• 健康経営
  • 2022.03.17 (最終更新日:2022.03.27)

健康経営に欠かせない産業医とは?必要性や実施内容

目次

健康経営実現に向けて産業医を選任しよう

健康経営を実現するうえで大切な役割を果たすのが、産業医です。

産業医は企業規模が一定以上の場合、選任が義務付けられています。健康経営を実現するためには、専門性がある産業医とうまくコミュニケーションをとりながら、会社の課題を解決することが重要です。

ここでは健康経営実現に向けて、産業医が果たす役割や産業医の業務、会社の状況に合わせた産業医選びのポイントを解説します。産業医と連携し、健康経営を目指す際の参考にしてください。

健康経営における産業医の重要性

健康経営では産業医と連携し、従業員の健康状態を管理できる体制づくりが重要な役割を果たします。

健康経営とは「従業員の健康状態に配慮した経営をすることで、将来の売上向上につながる」という考えをもとに、従業員の健康管理を経営戦略に取り入れる経営手法です。ブラック企業や長時間残業の問題への対応から、健康経営が徐々に注目されはじめています。

産業医の主な役割は従業員の健康管理、ストレスチェック、健康診断結果のチェックなど健康管理です。を行います。産業医は第三者の目線から従業員の健康状態を管理できるため、企業とは異なる視点からの提案が可能です。

その反面、企業は業績やビジョンの達成を主な目的としているため、健康経営を取り入れようとしても、健康への配慮が欠けてしまうケースが考えられるでしょう。

そのため、健康経営を実現するうえで、産業医は欠かせない存在といえます。

専属産業医と嘱託(しょくたく)産業医の違い

企業で選任される産業医は、専属産業医と嘱託(しょくたく)産業医に分けられます。

専属産業医は、企業に専属し、週3日・1日3時間以上の勤務する産業医です。常時いる労働者が1,000名以上の場合(または特定の業種の場合は500名以上)に専属産業医を選任する必要があります。

嘱託産業医は、普段は別の病院やクリニックで勤務し、月1回程度の日数で非常勤として勤務する産業医医師です。労働者が50〜999名の場合に企業は嘱託産業医を選任する必要があります。

産業医の役割

産業医は企業でさまざまな役割を果たします。具体的には以下の通りです。
  • 従業員の健康診断や健康管理
  • 健康診断の管理
  • 健康上問題がある従業員への面談
  • ストレスチェック
  • 衛生委員会への参加
次でどのような管理をするのか、具体的に解説します。

従業員の健康診断や健康管理

産業医は従業員の日常的な健康状態を把握し、必要に応じて、職場全体の健康状態を改善するための、施策立案・実施まで行います。

衛生面や作業環境に問題はないか、以下の観点からチェックを行います。
  • オフィス照明の照度や温度・湿度
  • 作業空間の環境
  • トイレや給湯室などの衛生管理
  • 整理整頓や備品の管理、ゴミの分別
  • 防災・安全管理
  • 分煙対策
  • 安全衛生に向けての取り組み
  • 健康経営を実現する施策の立案・実行
産業医は少なくとも月に1回、作業場を巡回し、必要に応じて、健康障害を防止するための措置を講じることが求められます。

健康診断の管理

労働安全衛生法66条労働者に対して、医師による健康診断を受けさせることが、労働安全衛生法66条によって義務付けられています。

会社の経営者は、健康診断の結果、従業員に健康診断で異常初見が見られる場合、産業医との面談や就業上の措置を実施しなければいけません。

健康上問題がある従業員への面談

産業医は、従業員の健康上の問題があると認められる場合に、面接を実施します。具体的には以下の人などが該当します。
  • メンタル面に不安がある労働者
  • 過重労働者
  • 復職希望の休職者
これらの人に対して、産業医は面談の実施が必要です。労働者の健康状況によっては必要な措置をします。

ストレスチェック

ストレスチェックは2015年から年1回実施することが義務付けられ、計画から実施、事後措置まで行わなければいけません。

ストレスチェックにより、大きいストレスを抱えている人を早期発見できれば、うつ病などの精神疾患に発展する前に適切な処置を実施可能です。近年では独自のストレスチェックを実施する企業もあります。

衛生委員会への参加

産業医は衛生委員会に参加し、従業員の健康管理や安全管理について、産業医の立場から意見することが求められます。安全衛生委員会は、労働者の危険防止や労災対策のための安全委員会と、労働者の健康を保持するため、必要な対策を審議する衛生委員会の両方を兼ねたものです。

企業は労働者数や業種によって、安全衛生委員会の開催が義務付けられています。

健康経営を実現する施策の立案・実行

健康経営の実現のため、産業医は健康に働ける環境を維持するための企画立案や実行を担う、重要な役割を果たします。

産業医は健康管理の専門家としての役割を果たし、「健康経営のために何ができるか」医師の観点から提案できます。そのため、健康経営の導入を図るためには、産業医との連携は欠かせません。

産業医の報酬相場

産業医の報酬の相場は、公益社団法人日本橋医師会によると、労働者の規模によって、以下のような報酬が適切だと発表しています(産業医としての選任と定期的な訪問に対するもの)。

産業医基本報酬額【月額】
50人未満 75,000円〜
50~199人 100,000円~
200~399人 150,000円~
400~599人 200,000円~
600~999人 250,000円~
参考:公益社団法人日本橋医師会「産業医報酬基準額について

この結果は東京日本橋付近の調査結果であり、地域によって変動する場合があります。これらの報酬は、労働安全衛生法で義務付けられた最低限の取り組みに対するものです。

健康経営の導入やそのほか業務を依頼する場合には、報酬額が高くなるため、この点を考慮して産業医を導入するかどうか検討しましょう。

産業医を選ぶポイント

健康経営を実現するためには、会社の目的に合った産業医選びが重要です。ここでは産業医を選ぶうえで、押さえたいポイントを解説します。

産業医の要件を確認する

産業医は、医師であると同時に以下の要件のいずれかを満たす必要があります。

(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者
引用:厚生労働省「産業医について

この条件は産業医として最低限の条件であるため、必ず確認しておきましょう。

目的を明確にする

産業医に求めるものは会社によってさまざまです。法律上最低限の業務を果たすことだけを目的にするのであれば、コストを優先で考えれば問題ありません。

しかし、健康経営の実現を目指して、産業医を選任する場合には、現状の課題に合わせた目的設定が必要です。
  • 従業員の健康管理
  • 過重労働管理
  • メンタルヘルス管理
産業医によって専門や得意分野が異なり、業務内容も変わります。そのため、会社の目的にマッチした産業医選びが重要です。

コミュニケーション能力

産業医はさまざまな立場の人と関わる必要があります。そのため、医師としての専門知識だけでは、従業員の健康状態改善は実現できません。

産業医によっては従業員と喧嘩し、会社に悪影響を与える人や、現場の状況に合わない過剰な労働時間の管理をすることで、現場に悪影響を与えてしまう人もいます。

産業医を選ぶときには、医師としての専門性をみるだけでは不十分です。面接し、人当たりのよさや相手の立場を汲み取れるコミュニケーション能力があるかを確認しておきましょう。

中立の立場で意見できること

また、会社の健康経営実現のためには、会社とは中立の立場で、医師として毅然とした態度で意見できる必要があります。

会社から見たら問題ない場合でも、医師から見たら重大な健康上の問題を抱えている場合もあるためです。従業員が常に元気で動き回るような状態でも、実際には躁鬱状態だったというケースもあります。

経営者の意向をうかがい、それに従うだけの産業医で止まってしまえば、従業員の健康管理は難しくなるでしょう。

健康経営のために産業医とうまく連携しよう

健康経営の実現には、専門知識をもち、会社とは違う観点から意見を出せる産業医との連携が欠かせません。

会社の規模によっては産業医の選任が義務付けられています。しかし、健康経営の実現のためには、法律で最低限必要とされる業務だけではなく、会社の課題に合わせて、適切な産業医を選ぶことが重要です。

産業医と連携し、適切な健康経営を取り入れるうえでの参考にしてください。
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