• 健康経営アドバイザー
  • 2022.03.08 (最終更新日:2022.03.27)

休養室とは?従業員と会社のリスクから守る場所

目次

急病人の発生に備える設置

休養室 従業員の休業に備える休養室の設置は、労働安全衛生法が定める労働安全衛生規則や事務所衛生基準規則で定められています。
2021年12月に事務所衛生基準規則は新たに改定され、労働者の働きやすい環境整備への関心の高まり・テレワークなど社会状況の変化が改正の背景が要因です。
労働安全衛生規則や事務所衛生基準規則の規則は多岐にわたるため、多忙を極める経営者や管理者の方は気づきにくい点もあるかと思います。今回は「休養室の設置」について解説します。

休養室は規則違反となる義務

簡易ベッド 休養室とは、従業員が急に体調が悪くなった場合などに横になって休ませるためのスペースです。
労働安全衛生法が定める労働安全衛生規則第618条および事務所衛生基準規則21条に次のように規定されています。

事業者は、常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が、臥床する※ことのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。(義務)

※「臥床する」とは横になって休養するという意味です。
上記に該当する事業者は、休養室の設置は義務です。
しかし労働安全衛生規則や事務所衛生基準規則は、労働環境や職場設備の多岐にわたるため、必ずしも細部の内容が企業現場に周知徹底されているとはいえません。
休養室の設置規定は、見落としがちになるルールのひとつです。
従業員の体調不良は頻繁に起こることではありませんが、万が一起きた場合には規則違反になりかねません。
規則違反を回避するためにも常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者が在籍する企業は、自社の設置状況を確認する必要があるでしょう。

休養室ルール

急病 休養室の設置を行うにあたって注意すべき点です。
設置を行う際は、労働安全衛生規則や事務所衛生基準規則を確認して行う必要があります。
  • 男性用と女性用に区別して設けること
  • 休養のためにベッドや布団を用意する必要があること
  • 性別にかかわらず体調不良者等が常に利用可能であること
  • 入口や通路からの目隠しなどの配慮をする
  • 出入り制限等を明確にする
  • 設置場所の状況等に応じて配慮する
休養室の役割は次の2つです。
  • 体調の悪い従業員を横になって休ませるスペース
  • 急病の従業員を救急車到着まで安静に休ませるスペース
例えば、外出先から戻った従業員が熱中症などによって、立っていられない状態の時は休ませる必要があります。
また女性特有の月経困難症やつわりなどの症状などによって、体調不良を起こした場合などに従業員を休ませる役割があります。
急性心筋梗塞やけいれんなど、従業員の急病の際には救急車を呼ぶ必要もあり、できるだけ安静にするスペースが必要です。
また休養室の設置により、他の従業員の業務への影響も軽減します。
安静にできるスペースがあることは従業員の安心材料になるでしょう。
使用の際のルールなども周知しておくと、従業員が利用しやすい環境となるでしょう。
さらに職場で従業員の体調不調やケガに対応するために、救急セットの用意も規定にあるのでご確認ください。

労働安全衛生法第633条(救急用具)
事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方
法を労働者に周知させなければならない。
2事業者は、前項の救急用具並びに材料を常時清潔に保たなければならない。

労働安全衛生法第634条(救急用具の内容)
事業者は、前条第一項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければならない。
一ほう帯材料、ピンセット及び消毒薬
二高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
三重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等


各企業には救急箱が配備されていますが、入れておくべきものが労働安全衛生法で定められています。
包帯
  • ピンセット
  • 事業場によっては火傷薬
  • 事業場によっては、止血帯・副木・担架

これだけでは不十分なので、その他の物品を加えておくことは問題ありませんが、不足がないように注意すべきでしょう。

休養室の役割のひとつとして、救急車が到着するまで休養する場としての役割もあります。
企業として従業員の急病に対応するために、総務省消防庁作成の救急車利用マニュアルリーフレットを職場に掲示するなど、万が一の備えも追加としてご参考までにご活用ください。
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post9.html

休養室と似た休憩室との違いは?

疑問 休養室と休憩室を同じ設備として兼用でもよいと認識している方もいるかもしれません。
似たような言葉ですが、規則には違いがあります。
休憩室は努力義務となっていますが、休養室は企業責任義務です。
人事・労務管理の担当者として最も留意すべきはそれぞれの必要性の違いでしょう。
またそれぞれ留意すべき労働安全衛生法があるので、合わせてご確認ください。

休養室

従業員の人数が要件に満たしていると休養室設置が義務となっています。
休養室の設置が不十分で対応が遅れた場合には、会社に安全配慮義務違反が問われ、損害賠償等のリスクが発生する可能性があります。

休憩室

有害業務のない作業場では努力義務ですが、有害業務がある作業場では設置が義務です。
労働安全衛生法が定める労働安全衛生規則第613条および事務所衛生基準規則19条に次のように規定されています。

労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない。(努力義務)
休憩室の義務のある有害業務についての規則は次のとおりです。

労働安全衛生規則第614条
事業者は、著しく暑熱・寒冷又は多湿の作業場・有害なガス・蒸気又は粉じんを発散する作業場その他有害な作業場においては、作業場外に休憩の設備を設けなければならない。(義務)

特定化学物質障害予防規則第37条
事業者は、第一類物質又は第二類物質を常時、製造し、又は取り扱う作業に労働者を従事させるときは、当該作業を行なう作業場以外の場所に休憩室を設けなければならない。(義務)

粉じん障害防止規則第23条
事業者は、粉じん作業に労働者を従事させるときは、粉じん作業を行う作業場以外の場所に休憩設備を設けなければならない。(義務)


休憩室には、ソファー・ベンチ・椅子など従業員のリラックススペースの意味合いが強い設備です。
休養より休憩、言ってみれば従業員がリフレッシュをはかるためのスペースです。
有害業務が無い場合は必ずしも休憩室の設置を必要とせず、椅子・ベンチのみの休憩設備でも良いとされています。

休憩室を休養室兼用として兼用しても良い?

休憩室と休養室 休養室とは体調不良者が安静に横になれる場所です。
また急病に備える場所として、救急車が到着するまで安静にできる場所という認識も必要です。
通常休憩室として利用していても、体調不良者が発生した場合すぐに休養室として使用できるなら、休憩室と休養室を兼用できるかもしれません。
  • 休憩室は男女の区別は必要ないが、休養室は男女別にする必要がある
  • 有害物による室内汚染
  • 休養室として使用中は休憩場所がなくなる
上記を考慮した場合、休憩室を休養室に兼用は望ましくないとされています。
場所が狭い場合にはベッドがひとつしか設置できないこともあるかもしれませんが、規則上、人数条件が上記を満たす場合には、休養室と収納するベッドを2箇所に準備する必要があります。

しかし、企業の実情によっては常用不能な場合は、いつでも転用可能な工夫の必要性があるでしょう。
労働者の具合が悪くなった場合に、すぐ対応できるように折り畳みベッドや布団を常備するなどの対応も考えられるでしょう。
また男女別に設置する必要があるので、同じ部屋であれば最低限パーテーションを用意するなどの工夫を検討してはいかがでしょうか。
パーテーションはしっかり空間を分けられる固定のものを選ぶ必要があります。
布製やブラインドではなく、それなりの高さがある突っ張りタイプの固定のものが良いでしょう。
どうしてもスペースがない場合は、緊急時は会議室を簡易休養室にするなども検討も可能となります。
折り畳みベッドは、使わないときは片づけられるなどスペースのない職場には最適です。
また畳のある職場においてベッドは必ずしも必要というわけではありません。
その代わりに布団を用意し、従業員が横になることが可能であれば役割を果たしています。

急病人が発生し休養室の設置がないために対応が遅れることがあれば、会社が責任を問われることになります。
そうならないためにも休養室を常設、又は簡易休養室などの対応が望ましいといえるでしょう。

まとめ

休憩室 今回は「休養室の設置」について解説しました。
休養室の設置の必要性がお分かり頂けたでしょうか。
従業員の急病に備えて横になれるスペースが必要になります。
万が一の準備ですが、働く従業員に安心感を与え環境整備・提供をおこなうこと業務に集中できる職場環境といえるでしょう。
休養室がまだない職場は従業員の健康を守るためにも、リスクを避けるためにも休養室を検討してはいかがでしょうか。
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