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  • 2022.08.05

メンタルヘルスと精神疾患の違いとは?こころの健康を保つために必要なメンタルヘルスケア

頭を抱える男性
目次

組織を健全かつ効率的に運営するために、従業員のメンタルヘルスケアは大切な要素です。近年、厚生労働省によりメンタルヘルスに関する定義付けや制度が導入されていますが、個人レベルでは浸透していません。今回はメンタルヘルスと精神疾患の違いや症状、考えられる原因、対処法のほか、会社でのメンタルヘルスケアについてご紹介します。

メンタルヘルスと精神疾患の違い

オフィス街を1人歩くビジネスパーソン
​​ メンタルヘルス不調によって引き起こされるうつ病や適応障害、睡眠障害などを総称して精神疾患といいます。混同されることが多いメンタルヘルス不調と精神疾患。メンタルヘルス不調は精神的健康が損なわれている状態をさします。ストレス過多に陥ることで現れる気分の落ち込みや物事を楽しめないといった精神状態、食欲がなかったり眠れなかったり疲れやすかったりする身体症状が代表的です。これらに診断名がつくことで精神疾患として認められます。

またストレス過多以外の原因も考えられるのが精神疾患です。脳の器質性や病態・症状によるもの、経過・予後期間に病気とみなすことができる症状も精神疾患と診断される可能性があります。2013年からは日本における4大疾病に精神疾患が加わり、現代社会で注目されるようになってきました。

不調の原因と精神疾患

思い悩んだ様子の女性
世界保健機関(WHO)はメンタルヘルスを次のように定義付けています。

メンタルヘルスとは、人が自身の能力を発揮し、日常生活におけるストレスに対処でき、生産的に働くことができ、かつ地域に貢献できるような満たされた状態(a state of well-being)である。

世界保健機関(WHO)

メンタルヘルスは健康状態を意識するばかりではありません。精神的・身体的に健康であることを前提に、自分の可能性を実現して職場や地域などのコミュニティに積極的に関われる状態をさします。しかしストレス社会と称される現代において、その実現が難しいこともあるでしょう。心身ともに健康でいきいきと暮らすために、メンタルヘルスとの向き合い方をご紹介します。

メンタルヘルス不調の原因

メンタルヘルス不調はストレス反応です。健康的なときと比べて精神的抵抗力が落ちているタイミングに、ストレスの影響を受けやすくなります。それは身体的な病気と同じです。ストレス源には騒音や天候などの環境的要因、睡眠不足や病気などの身体的要因、悩みや不安などの心理的な要因、人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなどの社会的要因などがあります。ストレス源からストレスを受けたとき、対応しようと精神的・身体的に抵抗するのが一般的です。しかし疲労や加齢、生活習慣の乱れなどから抵抗力が落ちた状態だと対応しきれないこともあります。その結果として引き起こされるのが、メンタルヘルス不調です。

メンタルヘルス不調によって引き起こされる精神疾患

厚生労働省は、国民の健康を保持するために広く継続的な医療を提供すべき疾病として、4大疾病をかかげました。がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病です。そこへ2011年に精神疾患が加えられ、5大疾病になりした。精神疾患は日本人にとって対処すべき重大な病気であるといえます。精神疾患にあたる代表的なものをご紹介しましょう。

うつ病

気分が落ちこんだり、好きなことが楽しめなくなったり、イライラしたりする抑うつ状態が続きます。不眠や集中力の欠如なども症状のひとつです。めまいや頭痛、耳鳴り、動悸(どうき)、食欲や性欲の減退といった身体的症状もあります。これらの症状が2週間以上続いた場合はうつ病かもしれません。特定の原因によって発症するわけではなく、性格や環境、遺伝、神経伝達物質のバランスの乱れなど、さまざまな要因が考えられます。治療方法は要因や症状によってさまざまです。休養や環境調整、薬物治療、精神療法などを組み合わせて対処します。

パニック障害・不安障害

日常生活において、突然パニック発作を引き起こすのがパニック障害・不安障害です。動悸(どうき)やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった症状があります。突然症状が現れるためいつ発作が起こるかわからない不安から精神的に不安定になり、引きこもりや人とのコミュニケーションを控えるといった行動につながるのが特徴です。過労や睡眠不足、風邪などの身体的不調やストレスなどの精神的不調がパニック発作の引き金になります。また精神的、環境的要因のほかにも指摘されているのが、脳神経機能の異常です。治療は薬物療法と精神療法を併用して行います。再発の可能性があるため、改善後も半年から1年ほどは様子を見て、周囲の人たちもゆっくり見守るよう協力を得ることが大切です。

適応障害

抑うつ気分や不安感、怒り、神経過敏、めまいや発汗がみられます。また無断欠勤や危険運転、けんか、暴飲暴食などが適応障害の症状の場合もあるので、急にこれらの行動が現れたら注意が必要です。抑うつ気分などの症状からうつ病と間違われやすいですが、適応障害は原因を遠ざけることで落ち着きます。その原因は生活や環境の変化などです。たとえば仕事が原因で適応障害を起こしている人は、休日は元気に遊びに行くけれど平日は抑うつ気分やめまい、発汗が現れ仕事が手につかないといったケースがあります。適応障害の治療法には、ストレス原因から離れることが1番です。そのためにはストレスを感じる状況や出来事を明らかにする必要があります。

睡眠障害

不眠や活動時間中の耐えられないほどの眠気、睡眠中の病的な行動など、睡眠に関わる病気です。十分な睡眠時間にも関わらず寝足りない、睡眠中何度も目が覚める、ひどいいびきなどといった症状が1カ月以上続く場合は睡眠障害の可能性があります。睡眠障害は身体的な健康を損なったり、別の精神疾患につながったりする恐れがあるので注意が必要です。生活習慣の乱れや精神疾患、薬の副作用などの原因が考えられます。軽度の不眠であれば生活習慣を改善することで改善される場合もあるので、まずは原因を特定することが大切です。

依存症

アルコールや薬物など特定の物質や行為に執着し、頭ではやめなければと思っているのにやめられない、自己コントロールを失った状態です。依存している物質や行為によってドーパミンという快楽物質が分泌され、快感や喜びを感じます。ドーパミンは分泌を繰り返すごとに得られる快感や喜びが低くなるため、より物質や行為に執着するようになることで悪循環に陥るのが依存症の特徴です。本人の意思だけで治療することは難しいため、専門機関による入院治療や仲間との共同生活が推奨されます。

職場で起きるメンタルヘルス不調は、労働環境や人間関係のトラブルが原因

職場で頭を抱えるビジネスウーマン
刺激によるストレスに対応しきれず引き起こされるメンタルヘルス不調。職場ではさまざまな精神的負荷が考えられます。昇進や昇格、配置転換などによる役割や地位の変化は大きなストレスとなるでしょう。上司や部下との対立、パワハラ・セクハラ・モラハラといったハラスメントもストレス源のひとつです。長時間労働や人事異動など仕事の質や量の変化は身体的負担ばかりでなく、精神的にも大きな負担となっているかもしれません。

職場でのケア

清々しい表情のビジネスマンに後ろ姿


ストレス発生の可能性が多くある職場において、その予防や対処が大切です。精神的健康状態を整えることはもちろん、メンタルヘルス不調の予防を含めた健康な職場づくりが求められます。予防から対応、治療後のケアまで、幅広い取り組みをみていきましょう。

メンタルヘルスケアにおける3段階

2015年に厚生労働省が労働者の心の健康の保持増進のための指針(改正)を公表しました。そのなかにはメンタルヘルスケアのための3段階が示されています。

1次予防|未然に防ぐ

メンタルヘルス不調を起こさないよう、未然に防ぐことが大切です。ストレスチェック制度を導入してストレスに気付く機会を設けたり、セルフモチベーションコントロール研修を行ってストレスと向き合う環境を整えたりすることで、メンタルヘルスケアに積極的になれるでしょう。体の健康と比ベて精神面の健康は自分で気付きにくいので、自分のストレスに気付けるようサポートすると効果的です。

2次予防|早期発見

不調がみられる場合には、早期発見によって適切に対応します。まずは原因を明確にすることが大切です。原因と症状に向き合ってなるべく早い段階で対応することで、早期回復の可能性が高くなります。上司や同僚、産業医に相談して現状を整理したり、配置転換や職場環境、労働条件を見直したりすることで悪化を防ぎましょう。

3次予防|職場復帰支援

メンタルヘルス不調は休職などでストレス原因から遠ざけると、症状が回復する場合があります。無理せずゆっくり休みましょう。その後、職場復帰の際には企業がしっかりとサポート体制を整えることが大切です。休職した従業員は職場復帰に焦りや不安を抱えています。精神的フォローや職場環境・労働条件を見直すことで、安心して職場に戻れるでしょう。休職後はメンタルヘルス不調の再発や離職のリスクが高くなります。それらを防ぐためにも、職場復帰後の支援が大切です。

メンタルヘルスの4つのケア

3つの予防段階を念頭に、以下の4つのケアを行います。

セルフケア

従業員が自らのメンタルヘルスに気を配り、ストレスを予防したり対処したりします。セルフケアを推進するために、情報を提供し教育研修などを行ってサポートすると効果的です。社内に専門窓口を設置したり定期的に面談を行なったりすることで、相談しやすい環境を整える事例もあります。またストレスチェック制度を導入すると、自身のストレス状況を認識でき、セルフケアにつながるでしょう。

ラインによるケア

管理監督者を置いて職場のストレス要因の把握・改善に努めます。職場環境を俯瞰してみることでメンタルヘルス不調の拡大と悪化を防ぐねらいです。管理監督者は従業員の相談に応じて職場環境の改善や指導などの対策を講じます。この場合、企業はラインによるケアが適切に実施されるよう監督者に情報を提供したり教育研修を行うことが大切です。

事業場内の産業保険スタッフなどによるケア

職場内に産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフを配置することで、従業員一人ひとりや管理監督者をサポートします。いつでも相談できる窓口があると、メンタルヘルスケアも前向きに取り組めるでしょう。また精神的健康に関する教育研修を企画したり職場内の制度や体制を見直したりすることで、職場内環境を整える役割もあります。

事業場外資源によるケア

職場外の専門知識をもつ機関やサービスを活用する方法です。プライバシーや秘密保持の観点から職場内では気軽に相談できないという従業員もいるでしょう。また企業全体のメンタルヘルス課題を第三者に診断してもらうのも効果的です。職場内では解決できない問題に外部の支援によってアプローチします。

メンタルヘルスケアの事例

清々しい表情で空を見上げるビジネスウーマン
メンタルヘルス不調の原因はさまざまで、対策も幅広くあります。なかでも労働者の心の健康の保持増進のための指針(改正)では以下の4つが推奨されています。

ストレスチェック制度

アンケート形式のストレスチェックを行なって、ストレスレベルを判定します。結果に基づいて面談や指導を行うほか、集団ごとの集計・分析も可能です。結果が通知されることで自身が感じるストレスに気付き、不調の対処や予防につなげられます。また集団集計・分析によって職場のデータを得ることで、職場環境の改善に役立つでしょう。

産業保健医や産業保健の専門スタッフとの連携

従業員の健康を管理する産業医や産業保健スタッフと連携することで、効果的なメンタルヘルスケアが可能です。労働安全衛生法では、労働者50人以上の事業場には産業医を選任することが義務付けられています。産業医の役割は、健康診断の実施や結果への対処、長時間労働者の面接指導やストレスチェックなどです。病気の診断や薬の処方は行いませんが、適切な医療機関を紹介したり休職者の復職時期を判断したりして従業員の精神的健康を支えます。

従業員支援プログラム

企業のメンタルヘルス管理体制をサポートするのが従業員支援プログラムです。英語表記からEAPと略され、その手法はさまざまです。産業医や産業保健スタッフといった職場内に配置される専門家を内部EAP、専門知識をもつ外部機関・サービスを外部EAPといいます。特に外部EAPはストレスチェックの実施から復職支援プログラムの提供まで幅広いサービスを提供可能です。効果的に活用することで、職場内のメンタルヘルスケアを効率的に推進できます。

ストレスマネジメント研修などの教育活動

メンタルヘルスケアは個人が自主的に行うのが難しいこともあるため、必要な知識や情報を入手し、定期的に意識して行うことが大切です。ストレスマネジメント研修などの教育活動によって知識・情報面をサポートできます。外部専門機関が研修として実施している場合もあり、小規模事業場でも取り入れやすいでしょう。メンタルヘルスの大切さや基本的な知識を得ることで、メンタルヘルスケアの意識を向上させ、メンタルヘルス不調の予防にもつながります。

予防のためにできること

重要なのは、自分で不調に気付くことです。ストレスが高まったり蓄積したりすると、身体・精神・行動面にさまざまな変化が現れます。疲れがとれない、体の調子が悪い、うまく眠れないといった身体的な不調は気付きやすいかもしれません。気分が晴れない、イライラする、悲観的になる、攻撃的になるといった精神的に不調状態は、自分の状況を定期的に振り返ることで気付く場合があります。引きこもりがちになっていたり食生活が乱れていたり、喫煙や飲酒量が増えたりする行動面の不調は、家族や友人、恋人などの信頼できる第三者が気付いてくれるかもしれません。生活のなかの小さな変化を見逃さないようにしましょう。

精神的な不調に気付いたら、誰かに相談してみてください。職場のストレスを同僚や上司、産業保健スタッフに相談するのが難しい場合には、家族や友人、恋人に相談してみます。専門知識のある医師やカウンセラーに相談するのもよいでしょう。誰かに話すことで気持ちが整理され、前を向けるようになるかもしれません。自分1人で解決しようとせず、周囲の人を頼ることが大切です。

健康経営とメンタルヘルス

従業員が健康に生き生きと働くことで、経営面でも成果を期待する健康経営。身体的健康ばかりでなく精神的な健康にも配慮することが重要です。症状は人によって異なるので、個人にあわせた対応策が求められます。厚生労働省が推進するメンタルヘルスケアの方法を取り入れる企業も多くあり、取り組みやすい対策といえるでしょう。メンタルヘルス研修を実施したりノー残業デーをつくって職場環境を整えたりするなど、職場や環境にあわせた対策を検討してみてください。

自らのメンタルヘルスと向き合って、健やかな毎日を送ろう


今回はメンタルヘルスと精神疾患の違いやその原因、症状、対処法や会社でのメンタルヘルスケアについてご紹介しました。メンタルヘルス対策は生活の質を向上させることはもちろん、企業において従業員の働きやすい環境整備につながります。精神的健康が保証されることで、生産性や企業価値も向上するでしょう。健康経営の観点でも、従業員一人ひとりの精神的な健康を考えることが求められています。近年注目されるメンタルヘルスケアには導入事例が数多くあるので、まずはご紹介した取り組み例を参考にメンタルヘルスと向き合ってみてはいかがでしょう。

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