• 健康経営アドバイザー
  • 2021.12.28

業務上疫病とは?最も多い「腰痛」と健康経営の関連性を解説

目次

業務上疫病「腰痛」による生産性低下

腰痛 職場において発生する業務上疫病の中で最も多いのが腰痛です。
腰痛は年間600件近く発生しており、全体の約60%も占めています。
皆さんの職場にも腰痛により、パフォーマンスが低下している従業員はいませんか?

「モノや人の上げ下げが多い」「座り姿勢や運転時間が長い」「狭い作業空間」などで腰痛が発生するケースを「職業性腰痛」と呼びます。

保健衛生業や製造業だけでなく、デスクワークによる腰痛も増えてきている現状です。
経営者としては、生産性を上げたいところですが、辛い腰痛の従業員の姿を目の前に無理させられないと感じるのではないのでしょうか。
大切な従業員を守るためにも、自社の生産性を低下させないためにも対策を講じてはいかがでしょうか。
そこで今回は業務上疫病で最も多い「腰痛」について解説します。

業務上疫病とは?

厚生労働省 業務上疫病とは、簡単に言うと「職業病」のことです。
業務上疾病は労働基準法の用語で、医学用語では「職業性疾病」と言われます。
業務上疾病は仕事と病気に密接な関係があります。
例えば、モノや人の上げ下げが多い仕事による腰痛や工場労働者の騒音による難聴などです。
業務上疫病に関する労働基準法は第75条・第35条・第36条・第37条に規定されています。
労働者が業務上疾病にかかった場合、使用者は必要な療養を行いその費用を負担しなければなりません。
そのため業務上疫病の種類を把握して対策をする必要があります。
職業病は厚生労働省でリスト化されていますので、自社の業務で当てはまるものはないか参考にしてください。

業務上疫病の種類

  1.  業務上の負傷に起因する疾病
  2. 物理的因子による疾病(潜水病、騒音による難聴など)
  3.  身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(腰痛、腱鞘炎など)
  4. 化学物質等による疾病(化学物質に起因する呼吸器疾患・皮膚疾患、酸素欠乏症など)
  5. 粉塵が飛散する場所における業務による「じん肺症」又はじん肺と合併した疾病
  6. 細菌、ウィルス等の病原体による疾病
  7. がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病(石綿業務による肺がん又は中皮腫など)
  8. 長期間にわたる長時間の業務・血管病変等を著しく増悪させる業務による疫病(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止など)
  9. 心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
  10. 厚生労働大臣が指定する疫病
  11. その他業務に起因することの明らかな疾病
出典元:職業病リスト|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
業務上疾病は業務中に発症するとは限らず、短期間で発症するケースもあれば、何年も経ってから発症する場合もあり、業務とその疾病に関係があると認められた場合は、業務上疾病が認定されます。
業務上疫病の中で最も多いのが「腰痛」になり、厚生労働省では、「業務上腰痛の認定基準」を定めています。
業務上腰痛の認定基準https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/111222-01.html

腰痛による経済損失は大きい

生鮮性低下 従業員の腰痛を「仕方ない」と思っていませんか?
腰痛による作業効率の低下は、労働生産性に大きく損失を与えています。
 
腰痛による業務遂行能力や労働生産性の低下を金額に換算したところ、経済損失は年間およそ3兆円に上ると試算されました。
(日本臓器製薬と東京大学の共同研究より)
近年注目されているプレゼンティーイズムのひとつが腰痛です。
出勤はしているものの体の不調で仕事がはかどらないことによる職場の経済損失は、病欠による損失より大きくなります。
腰痛のため通常1時間で行える業務がその1.5倍の時間がかかっていると試算したらどうでしょうか。
海外調査では、肩こりや腰痛などをはじめとする慢性疼痛による勤務時間の損失は1週間で平均4.6時間に及ぶと試算されています。
米国の労働力:一般的な痛みの状態による生産時間とコスト損失
この試算を参考にしてみてはいかがでしょうか。
腰痛によって1週間でおよそ約5時間遅れるとして、毎日1時間そして年間ではおよそ240時間です。(1カ月20日勤務として試算)
腰痛が1年間あるとおよそ10日間、企業側も、従業員側も、時間を無駄にしていることになります。
腰痛による生産性低下は、時間的・経済的ダメージを企業も従業員も受けます。
「職業柄仕方ない」と片づけていた従業員の腰痛に目を向けてはみませんか?

では企業で腰痛に対してはどんな対策が求められるでしょうか。

企業ができる腰痛対策とは?

現状把握 職場における腰痛は依然として増え続けている傾向です。
特に保健衛生業や陸上貨物運送事業者では業務に影響するため対策が大切です。
厚生労働省では、特に多いこの2つの業種に向けて腰痛予防対策動画サイトを作成しています。
厚生労働省:腰を痛めない働き方を知ろう|厚生労働省 (yotsu-yobo.com) 
さらに厚生労働省では、「職場における腰痛予防対策指針」を公表しています。
しかし残念ながらこの指針は企業にあまり知られていません。
現代の知見や技術革新を踏まえて、腰に負担の少ない作業方法・ストレッチ方法を示しています。
ぜひ自社での腰痛対策として参考にしていただきたいです。
職場における腰痛予防対策指針では、事業者の責務として次のポイントをあげています。
  • 経営トップによる取り組み表明を行うこと
  • 安全衛生管理体制による腰痛予防対策を行うこと
  • ノーリフティング原則を積極導入し活用して腰痛発生を減少させること
具体的な作業を想定した「腰痛発生要因のリスク見積」「リスクの回避・低減措置」であること
 
※ノーリフティングとは、介護・看護・福祉の現場において、人力のみで移乗を禁止し、患者・ご利用者の自立を考慮してリフトなどの福祉用具を積極的に活用しようという考え方。
 
そして大切なのが、継続的な実施のため腰痛対策のみを切り分けず、事業実施に係る管理と一体的に取り組むことが重要となるでしょう。
腰痛対策では、まず自社での腰痛発生要因を把握することが 第一歩です。
腰痛発生の要因は次の4つに分類されます。

腰痛発生要因

  • 人間関係・ストレスによる心理・社会的要因
  • 生活習慣・運動習慣による個人的要因
  • 作業姿勢・身体機能による動作要因
  • 作業環境起因による環境要因
単独の要因が起因することはまれで、いくつかの要因が複合的に関与しています。
これらすべての要因について留意し、改善が企業に望まれるでしょう。
 
まずは自社の現状を把握し、職場環境の整備の見直しが第一歩ではないでしょうか。
 
少子高齢化で労働人口が減少する中、労働者1人当たりの生産性向上が重要視されています。
体の痛みを感じている状態では、やる気も生産性も上がるはずがありません。
そのような状態では企業の業績も上がらないのも当然です。
これからは従業員の健康増進や健康維持を目指す取り組みが必要な時代です。
生産性の向上や職場環境の整備で注目されている「健康経営」の取り組みを参考にしてはいかがでしょうか。

健康経営での腰痛対策

腰痛治療 健康経営では、従業員にとっても企業側にとっても、「快適に働ける環境整備」が生産性向上につながると考えられています。
「体の痛み」に対して、より実践可能な痛み対策の導入を図っていく必要があるでしょう。
従業員と企業の双方に有効になる施策をする必要あります。
 
痛みの軽減や予防のためにも次のような取り組みが主に行われています。

周知(我慢しない)・予防や低減(環境整備)・実践(治療や体操)

 
まず「痛みを我慢するのはよくない」と会社側が従業員に示すことです。
痛みを我慢することによってパフォーマンス低下により、業務効率の低下を招き、従業員自身もますます腰痛が悪化し、会社にとっても損失であること認識してもらう必要があります。
健康について正しい知識の習得、健康意識を向上させる機会を設けることも、健康経営の取り組みの一環です。
 
多くの人は、腰痛の治療のために会社を休むといった考えにはならないでしょう。
症状が慢性化しているのならなおさらです。
そこで会社側の腰痛に対する施策が必要になってきます。
個人の意識の変容だけでは解決にはならないでしょう。
企業は腰痛を予防・低減できる環境を整えていく必要があります。
 
また場合によっては、外部専門家による治療を社内で整えることも有効となります。
多忙のため、自分の健康管理が後回しになりがちな従業員にとって実践的な取り組みとなるでしょう。
自社で実践可能な痛み対策の導入を図っていく必要があります。
 
健康経営の取り組みは従業員の健康管理を総合的な視点で行うという面で、腰痛発生の要因となる課題である職場環境の整備の解決につながっていくでしょう。

まとめ

腰痛対策 今回は業務上疫病の発生率が最も多い「腰痛」について解説しました。
「仕方ない」と思っていた腰痛による生産性低下による損失は大きいことがわかりましたでしょうか。
従業員に我慢することは美徳ではないことを示し適切に治療を行うこと、そして企業は快適に働ける環境整備を行う必要があります。
労働人口が減少する中、ひとりひとりの従業員は会社の資源です。
「どのような腰痛対策が、損失を抑えて生産性向上につながるのか」を念頭に、対策を講じてはいかがでしょうか。

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