• 健康経営
  • 2021.04.22 (最終更新日:2022.04.06)

保健師が働く場所とは。|保健師になるために必要な情報を解説

目次

保健師が働く場所や労働環境とは

保健師 病院

保健師が働く場所とは

保健師の働く場所は役所や市区町村の保健センター、保健所、医療機関、介護施設、学校などがあります。それぞれの市区町村に設置できる場所が保険センターで、住民の健康作りが目的です。所長に医師を配置する義務はなく、保健師を中心として栄養士や看護師、助産師などと地域に関する活動を行います。保健センターは保健所と比較すると担当できる範囲が狭くなるのが特徴。そのかわり、1人1人の住民に丁寧なケアができるのです。保険指導を地域住民に対して行ったり、訪問指導を妊婦や乳幼児のいる家庭に対して行ったりします。その他の業務としては医療福祉施設の紹介や予防接種のサポート、電話相談などがあるのです。

法的に定められた場所だけに設置可能なのが、保健所になります。所長は原則医師でなくてはならず、医師以外のさまざまな分野の専門家も集まるのです。たとえば、薬剤師や臨床検査技師、獣医師などがいます。臨床検査技師は、医療に関係のあるさまざまな検査を行う仕事です。臨床検査技師の仕事内容には、患者の身体から採取した検体を検査する「検体検査」、患者の身体を直接検査する「生体検査」などがあります。保健所での業務は、結核患者や障がい者などに対する保険サービスや感染症に対するリスクマネジメント、保健医療に対するシステムの整備などです。これから発生する課題を見極めて予防も行います。

保健師が働く場所として健診センターや病院、クリニックなどの医療機関もあります。医療機関での保健師は患者さんの生活指導や予防接種のサポートだけに限らず、病院にいるスタッフの健康管理まで行うのです。病院では、入院場所がある大きな病院で働くことが多くなります。第一次予防が重視されている近年、医師と保健師は同じ職場にいながらも役割が分担されるようになっているのです。

介護施設での保健師の主な役割は、施設の利用者が要介護状態にならないようにすることです。そのため保健師が働く職場は介護度の高い利用者が使う施設ではなく、介護度が低いと言える利用者が使う施設が多くなります。利用者個人の健康状態を管理するほか、施設内での感染症予防も大切な業務です。

保健師が働く場所には、学校の医務室や保健室などもあります。小中学校・高校・大学などで病人が出たときの応急処置をしたり、校内で発生した揉め事に対して教師とは異なる視点で解決を図ったりするのです。大学では、教師からのハラスメントやホームシックになった学生のケアなどの仕事もあります。精神面のケアとして、障がいを持って周囲に溶け込めない生徒の対応やいじめによる不登校がある生徒のケアも行うのです。学校により、養護教諭の免許状を所持している養護教諭が学校保健師の業務をすることもあります。

どんな労働環境で働くのか

保健師の労働環境は、職場によって異なります。公務員として働くのなら、深夜までの残業や休日出勤が必要な例はほとんどないと考えられるのです。それは学校保健師にも言えることで、勤務時間終了後に長時間残業があることは少ないと言われています。企業が職場となる産業保健師も一般職員とは違う業務を担当するので、長時間の残業になることはほとんどないでしょう。これに対して、夜間の勤務や残業が発生する可能性のある例は、病院等で看護師業務を兼務している場合です。ほとんどの保健師が働く時間は日中なうえ、有休もとりやすいですからあまり長時間の残業を心配しなくてもいいのではないでしょうか。

保健師の仕事内容とは

保健師の大きな役目は、保険指導をすることです。たとえば健康診断を受けた後の人に、心配ごとや不便なことはないかと相談に乗ります。個人へのアドバイスや健康相談に乗る以外に、地域全体の健康を図ることも保健師の役割です。日本社会が抱える健康に対する課題は数多く、生活習慣病やメンタルヘルス対策など、多岐に渡ります。健康の課題に取り組んで、地域住民が健康な生活を送れるように努めるのです。

保健師と看護師の違いは

保健師が保険指導を行うのに対して、看護師は治療を中心とした業務を行います。病気やけがをする可能性のある人に対して指導を行うのが、保健師の仕事です。これに対して看護師は、病気やけがをしてしまった人が仕事の対象になります。また、両者は取得している資格にも違いがあるのです。保健師になるには、大学や短大などで看護を学んで看護師の資格を得た後、保健師国家試験の受験資格を得る必要があります。また、保健師の資格取得の必須条件として、平成19年4月に看護師の資格が加わりました。看護師国家試験に受からなければ、保健師の資格を取得できないのです。そのため保健師は看護師の上位に当たる資格を持っていると言えます。

保健師になるメリット・向いている人とは

保健師

保健師になるメリットとは

保健師になる1番のメリットは、仕事で予防医療に関われることだと言えます。予防医療は病気の治療とは異なり、成果が分かりにくいものです。しかしたくさんの人が安心して毎日を暮らせる状況を提供しているという点で、やりがいを感じられます。お伝えした通り活躍の場が幅広いことも、保健師のメリットです。近年は健康に暮らすことに注目が集まっているため、今後も保健師の需要が高まると考えられます。そのため、自分が興味のある内容の仕事がある職場を選ぶこともできるのです。若い人の予防医療に興味があるのなら学校に勤務することもできますし、高齢者の健康維持に興味があるのなら、高齢者向けの施設に勤務することもできます。感染症やメンタルヘルス不調の対策など、興味のある専門分野を選べるのも、保健師のメリットなのです。看護師と比較して保健師は離職率が低く、安定性が高い仕事だと言えます。公務員として行政機関に勤める人や、産業保健師として企業に勤める人もいるので、保健師は長期的に仕事がしやすい環境です。
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保健師に向いている人とは

明るい人柄の持ち主や子どもが好きな人、観察力のある人が保健師に向いていると言えます。職場にもよりますが、保健師は高齢者から赤ちゃんまでさまざまな人と関わる仕事です。そのため明るくどんな人とも平等にコミュニケーションが取れる、快活さのある人が保健師に向いています。相談者の中にはほかの人に言いにくい悩みを持っている人も多いので、そのような人たちと真摯に向き合って心を開いてもらえるコミュニケーション力が必要です。赤ちゃんの発達相談や健診の業務も多いので、子どもが好きな人も向いていると言えます。どんな時でも明るい笑顔で子どもと関わり、緊張をほぐすことができれば、お母さんの安心にも繋がるのです。また、口頭で体の異常を伝えにくい利用者もいるので、するどい観察力が求められます。利用者の細やかな体や心の変化を敏感に感じ取る能力があれば、予防医療という分野で役に立てるのです。

保健師のやりがいや大変なこととは

保健師 仕事 どんな仕事にも良い面と悪い面があります。ここでは、保健師の仕事が人気な理由や、やりがい、大変なことを解説しました。

保健師の仕事はなぜ人気なのか

保健師は2007年以降、年々増加傾向となっています。求職者数は求人数より多いことから、就職が簡単ではないことが分かりますね。活動の幅が広く、安定性があることや社会貢献度の高さが人気の理由ですが、安定性が高いということは離職率が低いことの裏返しでもあります。比較的休みを取りやすいので、生活習慣を整えたりワークライフバランスの実現がしやすかったりするところも人気の理由です。

保健師の仕事のやりがい

現場で働く人の声を直接聞けることに、やりがいを感じる保健師が多いです。労働環境の改善を目指して人々と関わることは、モチベーションの向上に繋がります。保健師の中には、起業をして独自の方法で人々の健康維持に貢献している人もいるのです。そのような保健師は健康診断を受けやすくするために、スキルや知識を身に付けて健康診断事業を行う会社を運営しています。保健師が起業をした会社のおかげで、健康診断を受けられるようになった人がおり、病気の早期発見ができた例もあるのです。保健師の仕事に就いて社会貢献をしたかった人なら、まさに望んでいた仕事ができた例だと言えますね。

保健師は看護師とは異なり、病気の治療が必要のない人へ、予防医療の大切さを説明する仕事です。そのため保健師が関わる人の中には、「自分は健康だから予防医療は必要がない」と考える人もいます。病気を予防するために必要なことを話しても、利用者に聞き流されることも多いのです。保健師の仕事の難しい部分でもありますが、難しいからこそ達成したときの喜びは大きくなります。根気強く病気の予防について話せば、生活習慣を考え直してくれる人もいるのです。

保健師は赤ちゃんから高齢者まで関わります。それはつまり、人の一生に関わる仕事だと言うこと。赤ちゃんの発育から高齢者の介護現場まで、人がいるところには保健師がいるのです。人々の笑顔を守りながら一生に関わることに対して、やりがいを感じる保健師は多くいます。

子どもの成長に関われることも、保健師のやりがいの1つです。保健師は、定期的に赤ちゃんが誕生した家庭を訪問します。そこでは赤ちゃんの発育だけに限らず母体の健康やメンタル面を確認し、必要な場合はアドバイスやケアをするのです。子育てに慣れない母親はメンタルヘルス不調を起こすこともありますし、子どもの発育が心配になることもあります。子育てをする母親にアドバイスやケアをできることも、保健師の仕事のやりがいです。

保健師の仕事で大変なこと

保健師の仕事で大変だと感じるのは、どんなことでしょうか。人々と直接関わる、やりがいを感じられる仕事ばかりではありません。雑務や事務仕事もたくさんあるので、仕事中はずっと忙しいのが大変なところです。そんな中でも医療や看護の技術は日々進歩しているので、積極的に学ぶ姿勢がなければ知識の更新ができません。毎日の業務が忙しい中で積極的に学ぶのは、大変なことです。保健師は仕事内容が幅広いので、どの仕事も中途半端になってしまうことがあります。働きやすい職場作りや、地域住民の健康維持に貢献したいと強く感じている人ほど、仕事内容とのギャップに悩みやすいです。

保健師になるための勉強時間や方法とは

勉強

保健師国家試験の合格率や難易度について

保健師になるには保健師国家試験に合格する必要がありますが、この試験の合格率はどれぐらいなのでしょうか。厚生労働省が発表している合格発表情報によると、令和3年に行われた第107回保健師の合格率は94.3%となっています。保健師国家試験の合格率の高さから見ても、難易度はあまり高くないと考えられるのです。しかし難易度が高いのは保健師国家試験よりも受験資格を得ることなので、決して簡単な資格試験ではありません。

参照:外部リンク
厚生労働省 第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表

受験する学校をなるべく早く決める

効率的に学ぶことができるので、どの学校に通いたいのかを早く決めることがおすすめです。大学の場合、私立か国公立かで受験科目が変わるので注意してください。国公立の大学を志望していた保健師は、幅広い科目を学びます。大学だけに限らず高校の受験生の時期も、毎日およそ8時間勉強する人も少なくありません。日々の授業が基礎となる受験勉強では、普段の授業をよく聞くことも大切になります。

基礎学習は問題集1冊で行う

「基礎学力を身につけてから、志望校の過去問を解く」という勉強方法は、保健師を志望している人にも向いているといえます。過去問はオープンキャンパスや書店で手に入るので、その内容を参考にしながら勉強をするのです。大学によって入学試験が異なり、選択式や記述式などがあるので、過去問で勉強する大事さがよく分かります。基礎学力を身につけるときは、塾や高校指定の問題集1冊で行いましょう。幅広い問題集を利用するより同じ問題を何度も解くことで、基礎を固められるので応用もできるようになります。模試は看護大学に特化したものや大手予備校のものを両方受けることで、自分の実力を測ることができるのです。

時間の管理に苦労する人が多い

保健師になるには看護師と保健師の勉強をする必要があるので、集中力がどちらかに偏ってしまうことに苦労しがちです。ある保健師の方は保健師の勉強が進まなければ看護師の勉強の進行も乱れてしまうので、そのことが大変だったと言います。勉強を同時にするのは難しいので看護師の過去問をきちんとやり込んでから自信をつけ、保健師の勉強に取りかかったようです。苦手な問題が減ると心に余裕ができるので、保健師の対策問題にも集中できます。

健康経営の取り組みで活躍する保健師

保健師 現在は、従業員が個人で健康管理を行う時代から、企業が健康管理を担う時代へ変わりつつあります。健康経営は経営戦略の一環として、企業が従業員の健康管理を行うものです。健康経営は表面上の取り組みではなく、戦略を立てて根本的に改善を図る企業もあります。優良な健康経営を行う企業を顕彰する制度がありますが、これを「健康経営優良法人認定制度」と言って、経済産業省が運営しているのです。企業で働く産業保健師は、健康診断結果の確認を行ったり従業員が働きやすい職場作りを行ったりします。企業の担当者と一緒に衛生講和のテーマを調節するような仕事もあるのです。産業保健師は従業員の働きやすさ実現に努めながら、専門的に身近な医療に携わります。
当コラムでは、健康経営について情報発信をしています。企業で働く従業員にとってストレスチェックが身近なものになりましたが、その意味に疑問を抱く人も多いです。以下のコラムも合わせてご覧ください。

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まとめ

保健師は地域住民や企業で働く従業員の予防医療に努める、なくてはならない職業です。また、社会貢献度の高さが人気の秘密だということも分かりました。地域住民や企業の役に立つことに興味があるのなら、保健師を目指してみませんか。直接利用者の笑顔を見ることができるので、やりがいを感じるかもしれません。
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