• 有識者
  • 2020.01.06 (最終更新日:2022.03.26)

健康経営の評価は笑顔の数

  • 株式会社富士通ゼネラル  健康経営推進室 室長  兼人事統括部 主席部長
  • 佐藤 光弘
  • 有識者
  • 2020.01.06 (最終更新日:2022.03.26)

健康経営の評価は笑顔の数

  • 株式会社富士通ゼネラル  健康経営推進室 室長  兼人事統括部 主席部長
  • 佐藤 光弘
目次

方向性を示す健康経営という旗の存在

健康経営 米川(にじいろ)
ズバリ健康経営とはどのようなものでしょうか?

佐藤
健康経営とは企業や組織が活力のある状態を目指すための組織開発の一つの手法です。同じ事を行っても、今までの延長線上で人事が行うと身構えてしまう雰囲気が企業・団体さんがあると思います。そんな時、人事ではなく健康としての取組で行った方が進めやすいと考えて、弊社では健康経営推進室を作りました。 社員を巻き込む事が出来なければ、何の意味も無いので、人事部門としての業務ではなく、全く新しい部門(取組)として始めた事で、社員もやってみようかなと入りやすかったと思います。やはり経営トップが目指すのは一人一人の社員を元気にして、組織に活力を与えたいという思いがあります。その為に健康経営と言う名前を使っています。

玉山 (メンタルヘルス法務主任者)
人事も経営に寄り添わなければいけない時代で、健康の方がフワッとした領域でいろいろな事が展開できます。
健康経営と言うと、当室も全体のストーリーとしても作りやすいし、経営が入ってるので経営側にもアプローチしやすい状況です。

佐藤
一般社員から見ると「人事」は、できれば会いたくない、一線をおきたい部門だと思い知らされるエピソードがあります。それは250名位の企業に席を置いていた時の事ですが、目が届く規模ですので社員とも近いので話をすると、「人事とは一生会いたくないですよね」「会いたいと思いますか?」と言われたんです。確かに人事は言いにくい事を言わなければならない部門というのが、日本の企業にはぼんやりとありますよね。なにかあった時には問い合わせるけど、できたら関わりたくないとか。それで富士通に戻ってきてから、そういう中で何をできるかっていう事を考えていました。今は1500人位の事業所なので、様々な取組を行うにはほど良い規模感だと感じてます。以前のように200~300名程度ですと、ローテーションも出来ないんですよね。現在の上司は社長なので2、3ヶ月に一回は社長と2人で報告や予定を話し合うことが可能ですが、グループ会社全部で16万人の富士通では出来ない事だと思います。

それだけの人数がいると、「教育」「安全」「人事」で、更に人事の中にも「企画」「労務担当」とか。これらを全部音頭をとろうと思うと「なんで、うちに」とか「なんで勝手に決めるんだ」ってなりますよね。ですので業務(タスク)を行うセクションというよりも、目的や方向性を基に、今何をやるべきかを考え、検討するテーブルとして、健康経営という旗印はとても重要な役割を担っています。

時代が求める健康経営 評価項目をタスクで消し込むのは本末転倒

時代が求める健康経営 米川
健康経営顕彰制度について、どのようにお考えでしょうか?

玉山
もともと経産省さんは、健康長寿の永い日本から、健康をビジネス化して、アジアに輸出していくという目論見だったと記憶してます。あと将来的に社員の健康については経営として取り組まないとならない時代だと。ですが、だんだん健康経営の手法といいますか、経営視点でという話であったのに、経営課題である健康タスクまで経産省さんが謳っるようになってしまったと感じております。

経営視点では産業保健と異なり、各社さんのやるべき事は全く違いますよね。そもそも課題が違っているのは当然で、その固有の課題に対して健康という切り口で取り組むべき筈なのに、他社さんと同じような取組を行う事には何か違和感がありますね。

佐藤
やはり企業には文化があり、その延長線上に様々な取組がある。とはいえ、私はよく『こうありたい会社』と聞かれる際にはANAさんとフジクラさんとお伝えしてます。なぜかと言うと、組織風土がとても素晴らしい。フジクラさんみたいに社長と技術屋さんが会社を元気にするために組織を作って、会社まで作っちゃう。社員を大切にするという企業文化がそのまま現れていますよね。ANAさんやフジクラさんには、そういう思いが経営者だけじゃなくて社員にもあると感じています。

顕彰制度は、取得企業が年々増える事に関しては、一定の成果が有ったと感じてます。経済産業省さんには、ブームで終わらないよう、常に気づきを与え、日本の健康経営という旗を振り続けて先導して頂きたいですね。

健康デザインセンターという気付きの場

健康デザインセンター 佐藤
あと弊社には健康デザインセンターという健康経営の象徴的な場所があります。
雲梯があり、卓球台もある。時にはヨガ、時にはワールドカフェと、様々な用途で利用出来、その中で自分の健康状態に気付いてもらい。自分なりの健康をデザインしてもらえるようなスペースとして作りました。

玉山
皆さん完成した当初はどう使えばいいのかなど、懐疑的な所もありましたが、デザインセンターに来た人たちに声を掛けると、素直に「こうしたほうが良いと思います」などご意見を頂いたりします。やはり人事ではないことと、医療職にも心理的安全性が宿ってきたので、何か言っても批判を受けないという文化醸成が徐々にできてきたようです。また、富士通ゼネラルは開発職の方が多いので新規やチェンジには常に発想にあり、会社も変わろうとしている事の一環としてデザインセンターを見て頂けてます。


健康経営佐藤
この健康デザインセンターは仮眠スペースにもなるんですよ。昼休みとか、就業時間中でも10分以内はいいですよって将来的には実施していきたいと考えています。最初は時間の設定などするつもりはなかったんですけど、時間イコール価値みたいな概念が組織文化として、まだ残っているのは事実です。そういった組織文化やヘルスリテラシーをも変えていきたいです。実際、眠いのに無理やり仕事するのではなく、メリハリが重要です。ポジティブに活動するためにリフレッシュする場を会社が提供する時代に入ってきてますよね。

この健康デザインセンターというのは、自分で健康を気付いてもらう(デザインしてもらう)スペースなので、現場の人に楽しんで一緒にいる仲間と共感してもらう事で、ここでも少しずつ社員の文化になりつつあると思います。

玉山 
ちょっとくると、気分転換になって良いというお声は多かったので、苦労して作った甲斐はありました。
あとイベントも参加者の8割は賛同して頂けるので、今の会社が変わってきているというのを、感じてもらえている手ごたえはあると思っています。

企業文化に新たな風をもたらす健康経営

企業文化に新たな風をもたらす健康経営 米川
健康経営を推進する中で得られた効果をお聞かせください。

玉山
要素は複合的なので何が効いたかは難しいですが、社員は変わったと同時に、変えてくれているから自分たちも協力して行こうって言う声が多く、雰囲気が変わって来たように感じています。8月にファミリーデイを行った時、各職場でお父さんの上司とか、この椅子で働いているとか、体感をしてもらって最後に健康のイベントをやる構成だったんです。しかし現場の方から、『いい機会だから実験室も見してあげた方がいいのでは』と、提案をして頂きました。変わってきたという事の享受だけでなく、自分たちも何か支援して行こうみたいな風土ができつつあると感じましたね。あと経営層に対しては、健康経営は人事の一部と思っている方も多かったので、ストレスチェックの組織評価の説明などでお伺いすると、何しに来たのかと警戒されてたんです。

佐藤
管理部門は、何かあった時だけ来るイメージがありますよね。でも僕らは率先して出て行く。役員の皆さんに、こういう状態ですって自分の組織の現状を説明に行くんです。点数がいいとか悪いとかそういうものではなくて、経営層の上の方が現状認識をしていただき、その元で、では何をしようかと思考する気づきにきっかけを支援することが大事だと思っております。

あと健康経営って旗を使う。うまくコミュニティーを活性化させる旗でしかないんですよね。でも、その旗があるからみんな動くんです。忙しい部署は目先の目標達成、悪い意味での効率、生産性を上げるっていう事に捉われ過ぎない文化を作りたいですね。


玉山
あとは採用支援ですね。誤解を生み易いのが、どこの企業さんも『オヤカク』しないと内定を受け取ってもらえないという話の中で、内定を出しても4月まで内定者を保持する事が難しい状況があります。そんな中でホワイト500を取っていないとブラックみたいに感じるとかを耳にします。決してそんな事はないと思いますが、少なからず採用の支援効果はあると感じています。
 

効果の図り方は、笑顔の数

健康経営効果 米川
難しいと思いますが、どのように効果を計っておりますか?

佐藤
効果の測り方は、笑顔が1個でも2個でも職場の中で増える事だと思いますよ。

米川
たぶん健康経営というのが非言語なところに価値があると思いますので、数値化に意味あるのか、微妙なところですよね。

玉山
どちらかというと非言語化のところが、文化としてできれば、大成功なのかなって思います。
お子さんが熱を出して、勤務途中にすみません、といって帰宅するのではなく、あくまで、ライフスタイルに合わせて休みを取ることができると、子どもが病気だったら上司がもう帰りなよって言いますよね。その内容は多種多様です。

だから社員にとっての、平等と均一が違うことを踏まえつつ互いが行動する。非言語化って、まさしくその通りだと思います。その非言語な観測にマネージメントもカスタマイズして頂かないといけない。日常的に行っている事だと思いますが、それを数値化する事はとても困難ですし、結果の評価を数値化となれば尚更ムリがありますよね。

佐藤
話しは変わりますが、3年前初めて、就業時間中にワールドカフェをという研修の講義型とは異なる切り口で集まってもらったんです。そこで、仕事以外でコーヒーとお菓子が出て、音楽が流れてた空間で「いきいきした職場は何」って聞く事をしました。

すると自由に派遣社員の方も一般社員の方も、20代も50代も仕事じゃない切り口のキーワードで会話をして、席も移って全員が共有する。「私はこう思う」とみんな盛り上がってました。そういうことができる会社にするのが目的なんですよ。

玉山
それで、「あの時は」みたいな会話が後でされて、今まで遠慮してた事がお互いに言えるようになったりという感じです。
健康というキーワードでの取組の結果、職場で笑顔が増え、楽しく仕事が出来ていれば、間違いなくパフォーマンスも上がっていると思いますね。
 

にじいろに期待する事

健康経営取り組み 佐藤
やっぱり学生の皆さんに、健康経営って学問はありませんが、もっと学生に知って欲しいです。健康経営に取組む企業は、最終的には一人一人の幸せを生むための、安心した組織だよっていう事をアピールしたいと思います。そして、企業人は、概ね60、65歳で退職するわけですが、退職後の社員の人生が、どう幸せに過ごせるか、社員ひとり一人に、気づいてもらうことが、健康経営に取組む企業価値だと思います。
 

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