこで働く個人も健康について常に考えられる人になっていけるはずだと考えています。
ビジネスのフィールドに置いて、自分自身の身体の管理もそこに含まれているということを、もっと多くの人に意識していただきたいと思います。

健康維持をするために個人に取り組んでいただきたいことは3つです。
1、健康を意識した生活習慣(1に運動、2に食事)
2、1年に1回以上の健診
3、健診結果を踏まえた適切な行動

言葉にするととても簡単ですが、実際にできていない人が多いのが現在の日本です。
そこで医師会としては、会社の産業医だけではなく、家や職場の近くに「かかりつけ医」をもってもらうことを推奨しています。

私は医師の大きな役割は「防ぐ」「治す」「支える」の3つだと考えており、これを実践するには「かかりつけ医」が必要だと思っています。
またリタイア後は、とくにこの「かかりつけ医」が重要です。かかりつけ医と密な関係を作って、一緒に健康づくりに取り組んでいただきたいと考えています。
 

当メディアサイト「にじいろ」に対するアドバイス

健康経営企業僕らの若い時代は企業を大事にする風習が強くありましたが、今の時代の人たちは自分を大事にする風習があり、時代とともに働き方もどんどんと変化していっています。

ただ働き方が変わったとしても、自分の健康維持を考えない生き方は、個人も家族も会社も国も誰も得をしません。人が健康でいるということ、ただそれだけで全員が笑っていられる社会になると考えています。

そして、その健康維持をするための「健康経営」を広めようと活動している「にじいろ」さんは、とても素晴らしいテーマを持っていると思います。ぜひこれからもたくさんの健康経営企業を取り上げてもらい、「健康」について考える方が1人でも多くなることを期待しています。

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