• 健康経営アドバイザー
  • 2022.02.21 (最終更新日:2022.03.27)

VDT症候群とは?生産性向上のためにすべきこと

目次

深刻化する現代病

ケータイの使用 現代病とも言われるVDT症候群をご存じでしょうか。
近年、情報技術化が進展し、デジタル機器の使用で目を酷使する人が増えています。
長時間従事する従業員には、目の疲れだけでなく身体的や精神的に症状が出てしまうなどがあり、生産低下や労働衛生上の問題も指摘されています。
そこで今回はVDT症候群について解説します。

VDT症候群とは

眼精疲労 VDT症候群とは、コンピューターのディスプレイなど表示機器を使用した作業(VDT作業※)を長時間続けたことにより、目や体、心に生じる症状です。
別名はテクノストレス眼症やIT眼症と言われています。

※VDT作業とは、ディスプレイを持つ画面表示装置、監視カメラを用いた作業を用いた作業のこと。
具体的には、データ入力・検索・照合等・文章・画像等作成・編集・修正・プログラミング・監視等を行う作業をいいます。
症状
目の症状:ドライアイ・充血・視力低下・眼精疲労など
体の症状:頸肩腕症候群※などによる心身の痛み
首・腰・肩のコリ・だるさ・痛み・慢性化すると背中の痛み・手指のしびれなどの異常感覚
心の症状:食欲減退・イライラ・不安感・抑うつ症状など

パソコン画面の近くを見る等の動作など、目を酷使する機会が多いことが眼精疲労の原因です。
目線が上向きになるため瞬きが減ることで、目の表面の露出面積や涙の蒸発量が増えドライアイの原因となります。

※頸肩腕症候群(けいけんわん症候群)は別名キーパンチャー病とも言われ、コンピューターのキーをたたく人にみられる腱鞘炎です。

VDT症候群増加の背景

VDT機器 VDT症候群で悩む人の増加したには、労働者の誰もがVDT作業を行うもしくは行わなければならないようになった時代背景があります。
情報処理を中心とした技術革新により、さらにIT化によってVDT機器がより広く職場に導入されるようになり、VDT機器を使用する者が急速に増大しました。
最近では、ノート型パソコンや携帯情報端末の普及など、様々なソフトウェアの普及に見られるようにVDT機器はますます多様化してきたことが背景として考えられます。
仕事でもプライベートでも長時間パソコンや携帯を使用する現代人にとって、VDT症候群は現代病とも言えるでしょう。

VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン概要

厚生労働省 このような背景に対処するため厚生労働省では、VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインを設けています。
VDT作業を行う事業場ではこのガイドラインに基づいた労働衛生管理が求められます。
同ガイドラインは企業としての労務管理という意味合いになり、会社と従業員の双方の工夫とともに改善していく必要があるでしょう。
ガイドラインの概要は次の通りです。

①作業管理環境の整備

作業をする人が支障なく作業を行えるように照明・採光・グレアの防止※・騒音の低減措置等といった作業環境を整える方法を具体的に定めています。

※グレアとは、不快感や物の見えづらさを生じさせるようなまぶしさです。
グレアは、単なる不快感にとどまらず、眼の障害や状況把握能力の急な低下による事故などにもつながります。
そのため照明器具の設計や照明計画などにおいては、グレアを防ぐことが必須です。

②作業管理の整備

作業時間やVDT機器の選び方等を定めています。
  • 連続作業時間が1時間を超えないようにする
  • 長時間の作業を行う際には1時間に10分程度の適度な休息を取る
  • 連続作業と連続作業の間の10~15分の作業休止時間を設けること
  • 他の作業とのローテーションを実施や他の作業を組み込む等、1日の連続VDT作業時間が 短くなるように配慮する

③VDT機器等及び作業環境の維持管理

VDT機器等の点検及び清掃を行い、必要であれば改善措置を講じるよう定めています。

④健康管理

健康障害防止のため、健康管理を行うよう定めています。
  • 作業時間に応じ必要な健康診断を行う
  • 定期の健康診断結果に対し、産業医の意見を踏まえ必要に応じて保健指導等を行う
  • 身体やメンタルの症状、セルフケアなどの健康相談ができる場を設ける
  • 就業前後に職場体操等の軽い運動を行う

⑤労働衛生教育

VDT作業従事者等に労働衛生教育を行い、初めてVDT作業に従事する者に対してはVDT作業の習得に必要な訓練を行う

⑥配慮事項

高齢者や障害を持つ作業者に対する配慮、在宅ワーカーに対する配慮事項を定めています。

VDT検診とは?

目薬 VDT検診についてガイドラインには作業区分に応じて必要な健康診断の項目が定められています。
VDT健康診断の項目にはVDT症候群の兆候を見つけるための項目が含まれており、以下は検査項目の一例です。
①眼科学的検査(眼の検査)
  • 5m視力検査:遠いところを見る検査
  • 近見視力の検査:近いところを見る検査(50cmまたは30cm視力)
  • 屈折検査:遠くを見たときにピントが合うかを知る検査
  • 眼位検査:片方の目が正面を向いた時、片方が正面を向かない状態を見つける検査
  • 眼位検査:調節機能検査(くっきり見える範囲を測定する検査)
②筋骨格系の検査:指・手・腕の運動機能の異常や痛みの有無、首や背中・腰部等を抑えて痛みが出るか等を問診や診察で確認する。
③ストレスに関する症状やその他医師が必要と認める検査
 

VDT症候群を防ぐには

VDT作業 VDT症候群を防ぐには、作業時間・作業環境など次の4つ工夫が必要です。
  • 適切な休憩を必ず取る
  • 作業環境の見直しを行う
  • 適切な作業姿勢で行う
  • 簡単なセルフケアで予防

適切な休憩を必ず取る

目安としては45分の作業につき、10〜15分の作業休止時間を設けるなどして、連続作業時間が1時間を超えないようにする工夫が必要でしょう。
ついつい集中してしまい、気づいたら2〜3時間経っていたということもあります。
業務内容の工夫や積極的に休憩をとるなどができる風土づくりが大切でしょう。

作業環境の見直しを行う

特に目の疲れを予防・軽減させるためには、光環境の改善が大切です。
室内の明暗はできる限り一定にし、日光や照明がモニターに映らないなど目に負担にならないように環境を整えることが第一です。
その他にも、騒音の低減や換気・温度・湿度・空気調和・静電気除去・休憩等の設備などについてガイドラインに記載されています。

適切な作業姿勢で行う

足の裏を床につけて椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばして座る
目線はやや下向き画面から40㎝以上離す
肘は、直角にし、両腕は水平に保つ
画面・キーボード・書類の視距離はだいたい同じにする

簡単なセルフケアで予防

就業の前後又は就業中に、体操・ストレッチ・リラクゼーション・軽い運動等を行いセルフケアで予防するなどの工夫も大切です。
仕事の合間に肩を回す・屈伸をする・背伸びをするなど軽く身体をほぐすストレッチを行い、同じ姿勢を続けないようにしましょう。
休憩をとることが大切ですが、どうしても無理な場合は、短時間でも目を閉じて視神経を休ませるだけでも有効です。
作業中はまばたきの回数が減ってしまうため目が渇く原因になります。
目薬などで目に水分補給し意識的なまばたきをするなど疲れ目やドライアイ対策として有効になります。

ガイドラインでは、照明や椅子の工夫・ユーザーインタフェース※設計のみならず、入力ミスを修正しやすいソフトウェア設計による緊張感軽減の詳細など多岐にわたっていますので、ぜひ参考にしてください。
職場のあんぜんサイト

※ユーザーインタフェースとは、機器やソフトウェア、システムなどとその利用者の間で情報をやり取りする仕組み。
システムから利用者への情報提示・表示の仕方と利用者がシステムを操作したり、情報を入力したりする手段や方式・機器・使い勝手などの総体を表します。

企業におけるVDT症候群対策

仮眠 職場における作業環境・作業方法の改善や適正な健康管理を円滑に行うことは重要です。
深刻化する現代病であるVDT症候群対策は、企業にとっても従業員にとってもリスクマネジメントとして有効な取り組みになります。
従業員の心身の健康によって起こりうる生産性低下というリスクを防ぐことにつながるでしょう。
企業の対策で配慮すべき点は、連続作業防止となる休憩の取り方です。
昼休みなど決まった休憩をきちんと取ることはもちろんですが、作業の合間に取る休憩・少しの間離席するなどの行動をためらわないような環境や雰囲気づくりが大切でしょう。

時々雑談する・整理整頓などの作業で気分転換を図ることは、ストレス性内科疾患の予防・改善につながります。
作業効率を高めるためにも仮眠やマッサージなどを取り入れて、積極的に疲労回復を得るための対策も有効でしょう。
職場環境を整え生産性を向上させるという点で、健康経営の取り組みに注視するのもいいかもしれません。

まとめ

VDT作業 今回はVDT症候群について解説しました。
VDT症候群は、パソコンやスマートフォンなどデジタル機器の使用時間が増大したことで、目を酷使し心身のトラブルが起きている現代病です。
それにより、眼精疲労だけでなく心身の健康のトラブルにつながり生産性低下などに影響を及ぼします。
企業として従業員の働く環境を整え、VDT症候群対策を行うことは必要とされています。
ぜひこの機会に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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