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  • 2021.03.04 (最終更新日:2022.04.06)

フレックスタイム制とは何?メリットデメリットや導入状況を知る方法

目次

フレックスタイム制とは何?

時間 フレックスタイム制は、どんな構造でどんな特徴があるのでしょうか?

フレックスタイム制とは

一定期間においてあらかじめ決められた総労働時間の範囲内で、労働者が自由に始業・終業の時間を決められる制度のことをフレックスタイム制といいます。フレックスタイム制を導入していない通常の働き方では9時から17時まで、と始業から終業までの時間が決まっていますよね。フレックスタイム制では勤務時間が決められていないので、労働者が自身の事情を考慮しながら働けるのです。仕事とプライベートの調和が図りやすいので、フレックスタイム制を取り入れることによって労働者のワークライフバランスを実現しようと考える企業が多くなりました。

フレックスタイム制の構造を解説

フレックスタイム制の構造を解説するためには「コアタイム」と「フレキシブルタイム」について、説明しておく必要があります。勤務が必須の時間帯のことをコアタイムというのに対し、その時間帯の中なら出社・退社時間は自由だというのがフレキシブルタイムです。コアタイムが必ず必要だというわけではありませんので、労働時間が全部フレキシブルタイムでも問題はありません。たとえば休憩の前後をコアタイムが挟み、コアタイムの前後をフレキシブルタイムが挟む導入例があります。

フレックスタイム制にはどんな特徴があるのか

大きな特徴として挙がるのが、出社・退社時間を労働者が決められる点です。出社時間が決まっていないので、育児や介護など家庭との両立がしやすくなります。お伝えした通り企業によってコアタイムを設置しており、その時間帯は出社が必須なこともあるのです。11時から14時までの間がその企業のコアタイムだとしたら、11時を過ぎて出社することはできないわけですね。反対に、14時より以前に退社することも不可能です。フレキシブルタイムも、労働できる時間帯は24時間いつでも自由というわけではありません。なぜなら、労使協定で時間帯が定められているからです。出社時間が何時から何時までの間だと決まっていたら、その範囲内で出社時間を決める必要があります。

「フレックスタイム制なら、残業代をごまかされるのではないだろうか。」と不安に感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、制度を理由に残業代が支払われないことはありませんので安心してください。残業代のルールが通常の働き方とフレックスタイム制とでは異なるので、以下を参考にしてくださいね。
  • 総所定労働時間は超えているものの、法定労働時間内なら残業代は1.0倍
  • 法定労働時間を超えて働いた場合の残業代は1.25倍
法定労働時間は1日8時間、一週間では40時間です。通常の働き方なら、この時間を超えて働くと残業の扱いになります。フレックスタイム制では前もって決まっている労働時間内に収まっているのなら、1日8時間、一週間で40時間を超えていても残業扱いにならないのです。

全労働者がフレックスタイム制を理解することが大切

フレックスタイム制にはメリットが多い一方で、コミュニケーションがスムーズに取れなかったり勤怠管理が複雑になったりと、デメリットもあります。せっかくフレックスタイム制を導入したのに、上手に管理しきれなくなって廃止してしまう企業もあるのです。フレックスタイム制が上手に回る企業と、そうではない企業の違いはなんでしょうか?それは、全労働者が自社の制度について理解しているかどうかです。フレックスタイム制は出社や退社の時間が自由になったという、単純なものではありません。生産性の向上が求められていることを理解して、効率よく働く必要があります。全労働者がこれまでの働き方とは異なることも理解して、自分に合っているかどうか見極めることが大切です。

制度のメリット・デメリットを理解しよう

出社

フレックスタイム制のメリット

この制度のメリット1つ目は、通勤ラッシュを避けられることです。通勤ラッシュがストレスになることは、多くの人が実感していることと思います。実際にどれぐらいのストレスなのかを知っている人は少ないのではないでしょうか?ある研究で、通勤ラッシュは戦場以上のストレスを受けているとの結果になったというから、驚きです。戦場のパイロットや機動隊員は、目の前でストレスを受ける出来事が発生しても、基本的に対策が取れます。しかし通勤ラッシュは、電車に乗ってしまえば何の対策もできません。両者の違いを決定づけるポイントは、自分で対策が取れるかどうかなのです。

通勤ラッシュを避けることができれば、人の少ない座席にゆったりと座れます。また、座りながら心が落ち着く音楽を聴いたり読書をしたりできるので、有効的に通勤時間を使えるのです。車で通勤している場合でも、出社・退社の時間に焦る必要がなくなります。通勤によるストレスの軽減になり、勤務中の集中力が増すことに繋がるのです。

2つ目は、日常生活におけるストレスが減ること。子どもの送り迎えに合わせて慌ただしい朝を送っていたり、決まった時間に起床することが苦痛だったり。日常生活で当たり前に行っていることの中に、ストレスの原因は潜んでいます。フレックスタイム制で時間的な余裕ができることにより、このようなストレスを減らせるのです。3つ目のメリットは、労働者が勤務時間を決められるのでワークライフバランスが実現できることにあります。子どもの送り迎えがしやすくなるだけに限らず、役所や銀行など開いている時間の決まっている施設に行けるメリットもありますよ。

フレックスタイム制のデメリット

フレックスタイム制のデメリットに、テレワークの仕事と同じように自己管理が必要なことがあります。出社時間を遅らせた場合夜に集中力がなくなってしまうなど、仕事の効率低下に繋がる可能性があるのです。労働者個人が時間の管理を意識することが大切になります。他の人とのコミュニケーションを要する仕事内容の場合、お互いの連絡時間のタイミングがずれ、進捗がスムーズにいかなくなる可能性があるのです。自社でフレックスタイムが導入される前にこのような可能性をあらかじめ考えておき、対策を練ることが大事なのですね。また、社外との連絡が頻繁な仕事でフレックスタイム制を導入すると、取引先との打ち合わせに遅延する可能性が出てきます。就業時間が決まっていたときはすぐに対応できたのに、労働者の出社時間が自由なために遅れてしまうのです。これは企業側だけではなく、労働者にとってもデメリットとなります。

企業の導入状況を知るためには

出社時間 気になる企業のフレックスタイム制の導入状況を知る方法はあるのでしょうか?

面接や説明会でフレックスタイム制について聞く

フレックスタイム制の規定は就業規則に記載する必要があります。しかしフレックスタイム制の詳細情報を求人情報に記載する義務はありません。つまり求人票を見ただけで、詳細な導入状況を労働者が把握するのは難しいのです。詳細な導入状況を知るために、面接や説明会で積極的に尋ねることが大切。とはいうものの、あまり堂々と制度について聞いてしまうと「弊社を志望した理由は制度ではないのか?」と思われてしまう可能性があります。建前とはいえ、自分が企業で働く姿を想像するため、とのニュアンスで尋ねるのがおすすめです。フレックスタイム制の企業に入社するうえで注意点があります。試用期間中はフレックスタイム制が適用されない企業があること。気になる場合は、研修期間がどれぐらいあって、その間の勤務時間はどうなるのか?と尋ねてください。

OB訪問でフレックスタイム制について聞く

フレックスタイム制がどのように運用されているか、ということまで知るためには現場で働く人に尋ねるのがおすすめです。自分の希望がどれぐらい反映されるのか、対象者はどのような人なのかをOB訪問の機会に聞いてください。このとき制度の実態だけに限らず、「その企業や部署で本人が働きやすいと感じているのかどうか」についてまで聞けると良いですね。同じ企業でも部署や担当している仕事によって制度の評価が変わることがあるので、注意点として覚えておいてください。話を聞く人の仕事内容まで理解を深めれば、この制度が自分に向いているのかどうかを見極めるときのポイントになります。

健康経営について理解を深めるのもおすすめ

企業がフレックスタイム制を導入しているかどうか知るために、健康経営について理解を深めるのもおすすめです。健康経営を簡単に解説すると、労働者の健康問題を自社の課題だと捉える考え方。優良な健康経営を行っている企業を「健康経営優良法人」として認定する制度もあります。近年ワークライフバランスの実現が重視されるようになり、健康経営の一環としてフレックスタイム制を導入する企業も多くなりました。健康経営を行う企業は自社の公式Webサイトにて取り組んでいる内容を公表しているので、誰でも自由に閲覧できるのです。公式Webサイトを閲覧すれば、その企業の健康経営に取り組む姿勢が分かるので、就職・転職先を選ぶ1つの目安になります。
当コラムでは健康経営について情報発信しています。以下のコラムでは、健康経営優良法人に認定されるための項目が確認できるので、合わせてご覧ください。

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フレックスタイム制と似ている?裁量労働制とは

タイム

裁量労働制とはどういう働き方のことか

労働時間の長さに関わらず、定められた時間を働いたものと考えられる制度を裁量労働制と言います。たとえば企業と労働者の間で「1日8時間働く」と決めたとしましょう。決められた労働日に10時間働いたとしても、8時間働いたことになるわけです。この働き方に時間外労働との考え方はないため、労働者を保護するべく適用職種や労働時間に関する取り決めがあるのです。労働者側からするとデメリットばかりのように感じますが、この制度にメリットはあるのでしょうか。

求められた結果さえ出せば働く時間が自由なので、裁量労働制には定時という考え方もありません。ですから、仕事を遂行するにあたって進め方や仕事にかける時間を、労働者の思い通りにすることができるメリットがあります。8時間でやるべき業務を6時間で終わらせれば、8時間分の給料がもらえるのです。労働基準法によって適用される仕事が決められているので、どんな労働者にも適用される制度ではありません。適用範囲には2種類の区別があり、「専門業務型」と「企画業務型」があります。専門業務型は、時間配分や進捗の管理を細かく指示するのが困難な業務が該当するのです。たとえば、デザイナーやディレクターなど。企画業務型は企画立案や調査など、企業の中枢を受け持つ部門に適用されます。

なぜ、裁量労働制が適用されるのでしょうか。適用される理由は、労働者のやる気を出させるためだと言われているのです。労働者は自由な時間の使い方ができるので、誰かに急かされることなく自分の速さで仕事を進められます。決められた時間より早く仕事を終わらせることによって、やる気の向上に繋がるのです。

フレックスタイム制の導入事例を紹介

会社 ここでは、フレックスタイム制の導入事例を紹介します。

ワークライフバランス実現のために導入

ある企業では、労働者への働き方に対して柔軟に対応することは、自社の利益に繋がると考えています。全労働者が健康に働く環境を作るため、ワークライフバランス実現に向けての取り組みを活動的に行っているのです。取り組みのうちの1つが、フレックスタイム制。コアタイムを含むものだけに限らず、コアタイムを含まないフレックスタイム制も取り入れる柔軟さです。労働者のワークライフバランス実現のために考えたことが評価されて、「プラチナくるみん」の認定を受けています。また、同社では定年後再雇用する制度や、在宅勤務制度も設けているのです。ワークライフバランスに配慮している企業は、独自の福利厚生を取り入れていることも多くあります。

過度な労働を軽減するために導入

また別の企業では過度な労働をする労働者が多いことを問題視し、フレックスタイム制度や記念日の休暇制度を取り入れています。過度な労働をしやすい若い労働者だけではなく中高年層の労働者にも注目し、家族と過ごす時間が大事だと考えているのです。家族と過ごす時間の大切さと仕事の大切さは分けて考えているため、労働者には仕事で結果を出すことも求められます。その結果、過度な労働をする労働者が減り、業績の向上に繋がったのです。

介護の負担を軽減するために導入

高齢化が進む世の中で介護をする労働者が増加するものと考えて、フレックスタイム制度を導入した企業があります。全員に出社義務がある「コアタイム」の時間を短縮したり制度の利用で期間を定めないようにしたりと、フレックスタイム導入の先駆けとなっているのです。介護は育児とは違い先が見えず不安になるものです。制度の利用に期間を定めないことによって、労働者の不安を払拭します。

まとめ

フレックスタイム制や、それに似た制度「裁量労働制」について解説いたしました。
  • フレックスタイム制には「コアタイム」と「フレキシブルタイム」という時間がある
  • フレックスタイム制の残業代の計算方法は、通常勤務のときとは異なる
  • 全労働者がフレックスタイム制を理解することが重要
  • フレックスタイム制は良い点ばかりあるわけではないので、悪い点にも目を向けよう
  • 制度に興味があるのなら、企業の導入状況を知る方法を覚えておこう
  • フレックスタイム制と間違われがちな、裁量労働制という制度がある
  • さまざまな企業の導入事例を調べてみよう
「フレックスタイム制について説明して欲しい」と言われたときに、フレキシブルタイムやデメリットまで説明できる人は少ないのではないでしょうか。2種類の時間や残業時間の考え方など、ややこしい部分が多いですよね。しかし制度を導入している企業への就職を考えているのなら、覚えておきたいことです。この制度が導入される目的をきちんと理解し、企業が求める結果が出せるようになるといいですね。
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