• 健康経営
  • 2025.12.19

健康経営優良法人制度とは?認定企業が評価される理由

目次

まえがき|「健康経営優良法人」という肩書きは、何を意味しているのか

就職活動や転職活動をしていると、「健康経営優良法人認定企業」という表記を見かけることがあります。
一見すると、社員の健康に配慮している“良さそうな会社”という印象を受ける一方で、「具体的に何が違うのかはよく分からない」「認定があるからといって、本当に働きやすいのだろうか」と感じる人も多いのではないでしょうか。

実際、この制度については名前だけが先行し、内容までは十分に理解されていないケースが少なくありません。
企業側のブランディング目的で使われているだけではないか、という疑念を持つ人もいるでしょう。

しかし、健康経営優良法人制度は、単なるイメージ評価ではなく、国が主導して設計した明確な評価基準をもつ制度です。
その背景には、日本の働き方や企業経営が抱えてきた深刻な課題があり、制度はそれらを是正するための“指標”として機能することを目指しています。

この記事では、健康経営優良法人制度がなぜ生まれたのか、どのような仕組みで企業が評価されているのか、そしてこの認定が働く人にとってどのような意味を持つのかを、できるだけ丁寧に解説していきます。
「働きやすい会社」を見極める判断材料のひとつとして、この制度を正しく理解するための視点を整理していきましょう。

健康経営優良法人制度が創設された目的と背景

健康経営優良法人制度は、経済産業省が中心となって推進している制度です。
その目的は非常にシンプルで、「企業が従業員の健康に戦略的に取り組むことを当たり前にする」ことにあります。

日本では長らく、過重労働やストレスによる健康問題が社会課題として指摘されてきました。
メンタル不調による休職・離職、生活習慣病の増加、働き盛り世代の健康悪化などは、個人の問題にとどまらず、企業の生産性低下や社会保障費の増大にも直結します。

こうした状況を受けて、国は「健康は個人任せではなく、企業経営の一部として考えるべき」という考え方を打ち出しました。
それが「健康経営」という概念であり、その実践度を“見える化”するために作られたのが健康経営優良法人制度です。

この制度の特徴は、努力している企業が正当に評価され、社会的に分かりやすく認知される仕組みを作った点にあります。
単に「健康に配慮しています」と宣言するだけでなく、一定の基準を満たしているかどうかを第三者的に確認する枠組みが設けられています。

つまりこの制度は、企業の善意に任せるのではなく、持続的に健康経営を促すための社会的インフラとして設計されているのです。

認定企業が評価される仕組みと制度の全体像

健康経営優良法人制度には、明確な評価プロセスがあります。
企業はまず「健康経営度調査」と呼ばれる調査票に回答し、自社の取り組み状況を申告します。その内容をもとに、一定の基準を満たした企業が認定されます。

制度は大きく分けて、大規模法人部門中小規模法人部門の2つに区分されています。
企業規模に応じた評価軸が用意されているため、「大企業でなければ不利」という設計にはなっていません。

評価項目は多岐にわたりますが、主に以下のような観点が含まれます。

  • 経営層が健康経営に関与しているか

  • 従業員の健康課題を把握しているか

  • 健康増進やメンタルヘルス対策を実施しているか

  • 長時間労働への対策が取られているか

  • 健康に関する取り組みを継続的に改善しているか

重要なのは、「制度を作ったか」ではなく、「実際に運用しているか」「改善サイクルが回っているか」が見られる点です。
このため、一度認定された企業でも、翌年以降の取り組みが不十分であれば認定を継続できない場合もあります。

健康経営優良法人という肩書きは、一度取ったら終わりの称号ではなく、継続的な努力が前提になっているのです。

健康経営優良法人に求められる具体的な取り組み内容

では、認定を受ける企業は、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

代表的なものとしては、まず健康診断の受診率向上があります。
単に受診を義務付けるだけでなく、再検査やフォロー体制を整え、従業員が健康状態を放置しない仕組みを作ることが求められます。

次に、メンタルヘルス対策です。
ストレスチェックの実施や相談窓口の設置、管理職向けの研修などを通じて、不調を早期に察知し、深刻化を防ぐ体制づくりが重要視されます。

また、働き方改革との連動も欠かせません。
長時間労働の是正、有給休暇の取得促進、柔軟な勤務形態の導入などは、健康経営の基盤となる取り組みです。

これらは単なる「福利厚生」ではなく、従業員が安定して働き続けるための経営施策として位置づけられています。
健康経営優良法人に認定される企業は、少なくともこれらの施策を「形式だけでなく、実態として」運用していることが求められているのです。

認定を受けることで企業イメージがどう変わるのか

健康経営優良法人に認定されると、企業イメージにも一定の変化が生まれます。

まず、対外的には「人を大切にする企業」という印象を持たれやすくなります。
特に就職・転職市場では、企業選びの軸が多様化しており、給与や知名度だけでなく、働きやすさや価値観を重視する人が増えています。
その中で、客観的な指標として使えるのがこの認定制度です。

また、金融機関や取引先からの評価にも影響するケースがあります。
健康経営に取り組む企業は、リスク管理や中長期視点での経営ができていると見なされることがあり、信頼性向上につながる場合もあります。

ただし、重要なのは「認定があるから良い会社」という単純な話ではないという点です。
あくまで認定は企業の姿勢を知るための一つの材料であり、実態とセットで見ることが必要です。

求職者にとって認定企業が持つ意味とは

では、働く側・求職者にとって、健康経営優良法人の認定はどのような意味を持つのでしょうか。

最大の価値は、「企業を見る際の判断軸が増えること」です。
求人情報だけでは分かりにくい企業の姿勢や考え方を、ある程度客観的に推測する手がかりになります。

例えば、認定を受けている企業であれば、「少なくとも健康や働き方について無関心ではない」「国の基準に沿った取り組みを行おうとしている」という前提は置けます。
これは、ブラック企業かどうかを見極める“フィルター”として一定の役割を果たします。

一方で、認定がない企業=働きにくい会社、というわけではありません。
あくまで参考情報のひとつとして捉え、自分にとって重要な価値観や働き方と照らし合わせることが大切です。

健康経営優良法人制度は、求職者に「考える材料」を提供するための制度でもあります。
企業と働く人のミスマッチを減らすための、ひとつの共通言語として活用する視点が求められています。

まとめ|健康経営優良法人制度を“働く視点”でどう活かすか

健康経営優良法人制度は、企業が従業員の健康を経営戦略として捉えているかどうかを、一定の基準で可視化するための制度です。
その背景には、日本社会が抱える働き方や健康に関する構造的な課題があります。

認定企業は、健康管理や働き方改善に少なくとも一定の取り組みを行っており、企業姿勢を読み取る手がかりになります。
一方で、認定の有無だけで判断するのではなく、実際の働き方や職場の雰囲気と合わせて見ることが重要です。

「健康経営優良法人」という言葉を知っているかどうかで、企業の見え方は変わります。
働きやすい会社を探す上で、この制度をどう読み解くか。その視点を持つこと自体が、より納得感のある選択につながっていくはずです。

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