• 健康経営
  • 2021.12.06 (最終更新日:2022.04.06)

健康経営を実現するウェルビーイングとは?メリットや導入事例をご紹介

目次

現代社会を幸福に生きるために

ウェルビーイング とは 福祉 みなさんは今、日々幸せだと感じて生きていますか?
大人も子供も、社会人も学生も、現代は何かとストレスが多く息苦しさを感じることが多いと思います。
そんな現代で「ウェルビーイング」という概念が注目されていますがご存じでしょうか。
簡単に言えば「幸福」そのものであり、「世界幸福度ランキング」でも活用される概念です。
ウェルビーイングについて知り活用することは企業が推進する健康経営にも直結し、すでに実践している企業も国内外で数多く存在しています。
今回はウェルビーイングの概要と、なぜ今注目されているのか、企業が推進するメリットと実際の事例などを紹介していきます。

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイング とは 看護

まずはウェルビーイングについての基礎知識を押さえていきましょう。

概要

ウェルビーイングとは「well-being」と書き、直訳すると「幸福」「健康」といった意味です。
この定義については世界保健機関(WHO)憲章の前文の一節がよく引用されるのですが、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあることをいいます。」とあり、つまり幸福であり心身ともに良好で、社会的にも充実している状態をウェルビーイングと言います。
自身を幸せだと感じる従業員は、より創造的でパフォーマンスが高く、組織にいい影響を与えるということがさまざまな調査で分かっているため、このウェルビーイングの概念は企業にとって健康経営の観点から非常に重要です。

ウェルフェアとの違い

ウェルビーイングと似た言葉として「ウェルフェア(welfare)」がありますが、後者の意味合いは「福祉」「福利」「幸福」といったもので、主に「福利厚生」と認識されています。
福利厚生といえば、従業員やその家族に与えられる給与以外の制度や仕組みのことですが、社会保険といった法定福利厚生と、家賃補助や社員食堂などといった会社独自の法定外福利厚生があり、「ウェルフェアサービス」とも呼ばれるものです。
どちらも従業員とその家族の健康増進や、働きがい・働きやすさ向上のためのものという点で同じですが、ウェルビーイングが目的、ウェルフェアが手段であり、ウェルビーイングの実現のために各種ウェルフェアサービスを整えるといったイメージです。
またこのウェルビーイング実現のためには、ポジティブ心理学という要素も関連します。
ポジティブ心理学とは本来のあるべき所へ、正しい方向へ導くために必要なことを科学的に実証していくものであり、これを用いることでウェルビーイングは単なるスローガンに終わらず実現が可能だということが分かってきました。

ギャラップ社による調査

ウェルビーイングに関する調査で有名なものは、アメリカのギャラップ社が行っているものです。
140を超える国や地域で行われる大規模なもので、「体験」と「評価」の二つの調査軸から幸福度を測ります。
この調査は「世界幸福度ランキング」でも活用されており、設問の例として

  • 1人あたりのGDP
  • 平均余命
  • 政府機関の腐敗
  • 昨日は楽しかったか

といったものが問われるのですが、ちなみに2021年最新の調査において、1位は4年連続でフィンランド、日本は56位と先進諸国の中で低い水準に甘んじています。

なぜ注目されているのか

ウェルビーイング 会社

元々は医療や看護、社会福祉などの現場でよく用いられていたウェルビーイングですが、最近はビジネスシーンといったそれ以外の場所でも使われるようになってきました。
国連や官公庁も取り上げるほどに注目されているウェルビーイングですが、その背景をご紹介します。

多様化する価値観

最近よく聞くダイバーシティという言葉があるように、人々の価値観が急速に多様化してきています。
性別や国籍、文化といったさまざまなバックグラウンドをもつ人々がチームとなり、コミュニケーションを取りながら仕事をするということが増えてきました。
企業がこの多様性を認め尊重することは、新鮮な発見やさまざまなビジネスアイデアにつながっていきます。
異なる価値観・バックグラウンドをもつ従業員全てが、フルに能力を発揮できるような環境を整えられれば、従業員の幸福感が高まり、企業の競争力やイノベーションにも有効です。

人材不足と流動性の高まり

出生率の低下、少子高齢化の加速により、将来的に深刻な人材不足に陥ることが予測されている現代において、労働力の確保は企業にとって大きな課題の一つです。
終身雇用の概念も希薄になり転職も当たり前になっているため、既存の従業員を引き留め、求職者を呼び込むだけの、企業としての強みが必要になっています。
利益追求だけでなく、従業員とその家族の健康と幸福追求に貢献する姿勢を示すことで企業への帰属意識を高められるため、ウェルビーイングの考え方は重要です。

働き方改革

働き方改革の推進により、長時間労働の是正や同一労働・同一賃金の適用など、多様で柔軟な働き方ができるよう就業環境の整備が進められてきています。
また直近のコロナ禍も合わさり、テレワークや時差通勤などさらに働き方は多様化し、人々の仕事の価値観が大きく変化したことで企業も対応に追われている現状です。
新たなワークスタイルは新たなストレスも生んでおり、いかにそれらを軽減し、やりがいを持ちながら働きやすいワークスタイルを提供できるかが企業のアピールポイントにもなっているため、ウェルビーイングの視点が必要となっています。

SDGsによる言及

持続可能な開発目標という意味の言葉で、2015年の国連サミットで採択され、2030年までに持続可能でより良い世界を目指そうという国際目標です。
全17項目ある中の3つ目に、「全ての人に健康と福祉を」という項目が設けられていることから、世界的に見てウェルビーイングが注目されていると分かります。

ビジネス視点で見るウェルビーイングの5要素

ウェルビーイング 日本

では、ビジネスで考えたときのウェルビーイングを、ギャラップ社が定義する5つの要素に分けてご説明します。

Career well-being

仕事のキャリアだけでなく、家事・育児・勉強なども含めた仕事と私生活両方でのキャリア構築、つまりはワークライフバランスのことです。
日々の時間の使い方を知り改善したり、好きなことを仕事にしたりすることでキャリアへの満足感が生まれます。

Social well-being

人間関係に対しての幸福であり、ビジネスの場で言えば上司や部下、同僚との関係性についてのことです。
信頼でき、愛情を持てる深い人間関係を構築できれば社会生活はより充実します。

Community well-being

自身の身近なコミュニティ、つまり居住地や家族、親戚、友人、学校などといった地域社会における幸福のことで、職場で言う会社や部署、取引先などが該当します。

Financial well-being

経済的な幸福のことです。
収入を得ている手段があるか、その額に納得しているのか、資産管理はできているのかといったように、自身の収支をしっかり管理することで経済的に健康になれます。

Physical well-being

心身の健康そのものを指し、仕事で言えばモチベーションも含まれます。
毎日思ったように行動できる、物事を成し遂げるだけのエネルギーがあるかが基準です。

健康経営につながるメリット

ウェルビーイング 使い方

ビジネスと密接に関わり、健康経営を考える上でも非常に有効なウェルビーイングですが、実践するメリットを改めて詳しく見ていきましょう。

社員のモチベーション向上

ある調査によると、日本は世界15カ国中で、職場のウェルビーイングへの満足度が最も低いという結果になってしまいました。
中でも仕事のモチベーションに関する要素が特に低く、「会社の将来が不安」「仕事に行きたくない」といった項目が他国と比べて悪い結果が出ています。
従業員の健康だけでなく、心の健康という意味で、組織として健全にやりがいを持って仕事をできるかが重要なポイントです。
例えばやりがいを可視化できる手段を作ることで企業は取り組み方が分かりやすくなるでしょう。
ウェルビーイングを整えることで、社員が心身ともにハツラツとし、意欲的に仕事ができる環境となります。

生産性の向上

ウェルビーイングが整い社員のモチベーションが上がるとどうなるか、仕事にも精が出るため生産性の向上が期待できます。
一人ひとり高い意欲で働くことで業務の質・量ともに向上するため、従来よりも短時間で多くの業務が捌けるでしょう。

離職率の低下

社員の意欲向上の効果として、離職率の低下も挙げられます。
転職が当たり前になった昨今において、その転職理由としてやはり給与や待遇など、何かしら会社への不満を抱くことによるモチベーション低下が多いのですが、「今のこの会社は働きがいがある」「ここで仕事をしていて楽しい」と思ってもらえれば当然離職の心配は減るでしょう。

EVP(従業員価値提案)の向上

離職率の低下と似ていますが、EVP(従業員価値提案)が向上すれば、既存の従業員の帰属意識や会社への満足度が高まるのに加え、求職者に対しての強いアピールポイントができます。
転職が増えることで人材の獲得競争が激しくなっている昨今では特に、健康経営に伴う働きやすさ向上が大きなポイントです。

企業の取り組み事例

ウェルビーイング 健康

最後に企業が取り組んでいるウェルビーイングの例をいくつかご紹介します。

イトーキ

健康経営に積極的に取り組んでいる企業の一つで、「従業員と家族が活き活きと仕事やプライベートに打ち込める健康」が目標です。

  • 高集中エリアや個室ブースを置き生産性向上を図るなどといった、ウェルビーイングを意識したオフィス設計
  • 12個のテーマに分けた健康経営の推進
  • 社員の意識といった無形のものから、実際の催し・会社設備といった有形のものまで幅広い施策
  • 会社独自の調査によるウェルビーイングの可視化

味の素

「味の素グループで働いていると、自然に健康になる」をテーマとして健康経営に取り組んでいます。

  • 従業員が各自健康データを管理するための専用ポータルを整備。
  • AI管理栄養士が従業員の健康をサポートする、スマートフォン用アプリを導入
  • 社員食堂との連動や、女性に特化した健康増進支援も実施
  • 禁煙や受動喫煙対策
  • 生活習慣病予防の取り組み

Google

デジタル機器への依存を防ぐために、「デジタルウェルビーイング」という取り組みを提唱しました。
デバイスの使用量をグラフ化して一目で分かるようにするアプリや、おやすみ時間モードで、夜間電源を切るタイミングを教えてくれるツールの開発をしています。
意識的にオフラインの生活を送ることで、デジタル機器やネット情報に左右されない自分らしい生活を確保できます。

まとめ

ウェルビーイング 心理学

一言で「幸福」といっても人それぞれ価値観は違いますし、多様化した現代社会において全員が幸福を実現することは非常に困難なのも事実でしょう。
心身ともに健康で、なおかつ仕事も充実しているとなると、勤める企業の差が如実に表れてしまいます。
ウェルフェア(福利厚生)の充実がウェルビーイング(幸福・働きがい)につながり、それを整えるのは企業の力です。
社員のモチベーションアップや生産性の向上、人材確保への貢献など、健康経営に直結するウェルビーイングの実現に向けて、ご紹介した企業事例も参考にできることから取り組んでいきましょう。

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