• 健康経営アドバイザー
  • 2021.12.27 (最終更新日:2022.04.06)

企業ができる「月経困難症」の対策とは?健康経営との関連性を解説

目次

女性特有の月経随半症状による労働損失4,911億円!!

リラクセーションルーム 働く女性の半数近くが職場で困った経験をしているのが「月経困難症」です。
月経による痛みにより仕事に影響し、パフォーマンスが落ちていると感じている女性もいます。
月経に関する症状における労働損失4,911億円と試算されており、健康経営では「女性特有の健康問題対策」に高い関心が寄せられています。
職場でも、管理者が男性のため対処に困った経験はありませんか?
働く女性が増えてきている今、女性特有の健康課題に対する取り組みは急務です。
そこで今回は「月経困難症」についてご紹介します。

月経困難症(げっけいこんなんしょう)とは?

女性の不調 生理中に骨盤や下腹部に痛みがある状態のことです。
仕事や日常生活に差し支えるほどの辛い症状に悩まされる女性もいます。
厚生労働省の調査では、20~40代の働く女性の3割が月経中に鎮痛剤を使わないと通常の生活がしにくいと答えています。

症状や治療法は?

症状は個人差がありほとんど自覚症状のない女性もいる一方、起き上がれないほど辛い症状を抱える女性もいます。
腰痛・下痢・吐き気・嘔吐・重度の貧血・外出が困難なほど短時間で大量の出血があるなどの症状です。
原因となる病気が見当たらない月経困難症の多くは、過剰な子宮収縮によって引きおこると考えられています。
激しい痛みの緩和には、主に月経専用の鎮痛剤が使用され、それでも改善できない場合は避妊薬(ピル)やピルが使えない場合や鎮痛剤の効果が不十分な方に選択肢として漢方薬があります。
またストレスにより自律神経が乱れ、ホルモンバランスが整わずに気持ちが安定しないなどの不調を起こす要因です。
強いストレスによってホルモンバランスが乱れ、月経の症状の症状悪化につながります。
 

仕事にも影響もする精神的な症状

月経困難症の症状には、イライラしたり、怒りっぽくなったりして「攻撃的・過激」といった面もあります。
これは女性ホルモンのリズムの乱れや月経の痛みにより不眠により、精神的に不安定になる原因です。
主な精神的症状
  • 過敏性になる
  • 攻撃的になる
  • 緊張や不安感がある
  • うつ気味になりやすい
  • 不眠になり気持ちが安定しない
  • 食欲の変化(嗜好が変わる)
  • 泣きたくなる
  • 口が渇く
  • 集中力の低下
  • 調整力の低下
こうした不機嫌症状をそのまま周りの人にぶつければ、たちまち人間関係を壊し仕事や社会活動などにも支障をきたすことになるでしょう。
女性はいかに女性ホルモンのリズムに全身の健康状態や精神状態に影響を受けているかがわかります。

企業ができる女性特健康問題に対する取り組みとは

相談窓口 企業が女性の健康に対する取り組みを増やすことで、病気等による休職や離職の防止や生産性の向上など企業の活性化につながります。
企業ができる対策は次の3つです。
1.働きやすい環境の整備
2.相談窓口の設置
3.女性特有の健康へのリテラシー向上
自社の対策として参考にしてください。

1.働きやすい環境の整備

43%の女性が女性特有の健康課題により職場であきらめなくてならないと感じています。
女性従業員が会社に求めるサポートは、次のとおりです。
  • 会社による業務分担や適切な人事配置などのサポート
  • 治療などのための休暇制度や柔軟な勤務形態を支えるサポート
  • 上司や部署内でのコミュニケーション
  • 総務部や人事部などからのアドバイスやサポート
  • ライフイベント・年齢などに関わりなく活用できるキャリアアップ制度
  • 産業医や婦人科医・カウンセラー・などの専門家への相談窓口
  • 予防や意識啓発を図るための健康教育
 
女性従業員がそれぞれの健康状態に合わせた柔軟な働き方ができるように、テレワークや休暇・シフト改善等の環境整備を求められているのが現状です。

2.相談窓口の設置

女性従業員が心身の不調を相談する機会や管理職が部下の健康状態を把握し、対処方法を相談できる相談窓口の整備が必要です。
経済産業省が行った実態調査では、女性従業員の約5割が女性特有の健康課題により困った経験があると回答しています。
その中で7割の女性が月経関連の症状によるものでした。
それに対し働く女性が求める職場の整備としては「生理休暇」ですが、制度の利用に関して職場の理解が得られることが重要です。
比較的整備されている生理休暇についても活用状況は2割程度であまり活用されていないのが現状です。
制度はあっても利用しづらい職場の風土では、女性の健康課題解決にはつながりません。
制度や規則・相談窓口を整備したうえで、全従業員が正しい理解のもとで女性の健康保持・増進に取り組む必要があるでしょう。

3.女性の健康リテラシー向上

近年、女性向けの健康支援の取り組みやワーク・ライフ・バランスに対する取り組みは進んでいます。
しかし、女性特有の健康課題に対するリテラシー向上や相談窓口等は低い状況です。
日本医療政策機構(HGPI)の調査において、ヘルスリテラシーの高い女性のほうが仕事のパフォーマンスが高く、企業の生産性において重要であることがわかりました。
ヘルスリテラシーが高い女性は「月経に関する症状」によって生じるパフォーマンスの低下が小さい傾向です。
制度やサポートなどによって会社が支援することばかりではなく、女性従業員自身の健康管理能力を強化することも必要でしょう。
 
男性従業員や管理職だけでなく実は女性自身も知識不足も課題です。
学校教育では女性特有の健康問題について体系的・専門的に学ぶ機会がありません。
そのため女性自身も症状を放置し対処しないで症状が悪化してしまうケースがあります。
また管理職の実際の声として「男性には分からない女性特有の症状に的確にアドバイスできない」など対処に困った経験があるとされています。
「無理させられない」と感じ、重要な仕事は渡せないという気持ちになってしまうなどの問題もあり、女性だけでなく管理職の方に対するサポートも必要となるでしょう。

管理職の方が職場で必要と感じる女性の健康についてのサポートは次のとおりです。
  • 産業医や婦人科医・カウンセラー・などの専門家への相談窓口
  • 総務部や人事部などからのアドバイスやサポート
  • 両立のための休暇制度や柔軟な勤務形態を支えるサポート
  • 業務分担や適切な人事配置などがしやすい環境づくり
  • 女性社員に多い健康課題やその対応に関する管理者研修
  • 保険者によるサポート
女性の健康について研修機会を設けることにより、女性だけでなく男性従業員や管理職も知識を得て対処方法を習得できるでしょう。

月経困難症を改善するには

改善 月経は女性にとって体と心の健康状態がわかるバロメータと言われています。
女性自身が健康状態をチェックできるのが月経です。
月経による強い痛みは体からサインであり、痛みを我慢しないで、専門家を受診することが改善の近道でしょう。
月経困難症を招く三大疾患は、子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症です。
原因となる病気のない月経困難症か病気によるものかは、年齢、問診と基礎体温で判断基準の参考にされ、よりはっきりとした診断をつけるためにより詳しく検査が行われます。

そのため女性は基礎体温を知ることにより、ホルモンのリズムによる体調の変化にも自分なりに対処できる手助けとなるでしょう。
月経困難症の改善には、「まず女性自身がホルモンの変化を知ること」そして「我慢しないで専門家に相談すること」が大切となるでしょう。
管理職の方が男性の場合は、なかなか理解しにくい問題かと思います。
そんな時は厚生労働省研究班監修の「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」を活用してみてはいかがでしょうか。

こちらのサイトでは、「もしかして病気かも?」と不安になった時に生理痛や女性特有の病気に対するセルフチェックを行えます。
忙しくて病院に行く時間がない女性従業員にサイトを周知し、セルフチェックを推奨することが、症状の悪化を抑えることにつながるでしょう。
専門家による相談窓口もありますので、自社に専門家の相談窓口を設置できない場合に活用すると効果的です。
女性の健康推進室ヘルスケアラボ

健康経営での取り組み

健康経営 健康経営を推進する企業は、女性の健康問題に高い関心が寄せられています。
現在、日本の全従業員数のうち約44%を占めるのが女性です。
また月経に関する症状による1年間の社会経済的負担は71.9%と試算されています。
これまで健康経営の取り組みでは、40代から50代の男性の肥満対策や健康意識対策に重点が置かれていましたが、女性の社会進出の観点から今後取り組みを強化されていくことでしょう。
女性特有の健康課題に対する取り組みは、プレゼンティーイズムの改善にもつながります。

健康経営の取り組みは主に働く世代である成年期からが対象となる一方、本来健康な体作りは周産期・小児期から始まります。
女性の健康課題に対応することは、次世代への健康への投資となり、社会への貢献といえるでしょう。
いくつかの先進的な企業は、すでに女性の健康に注目して施策を実践しています。
女性の多い企業だけでなく、少ない企業においても会社負担の婦人科検診を実践するなど女性の健康に特化した取り組みを行っている企業もあります。

 健康経営とは、「企業の経営目的達成のために、企業で働く人たち一人ひとりの健康を大切にしよう」という取り組みです。
母性保護や女性の健康保持・増進に取り組みことが、女性従業員のためだけではなく一緒に働くすべての従業員が働きやすくなる風土や職場環境・制度などを創ることにつながります。
そう考えると、経営課題のひとつとして女性従業員だけでなく全従業員を当事者として巻き込んで議論し推進していくことが大切ではないでしょうか。

まとめ

女性笑顔で働く 今回は「月経困難症」について紹介しました。
多くの働く女性が悩み、労働生産性が低下している現状ということがご理解いただけたでしょうか。
企業には「環境の整備・相談窓口の設置・ヘルスリテラシーの向上」の3つが求められています。
女性の従業員の健康に配慮することは、企業の労働損失減少や従業員の満足度に大きく影響するでしょう。
女性の特有の健康問題に関する取り組みは、今後さらにニーズの高まりが予想されます。
まずはできることから自社で取り組みをはじめてはいかがでしょうか。
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