• 健康経営
  • 2021.10.27 (最終更新日:2022.03.26)

短時間勤務制度とは?導入方法や健康経営との関係について

目次

ワークライフバランスが重要視される現代

短時間勤務制度 ワークライフバランス 働き方改革によって、ワークライフバランスというものが注目されています。
仕事と日常生活とを両立させ、日々の充実度を向上させるために必要な考え方です。
育児や介護といった場面で、仕事との両立に苦労する社会人はいつの時代にもたくさんいます。
この苦労を解消する手助けとなる「短時間勤務制度」というものがあることを、みなさんはご存じでしょうか。
大人になり歳を重ね、ライフステージが変わり、フルタイム8時間での勤務が難しくなるタイミングが来た時に、それに応じて勤務時間を短くできるのであれば非常に助かりますよね。
時間の余裕は心の余裕を生み、仕事と家庭の両立がやりやすくなり、より充実した豊かなライフスタイルへとつながります。
今回は短時間勤務の制度内容と活用の仕方、制度があることのメリット・デメリットと注意点を学んでいきましょう。

短時間勤務制度とは

短時間勤務制度 定時

まずは短時間勤務制度そのものについてお話しします。
制度が導入された背景や、制度の対象となる人を知っておきましょう。

導入の背景

制度が制定される以前の日本社会では、「就労」と「結婚・出産・育児」について二者択一の図式ができており、その二つを両立させる環境が整っていませんでした。
結婚し子供をもうけ、豊かな生活を送りたいと夢見る男女がいながらも、現実的にそこまでの余裕が持てず、結婚・子育てに消極的になる傾向があるのです。
こうした少子化問題への対策という側面に加え、育児や介護により退職を余儀なくされる人を減らし、労働人口を確保したいという理由もあります。
これらの思いから、育児・介護休業法の改正によって導入されたのが、この短時間勤務制度です。

概要

短時間勤務の内容はその名のとおり、1日の労働時間を通常よりも短くした働き方で、原則として6時間(5時間45分から6時間まで)に短縮できます。
ある特定の日に7時間勤務したり、隔日勤務にしたりする措置も合わせてとれますが、あくまで原則は1日6時間です。
制度を利用するには条件全てに当てはまる必要があり、それについては次の項目で詳しくご紹介します。短時間勤務制度が定められた改正育児・介護休業法は、その他にも時代の流れに合わせて法律内容を変えてきました。
育児休業・介護休業制度の制定と短時間勤務制度の制定、さらには育児や介護を理由としたハラスメントの防止や、育児休業機関の延長といった内容が盛り込まれています。

制度の対象

制度を利用するために必要なのは以下の条件です。
これら5つの条件全てに当てはまる必要があります。

3歳未満の子供を養育する労働者

子供の人数は関係なく、兄弟姉妹で一人でも3歳未満の子供がいれば時短勤務制度の申請が可能です。

1日の所定労働時間が6時間以下でない

労働基準法で定められている勤務時間は1日8時間までで、これを短縮するための時短勤務です。
そもそもが6時間以下であれば短縮も何もないため、自身の契約を確認しましょう。

日々の雇用される者でない

日雇い契約であれば継続雇用にあたらないため、時短勤務の対象外です。
日雇いでさえなければ、非正規社員・派遣社員・パートタイムスタッフでも制度の利用は可能です。

短時間勤務制度の適用期間前に、育児休業を取得していない

子供が3歳になるまでが制度の適用期間です。
この間に育休制度をすでに利用した場合は時短勤務の対象外となります。

労使協定により適用除外となっていない

労働者と事業主の間で交わされた協定が労使協定ですが、それにより以下の内容が定められていると、時短勤務の対象外となります。

  1. 雇用期間が1年未満
  2. 週の勤務が2日以下
  3. 業務の性質・実施体制に照らして時短勤務制度の導入が難しいとされる場合

さまざまな視点から見た短時間勤務制度

短時間勤務制度 子育て

時短勤務制度の利用条件が5つもあり、実質利用が難しいのではと思った方もいるかもしれません。
しかし制度の導入が難しい場合、企業は労働者に対し代替案を講じることが義務付けられています。
代替案を用いた時短勤務の具体的な利用例を見ていきましょう。

育児

育児については以下のような措置が考えられます。

  • 育児休業制度に準ずる措置
  • フレックスタイム制

時短とは異なり、始業時刻と終業時刻、労働時間を従業員自身が決める働き方です。
時短勤務は毎日6時間勤務と決まっていますが、例えば労働時間が月に160時間の場合、週の中の配分が個人の自由なため、日毎に働く時間が異なっても構いません。プライベートと仕事のバランスが取りやすいというメリットがあります。

  • 出社・退社時間の繰り上げや繰り下げ

例えば出社と退社を1時間ずつずらすことで、子供の送迎やそれに伴う準備に合った働き方が期待できます。

  • 事業所内への保育施設の設置、これに準ずる便宜の供与
  • 託児所を設けたり、ベビーシッターを雇う際の費用を会社が負担したりといった措置を指します。

介護

要介護状態の家族を介護する労働者に対しては、仕事との両立をしやすくするため、連続する3年間以上の期間における所定労働時間の短縮等の制度を設けることが企業の義務です。

以下に紹介する4つの措置か、それに準ずる措置を原則として2回以上利用できるようにしなければなりません。

  • フレックスタイム制
  • 出社・退社時間の繰り上げや繰り下げ
  • 介護サービス利用への費用援助
  • 短時間勤務制度

ちなみに、短時間勤務制度に関しては以下の4つの方法があります。

  1. 1日の所定労働時間の短縮
  2. 週、または月単位での所定労働時間の短縮
  3. 隔日勤務や、特定の曜日勤務にし、週または月の所定労働日数を減らす
  4. 労働者が個々に勤務しない日・時間を請求することを認める

病気

労働者自身の病気や怪我といった理由での短時間勤務制度は、現状法律では定められていません。
とはいえ長期の治療が必要なケースや、メンタルヘルス系の問題から会社復帰を目指すケースなどさまざまあります。
時短勤務の制度や、時間単位・半日単位での有給使用など、会社で配慮できる制度が整っていれば、このあと触れる健康経営の観点からも労働者側は非常に安心できます。

健康経営

制度の導入は労働者が働きやすくなるだけではなく、企業の健康経営から見ても非常に効果的です。
法で定められている以上、企業に時短勤務の制度があることは義務ですが、例えば「3歳以上」の未就学児を抱える労働者に対して時短勤務を講ずることは「努力義務」となっています。
努力義務となればあくまで企業が自主的に定めるものであるため、企業ごとで差が生まれてくるのは当然です。
となれば労働者は、我が子が制度の対象外である3歳以上になっても、家庭の状況に応じて時短勤務やそれに準ずる働き方ができる企業が望ましいでしょう。
こういった福利厚生が整っている企業というのが、人材の獲得競争の中では非常に大きな強みです。
求職者からは従業員に優しい魅力的な企業に見え、既存の従業員たちも働きやすさと安心感により、離職が減る効果が期待できます。

導入の際の注意点

短時間勤務制度 導入

制度を導入する際には以下のことに気をつけましょう。

手続きは簡単に分かりやすく

時短勤務を適用するうえでの手続き方法や申請書の内容などは企業が定めることになるため、もし複雑で分かりにくく、申請したい労働者に負担がかかるような内容であればそれは避けなければなりません。

「希望する利用開始日の1か月前には担当の部署まで申請書を提出する」というように、労働者・企業双方の負担が軽く済むような方法を意識しましょう。

就業規則を整える

実際に運用するために、社員たちに制度の内容を周知する必要があります。
そのために就業規則に明記して啓蒙していきましょう。
明記する内容も無論重要です。
特に労働時間そのものについてや時短勤務中の給与の算定、時短勤務を利用することによるハラスメント防止措置などをしっかり明記し、実際の利用時に労働者と会社でトラブルが起きないように気をつけましょう。

短時間勤務制度導入のメリット・デメリット

短時間勤務制度 メリット

いくつかのメリットは各所で触れてきましたが、改めて、労働者・企業それぞれでメリットとデメリットをまとめておきます。

メリット

労働者にとっての一番のメリットはワークライフバランスの充実です。
時間が短くなる分仕事と家庭のことが両立しやすくなり、時間と心にも余裕が生まれます。
出産や育児を理由に仕事を辞める必要がなくなり、それまでに積み上げてきたキャリアも失わずに済みます。
安心して働けることで就業への意欲向上も期待できます。
企業にとっては人材の確保という面が一番のメリットと言えるでしょう。
労働者のニーズに応えることで満足度が上がり、既存社員の定着につながります。
求職者にとっても魅力的な企業です。
優秀な人材も確保できることで、業務の効率化・生産性の向上も期待できます。

デメリット

次にデメリットですが、労働者は単純に給与が減ることが想定されます。
また時間が短くなることで、仕事量を考えた時に今まで出来ていた仕事ができなくなる場合があります。
ハラスメント防止措置はあるとはいえ、職場の人間関係がギクシャクするということもあるため、利用する際の配慮と周囲の理解は得たいところです。
企業にとっても上記のとおり、フルタイムの社員の仕事量が増えることで発生してしまう不公平感については憂慮すべきです。
管理者や同じチームのスタッフ内で格差が出ないよう、時短勤務への移行にあたり仕事内容・仕事量を把握し、負担が偏らないように注意しましょう。

短時間勤務制度の導入事例

短時間勤務制度 デメリット

最後に、実際に短時間勤務制度を導入している企業の例をいくつか見ていきましょう。

サントリー

子供の中学校進学までの間、1日2時間を限度とした短時間勤務制度を設けています。
さらに子供の年齢を問わないフレックス勤務・テレワークがあり、育児を理由とした特別有給にあたる「キッズサポート休暇」という制度も非常に魅力的です。
ベビーシッター利用補助も1日1700円の支給があり、介護に関しても最長で3年間の休業が可能な上、ホームヘルパー利用補助も会社が負担してくれます。

ソニー

仕事と家庭の両立支援としてさまざまな取り組みがなされており、「育児期フレックスタイム制度」・「育児短時間勤務」などの制度があり、これらは子供が小学6年の3月末まで利用が可能です。
その他ベビーシッター利用時の費用の補助や、配偶者の赴任同行や修学のための休職制度など、長期的で豊かなキャリアを支援する制度が整えています。

トヨタ

子供が小学校を卒業するまで、4時間・6時間・7時間の中から選べる短時間勤務が可能です。
介護の場合もこの時間から選んで利用できますが、これに関しては要介護の家族一人につき3年を越えない範囲で利用するという規定があります。

まとめ

短時間勤務制度 企業

短時間勤務制度は昨今のコロナ禍による働き方の変化にもマッチしている上に、人生で必ずいつかは経験するであろう介護や育児といった場面で非常に助かる制度です。
仕事と家庭の両立、仕事と趣味、ライフスタイルとのバランスは社会人にとって永遠の課題と言えます。
労働というものが人生の中でかなりのウエイトを占める以上、働きやすい職場で働いて、自分のやりたいことをする時間も損なわないというのは理想のキャリアではないでしょうか。
豊かな人生を送るためにも、この制度がしっかり利用できる手厚い企業に勤めたいところです。
企業は代替案を含め、この制度に基づいた従業員の働きやすい環境の整備を進めていきましょう。

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